最新プロレス案内

マッスルモンスターから美少年までを追いかける

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(C)新日本プロレス

ビキニの女の子からマッスルモンスター、ピラニアでいっぱいの水槽まで、日本のプロレスリングにはすべてがある。『タイムアウト東京マガジン第4号』に掲載した、日本のプロレス事情を紹介したい。

往年のプロレスリングファンにも、またスパンデックスに身を包んで取っ組み合う大柄な男たちを見てみるのにちょっと興味がある人にも、日本のレスリングシーンは忘れがたい体験を提供してくれる。アメリカのプロレスリングは、どちらかというと漫画じみた体格と怪しげな演技力によるところが大きいが、レスリングの美学がいまだに健在である日本では逆だ。連続ドラマじみたセンセーショナルな「筋立て」よりも、プロレスはより正統的な戦いの雰囲気を維持している。正義と悪の区別はそれほど単純なものではない。リスペクト、ファイティング・スピリットと、ファンとレスラーの間の強い絆が大事になる。しかし、エンターテイメント性に欠けるという意味ではないのだ。プロレスには多彩な個性、驚くべき戦略とスポーツに対する非常に創造的なアプローチがある。

「ストロングスタイル」対「デスマッチ」


1972年にアントニオ猪木が創設した新日本プロレスリング(NJPW) は、世界最大のレスリング団体のひとつである。日本的なアプローチを維持する一方で、海外の団体との協力や多数の外国人レスラーの参加により世界中のファンを集めている。2人の日本人レスラー、「ハイ・フライング・スター」棚橋弘至と「レインメーカー」オカダ・カズチカが現在、一番人気の所属レスラーである。NJPWにはまた、不敵な「キング・オブ・ストロングスタイル」中邑真輔も所属している。「ストロングスタイル」とは、全力の打撃と関節技、固め技を組み合わせたプロレスの一種で、通常、格闘技出身のレスラーが採用している。
大日本プロレス(BJW)は、1990年代後半に究極にハードコアな「デスマッチ」への特化で頭角を現した、著名な独立団体である。デスマッチには、テーブル、梯子やパイプ椅子に加え、蛍光灯、ガラス板、有刺鉄線、花火、爆薬といった独自の武器が使用され、ピラニアでいっぱいの水槽が持ち込まれたことすらある。デスマッチファイター、「黒天使」沼澤邪鬼のフェイスペイントは、子どもの間で彼自身が驚くほどの人気となった。ファンの間で人気の高い伊東竜二は最近、体重144kgのアブドーラ小林との試合で活動15周年を祝った。BJWは、日本の「マッスルモンスター」関本大介、また最近引退した世界ストロングヘビーウェイト級王者で、英国に着想を得た「キャッチレスリング」テクニックを好んだ石川晋也といった、正統派のストロングスタイルファイターでもまた知られている。レスラーたちが奮闘するのはリング上だけではない。試合修了後の物販ブースでは、時に血だらけ、時に汗とガラスの破片まみれのままでサインをし、写真撮影にポーズを取り、Tシャツを販売する彼らに近付き、話せることもある。

(C)大日本プロレス


女子プロレス界の動向


女子レスラーが単にスポーツをしているに過ぎないと考えているとしたら、勘違いも甚だしい。厳しいトレーニングが要求される世界であり、日本からは世界で最高の女子レスラーが輩出している。人気の女子プロ (女子レスリング) 団体、アイスリボンは、定期的に小規模でアットホームなイベントを埼玉のトレーニング道場(練習場所)で開催している。アイスリボンは所属タレントの発掘と育成で有名で、女優やモデルの卵、さらに非常に若い女子をリングデビューさせている。例えば、現在人気の14歳のくるみは弱冠9歳でデビューした。団体のフェミニンなイメージと最近のアイドルグループhy4_4yh(ハイパーヨーヨ)とのコラボレーションのおかげで、同団体は熱心なオタク (ギーク) 系ファン層をも抱えている。
もう少しガーリーでないものを好む人は、1980年代から1990年代にかけ様々な団体で活躍した尾崎魔弓に注目したい。女子レスリングの伝説的人物である。尾崎は「愛され憎まれるヒール」を自称しており、ハードコアの試合を戦った数少ない女子レスラーのうちの1人だ。彼女は1998年に自身の団体、OZアカデミーを設立し、45歳の今もリングに立つ。その一方では、保育士を目指して勉強中だという。近い将来、さぞかしパワフルなお遊びの時間が見られることだろう。

