東京新名所ヱビスビール記念館

東京生まれのビールを味わい、東京の歴史に触れる

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東京新名所ヱビスビール記念館

1890年2月25日。120年前のこの日、産声をあげたビールがある。サッポロビールの前身である日本麦酒醸造会社の『恵比寿ビール』だ。大日本帝国憲法が発布され、日本が急速に近代化する中で、ドイツの伝統的な製法にこだわった品質の良いビールが生まれたのだ。場所は東京・目黒区三田。現在、恵比寿ガーデンプレイスがある場所だ。恵比寿ビールは発売後、巧みな宣伝活動や日本初のビヤホール開設などもあって急速に成長し、東京を代表するビールとなった。現在のJR恵比寿駅は恵比寿ビールを運搬するために開設された駅であり、恵比寿という地名も恵比寿ビールの醸造所があることがきっかけになって名付けられたものだ。ひとつのビールブランドが東京の一部分をデザインしているのだから、恵比寿ビールがいかに当時の人たちに愛されていたかがわかる。

その恵比寿ビールが、恵比寿ガーデンプレイス内に『ヱビスビール記念館』をオープンさせた。恵比寿ブランド単独のアミューズメント施設で、恵比寿の全てがわかる空間だ。単独商品のブランドを冠にした記念施設は、日本国内では珍しい。地下1階エントランスを入ると、地下2階に進む大階段があり、その先の床には、ヱビスビールのブランドキャラクターである七福神の一柱“えびす”マークが朗らかな笑顔で迎えてくれる。吹き抜けの地下2階がヱビスビール記念館の中心部で、“ツアーラウンジ”“ヱビスギャラリー”“コミュニケーションステージ”“テイスティングサロン”“ミュージアムショップ”の5つのエリアから成っている。
入場は無料なのだが、ここに来たら是非、500円で参加できるヱビスツアーを体験してもらいたい。ブランドコミュニケーターという専属のガイドが案内してくれる40分のツアーだ。まず案内されるのは、ヱビスギャラリー。約120インチある大きなスクリーンの前に案内され、ブランドコミュニケーターによる解説が始まる。ヱビスビール誕生当時の醸造所の写真などがスクリーンに映し出され、一気に120年前にタイムスリップするのだ。その後も、模造品対策のために変更されたブランドラベルや、牛で恵比寿ビールを運ぶ初荷の様子をとらえた写真など、歴史的資料を間近に見ながらツアーが進む。パリ万博で金賞を獲得したこと、戦争によりブランドラベルが廃止になったことなども語られ、120年の歴史の重さをずっしりと感じる。

ヱビスビールに関する知識が増えたところで、次に案内されるのは、コミュニケーションステージだ。ここはツアー参加者だけが利用できる試飲空間で、2種類のヱビスを飲み比べられる。その量は試飲には十分すぎる程で、参加者の喉を十二分に潤してくれる。またこの時、ブランドコミュニケーターから、“ビールの美しい注ぎ方”や“美味しく飲む姿勢”など、家庭でできる実用的な知識が学べるので、次にビールを飲む機会が待ち遠しくなる。

これでツアーは終了となるが、館内には“テイスティングサロン”や“ミュージアムショップ”など、まだ見るべきところが残っている。テイスティングサロンでは、1杯400円でヱビスブランドのビールが飲めるので、ツアーでは味わえなかったヱビスを飲み比べ、自分好みの味を追求してみることもできる。豚肉を使った料理やスナック菓子など、ビールがすすむつまみもあり、つい長居をしてしまいそうだ。ミュージアムショップには、ブランドキャラクターのえびす様がプリントされた、ここでしか手に入らないTシャツやタオル、お守りなども豊富にあり、東京土産探しにも重宝する。ビールの記念館と聞くと、ビール好きがビールの知識を増やす場所などと思いがちだが、『ヱビスビール記念館』では、ヱビスビールの歴史を紐解くことで、東京の歴史や時代背景を知ることができる。東京の新たな観光スポットとしてインプットしておいてほしい。

ヱビスビール記念館のヴェニューはこちら

ヱビスツアー
時間:11時10分から(最終ツアー出発時間は17時10分)
   平日は30分間隔で毎時10分、40分出発
   土日、祝日は、20分間隔で毎時10分、30分、50分出発
   ※電話やウェブによる事前予約はなし
所要時間:約40分
料金:大人(20歳以上)500円
   中人(中学生以上20歳未満)300円
   小人(小学生以下)無料
   ※未成年者のみで参加の場合『ヱビスギャラリー』までの案内となる

テキスト 基太村京子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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