タイムアウト東京ブログ

「家具と音楽」がテーマのプロジェクト、『RE/UM』を訪ねる

音楽エンジニア、マニュピレーターとして活動している塚田耕司さんが、恵比寿の裏にひっそりと、自らが収集した家具のコレクションや、オーダーメイドの家具、オーディオ機器やデザイン関連の書籍を取り扱うユニークなインテリアショップ『RE/UM』をオープンした。ラインナップは、ドイツのテレファンケン社の電話機から、八ヶ岳で制作された一点もののブックシェルフまで幅広いが、話を伺うとそこに「家具」と「音楽」の意外な接点があった。

ーそもそも、音楽を生業にされている塚田さんが、インテリアをやろうと思ったのは?

塚田:音楽でいうとエリック・サティが提唱した「家具の音楽」という概念があって。これはアンビエント・ミュージックなどのルーツともいえるんですが、意識的に聴かれない音楽であり「自分の音楽を聴かないでください」というスタンスの事なんです。その影響を受けたインテリアが実際にあったら面白いのではないかと思い形にしたいと思いました。音楽制作の中でも僕が担当してるミックスダウンなどは正に音を配置していく作業なのでインテリアやデザインとは共通項も多く以前から興味がありました。

ー「家具の音楽」から転じて、「家具と音楽」というコンセプトになったのですね。

塚田:大半のエンターテインメントビジネスは(娯楽としての醍醐味がある面)メッセージの押し売りであったり、見方によっては他人の時間を奪うという側面がある。そういう意味で、生活の中に静かに存在できるようなモノを作りたいと思ったんです。また音楽では今でも裏方性の強い仕事をしているので、Re/umは自分の表現の場としてできることをやろうと思い準備を始めました。

ーまだサイトでの販売も開始して間もないとのことですが、すでにオーダーがきているそうですね。

塚田:サイトをアップして間もない段階で、バウハウスの本とカードがセットになったものにオーダーがきました。書籍も面白いものがいくつかあって。バウハウス出身のグラッフィックデザイナー、ヘルベルト・バイヤーのドローイング集なんかは、楽器のモチーフや楽譜を連奏させるような画が多くて、まさに「家具と音楽」にピッタリな一品です(笑)。

ーハンドメイドの家具については、どちらで作っているんですか?

塚田:祖父が所有していた牛舎のある八ヶ岳を拠点にしています。

ー八ヶ岳で制作をするというアイディアは?

塚田:このプロジェクトをやりたいと思う以前に、何度も長野を訪れてインスパイアを得ていた部分があります。その牛舎を後継者がいないので解体しなくてはならないという話が出た時に、他に利用できる方法や借り手を探す為に頻繁に現地に通いました。松本でクラフトフェアーが開催されていたり芽野市に藤森照信さんが手がけた空中茶室があったり。この環境の中で海外のデザイナー作品にはない日本の住環境にフィットする事を念頭に置いたプロダクトを制作できたら良いな、と。長野自体が面白い人が集う場所ではあるのですが、とくに.......RESEARCHの小林節正さんが、山林を買い取ってそこにデッキを作って生活しているのを見た事にも大きく影響を受けています。

ーこちらのテーブルや、チェアも八ヶ岳で作られたものなんですか?

塚田:そうですね。向こうの民家で使っていた一枚板を切り出したりしているので、ほとんどが一点ものになるのですが。

ーハンドメイドの家具以外のセレクションについては、準備にあたって、ドイツへ買い付けに出かけていたということですが。

塚田:(八ヶ岳のハンドメイド家具があるからといって)民芸や特産品を扱ったらただのお土産屋ですし、田舎暮らしを提案したいわけではないので。都市の生活を肯定できる場所がどこかを考えた時に、ドイツがパッと浮かんで。今借りているこの場所も最初はドイツ人が住んでいたらしいので相性もいい。音楽機材にしてもノイマン、テレフンケン、RMEといったドイツのメーカーに愛着があったし、それに作品にしてもクラフトワークのような、ミニマルなんだけど人間的な暖かみのあるものにも惹かれますし。

ー手作りのブラシなどもあって、可愛いですね。

塚田:これは、ドイツで見つけたもので、向こうの障害者の方が作った生活用品を扱うショップで見つけたものです。日本で見かけたことがないので、目を付けました。

ー『BANG & OLUFSEN』のようなインテリアの視点から高級オーディオを提案しているメーカーもありますが、「家具と音楽」というテーマで今後オーディオ、スピーカーなども作る予定はありますか?

塚田:実はオーディオ機器の制作が最終目標なんです。といってもスペック重視のプロやマニアにではなく音楽をイヤフォンやPCのスピーカーで聴いているユーザーに、家具の1つとして使ってもらえるような。自分が普段使いするという意味でも、自然に生活の場面にフィットして優れている再生装置となると選択肢が圧倒的に少ないので。いま、一台ヴィンテージのスピーカーを組み替えてリユースしてみようとしているところです。そういう手法で生活空間と音楽をつなげるハブのような存在になるのが理想です。

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