(C)アイスリボン


幽霊レスラーと美少年団体、ダッチワイフ


いくつかの独立団体がレスリングの世界に新機軸(と、おそらく狂気) をもたらしつつある。666 (トリプルシックス) は、戦う幽霊、怨霊 (公式体重0kg) と、怒れるパンクバンドのフロントマン「ザ・クレイジーSKB」が設立した団体で、試合中に花火を多用することで広く知られている。変わり者タレントの一味には、得意技が『セックスボンバー』の忍、暴走族の特攻隊長からデスマッチファイターへ転身した宮本裕向がいる。例年の豪華なハロウィン・ショーで特に有名なこの団体からは、ゲイレスリング団体である二丁目プロレスリングも派生した。
プロレスファンの大半は男性だが、女性ファンが集まる団体もある。美少年プロレスと呼ばれる新しいグループもそのひとつである。そのコンセプトとは何か。見た目が良く品の良い若い男性を見つけてレスラーに訓練し、その成長をファンが見届けるというものだ。動画でもチェックできる。トレーナーやシニアメンバーの数人は大阪プロレス出身であり、お笑いで知られる関西地域にふさわしく、技能だけでなくお笑いにも重点を置いている。だって女性は皆笑うのが大好きだから、そうでしょう?
DDT (ドラマティック・ドリーム・チーム)は、「バラエティ」レスリング団体としての地位を確立し、その重点はエンターテイメント性と娯楽に置かれている。彼らは、人里離れたビーチや建設現場、人通りの多い商店街やマンションの中でハードコアなレスリング試合を開催してきており、そのイベントは、アメリカのレスリングのパロディや、馬鹿げた試合ルールや規定を組み合わせたものであることが多い。例えば、同団体のアイアンマンヘビーメタル級王座は、2000年の創立以来、1000回以上も移動してきた。歴代王者には脚立、3歳児、猿、そしてDDTで最も愛されるレスラーの1人であるダッチワイフのヨシヒコが名を連ねる。しかし、おふざけ団体だと考えるのは早計だ。彼らは驚くべき才能と奇妙さとを融合させているのである。DDTの「ゴールデン・スター」飯伏幸太は、昨年、NJPWの会長にヘッドハントされたことで、日本で最初のダブル所属レスラーとなった。

(C)美少年プロレス



プロレスが観戦できる場所

毎週、東京中で数件のレスリングのライブイベントが開催されている。次の場所で観戦することができる。

後楽園ホール

ファンが日本のプロレスリングの中心と見なすこのホールは、すべてのプロレス団体が一度はイベントを開催したいと熱望する場所である。1962年のオープン以来、 数十年にわたり、レスリングのみならずボクシングや多様な格闘技の分野においても、数々の歴史に残る試合の舞台となってきた。東京ドームシティのビルの5階に位置している。
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新宿FACE

新宿の少し怪しげな歌舞伎町のゲームセンターの上の7階にあるこの多用途な会場は、演劇場、ライブハウス、また小さなレスリングアリーナとしても営業している。ドリンクは室内と2箇所のバーカウンターで提供され、カウンターはしばしばムーンサルトやフライング・クロスボディーにぴったりな受け皿として機能している。
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新木場 1st Ring
この小規模なトレーニング道場は、多くの比較的小規模な独立団体によく使用される会場で、レスラーの動きに近づくことができる。どの座席からでも最高の眺めが得られる。ただ、レスラーが飛んできたらすぐに逃げられるよう気をつけよう。
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両国国技館
墨田にある高名な相撲ホールは歴史に彩られている。相撲場所開催以外の期間には、多くの大型レスリングイベントの会場にもなり、仕切られた枡の中に座席のある伝統的な「枡席」を体験したり、1万人収容のホール上階の通常席から観覧したりすることができる。
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By Bunny Bissoux
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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