高知県を食べ尽くす

水晶文旦、いたどりなど未知の食材が東京上陸

高知県を食べ尽くす

2010年2月3日、節分のこの日、東京・銀座にあるレストラン『キハチ銀座本店』で、興味深い試食会が行われた。高知県の食材をメディア関係者に知ってもらう目的で開かれたもので、高知産の食材を使った料理やデザートが振る舞われたほか、高知県知事の尾崎正直と、キハチレストラングループの総料理長である熊谷喜八によるトークショーなどが行われた。

そもそも、この試食会は『高知県KIHACHIプロジェクト』の一環として開催されたもの。このプロジェクトは、NPO法人『高知の食を考える会』と『熊谷喜八』、さらに『高知県』が中心となり、高知の食材を生かしたレシピや加工品の開発などを進め、食材の販路を広めていくことを目的としている。熊谷は自ら高知に赴き、食材の産地を訪問。あしかけ2年、延べ15日間で、56品目の食材と出会い、高知産食材の質の高さを再認識した。その成果を披露するため、同プロジェクトが企画したのが、レシピ本の出版と、スペシャルコースの提供だ。レシピ本は『KIHACHI旬レシピ 高知の四季を料理する』というタイトルで、2009年11月にソニー・マガジンズから出版された。なすやピーマン、トマトなど一般的な食材のほか、四万竹や、もんぱえびなど、珍しい食材を使ったレシピも紹介されており、食材事典としても、レシピ集としても、見応えのある一冊となっている。

もうひとつの企画であるスペシャルコースの提供は、『坂本龍馬の故郷 高知を食す』というシリーズとし、キハチ銀座本店で、春、初夏、夏とメニューを変えて提供される予定だ。2010年3月2日からスタートする第一弾は、『坂本龍馬の故郷 春の高知を食す』で、料理長・鶴田正美が“高知の春の食材”からインスピレーションをえて考案したメニューが揃う予定。今回の試食会では、その春のメニューとは異なるものの、“土佐の清水さば”や“海援鯛”などの海の幸、“水晶文旦”や“夢甘栗”などの山の幸、さらに“土佐はちきん地鶏”や“四万十ポーク”など、高知の大自然で育った畜産物など、高知産の食材を使った料理やデザートが26種類も用意された。どの料理も、熊谷が認めた高知の食材を使っているだけに、素材の味が生かされた仕上がりになっている。“かつおのたたき風マリネ ガーリックオイルソース”は、かつおの淡泊な味わいが、にんにくの香りで引き立ち、絶妙なコンビネーションを感じさせ、“海援鯛と旬野菜 レモングラス風スープ蒸し”は、養殖鯛とは思えない脂ののりと、プリプリっと引き締まった身で、高知の養殖技術の高さをうかがわせる。

また高知県知事と熊谷のトーク内容にあわせ、次々と提供される食材も興味をそそる。『水晶文旦』とは、高知県にしかない特産品で、柑橘類の最高級品とも言われているとか。その水晶文旦と、国内シェア88%を誇る土佐文旦を食べ比べてみると、確かに、水晶文旦は瑞々しく、甘みも強いことがわかる。そんな最高級品を生かしたデザート『水晶文旦のザバイオーネグラタン』を食べると、今度は甘いザバイオーネクリームの中で水晶文旦のほのかな苦味がアクセントになり、後を引くのだ。

どの食材、どの料理をとっても、驚きをがあったこの試食会。そこで熊谷に、「3月2日から提供される“春のメニュー”に使われる食材の中で、もっとも注目して欲しい食材は?」と聞くと、「いたどり」という答えが返ってきた。『いたどり』とは、高知県の山間部で珍重されてきたタデ科の多年草で、高知県では家庭の食卓にのぼる、極めて一般的な山菜だが、はじめて目にした熊谷には、雑草にしか見えなかったとか。「そのへんの道端にぼうぼう生えているんだから、雑草だと思ったけど、これに砂糖を加えて煮詰めると、ルバーブのジャムみたいになるんだよ」と続けた。高知では炒め物などで食べるのが一般的な“いたどり”が、熊谷の手にかかると『ジャム』になるというのだから、これは、まさに新しい食の提案だ。春のメニューでは“フォワグラの酒粕漬けとそば粉のクレープ”に添えて提供される。“いたどり”のほかは、土佐の清水さば、初鰹、海援鯛、水晶文旦などがコースに盛り込まれる予定だ。全国に向けて高知の食材の魅力をアピールするプロジェクトは、このスペシャルコースの提供で、最初の山場を迎える。奇しくも現在は、空前の坂本龍馬ブームで、龍馬の出身地である高知県に感心が集まっている。この追い風を受けて高知が誇る食材が全国区になるのか、見守っていきたい。

コース名:坂本龍馬の故郷 春の高知を食す
メニュー:小さな前菜三種盛り
      *土佐の清水さばのマリネと小夏のタイ風カクテル
      *フォワグラの酒粕漬けとそば粉のクレープ いたどりのママレード添え
      *ぶつ切り真ダコのやっこねぎ ニラのグリーンソース和え
     濃厚な味わいの長太郎貝と茸の熱々グラタン
     初鰹の叩き風マリネサラダ ガーリックオイル風味
     海援鯛とタケノコの海藻蒸し 水晶文旦といくらのバターソース
     特選土佐牛ロース肉のしゃぶしゃぶ オリエンタル風
     ワゴンデザート
期間:第一弾 春メニュー 2010年3月2日から5月10日まで
料金:8400円(税込・サービス料別途)
住所:東京都中央区銀座2-2-6
電話:03-3567-6281(レストラン2階)
時間:11時30分から14時30分まで(ランチ)
   18時00分から23時00分まで(ディナー L.O.21時00分)
   18時00分から22時00分まで(ディナー 日曜 L.O.20時00分)
休日:年中無休
ウェブ:www.kihachi.jp/

テキスト 基太村京子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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