根津美術館
2009年10月14日 (水) 掲載
今秋、山種美術館と根津美術館がリニューアルオープンした。歴史と信頼のある美術館のフルリニューアルに、美術愛好家の注目度は高い。オープンの記念展示は、両館の主要コレクションが披露され、それぞれに見応えがある。山種美術館の新美術館開館記念特別展は、『速水御舟—日本画への挑戦—』。速水御舟の代表作で、国の重要文化財となっている『炎舞』や『名樹散椿』に加え、本邦初公開となる未完の大作『婦女群像』(個人蔵)、『渡欧日記』(個人蔵)など、合わせて140点が出展されている。40歳という若さで亡くなるまで試行錯誤を重ねた、御舟の壮絶な生き様が伝わる、素晴らしい展示だ。根津美術館では、開館から1年をかけて、8編の『新創記念特別展』が開催される。第一部は『新・根津美術館展 国宝那智瀧図と自然の造形』。この展示では、日本美術における自然表現の幅広さと奥深さを味わうことができる。5年ぶりに公開される『国宝那智瀧図』や、鮮やかな花鳥画、和歌に込めた情景を蒔絵(まきえ)で表したすずり箱などをこの機会に鑑賞したい。
東京には、美術品だけでなく、豊かな紅葉を楽しめる美術館がある。根津美術館に隣接する根津の森は、紅葉の盛りには、国宝に負けずとも劣らない美しさと風格を見せてくれる。東京都庭園美術館は、紅葉も見事だが、建物自体も美術作品として評価が高い。原美術館も、紅葉で有名だが、訪れるなら、館内にあるカフェで出される展示と連動したメニューがおすすめだ。世田谷美術館は、もみじの紅葉が美しい砧公園の一角にある。美術鑑賞の後は、広い園内をゆっくりと散策したい。春の桜同様、秋の紅葉を堪能できる期間は短い。この秋、美術館を訪れるなら、日本の秋の美を合わせて楽しみたい。
東京・南青山にある、茶道具や仏教美術等の日本・東洋古美術専門の美術館。1941 年、 初代根津嘉一郎のコレクションを公開するために、根津家敷地内に開館した。今回のリニューアルは、建築家の隈研吾が手がけた。本館外観は、瓦屋根や縦格子の外壁など伝統的な『和』のテイストと、現代的なスタイリッシュさが融合され、館内はシンプルだが、空調や照明などに最先端の設備を採用し、所有する多くの国宝や重要文化財の鑑賞と保管に最適の空間となった。明治神宮と並んで青山の豊かな森をたたえる庭園は、歩きやすく整備され、庭園内にはNEZUCAFEが新設された。店内ではBGMを一切流していないため、鳥のさえずりや葉々の揺れる音が心地よく響き、ゆったりとくつろぎの時間を過ごすことができる。
1966 年に日本初の日本画専門の美術館として、日本橋兜町に設立された。近代・現代の日本画を中心に、1,800点以上の日本画を所蔵している。リニューアルによって、旧館のおよそ2倍のスペースを持つ企画展示室と常設展示室が地下1階に設置された。企画展示室には、総長92.5メートルの可動式展示壁面があり、大型作品の展示が可能になった。1階には、ミュージアムカフェ『Cafe 椿』がオープンした。青山の老舗菓子店『菊屋』によるオリジナル和菓子と抹茶のセットが楽しめる。また、気鋭のパテシィエ本間淳が手がけた米を使ったオリジナルスイーツとオーガニックコーヒーのセットもおすすめだ。
朝香宮邸として、1933年に建てられ、戦後の一時期は、外務大臣・首相官邸、国の迎賓館などとして使われてきた。1983年に美術館として公開。アール・デコ様式に日本独特の感性が加えられた建物は、それ自体も美術品としての価値が認められている。名の由来にもなった広大な庭園は、芝生広場、日本庭園、西洋庭園の3エリアに分けて公開されていて、9月から11月にかけては、キンモクセイや、シュウメイギク、バラなどを楽しむことができる。
1979 年に、現代美術専門の美術館として東京・品川に開館した。もとは、東京ガス会長、日本航空会長などを歴任した実業家・原邦造の私邸だった建物で、旧日劇や上野の東京国立博物館本館などを設計した渡辺仁の代表的な作品のひとつとしても知られている。1930年代のヨーロッパのモダニズム建築を取り入れた洋館は、昭和初期の建築を語る上でも大変貴重な存在である。美術館では、年間5〜6回の展覧会に加え、講演会、ライブ、パフォーマンスなど、各種イベントを開催している。国内外の現代美術を紹介するとともに、有望な新人発掘にも力を注いでいる。
自然豊かな、砧公園の一角にある美術館。1986年に開館し、これまで国内外の美術品およそ10,000点の美術品を収集してきたが、その大多数をしめているのが、世田谷区ゆかりの作家たちの作品だ。書家であり、美食家としても名高い、北大路魯山人の書画や器も見応えのあるコレクションとなっている。ライブラリーやレストラン、ミュ-ジアムショップなどの施設も充実している。
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