2010年04月23日 (金) 掲載
首都圏には、まるで体に張り巡らされた血管のような鉄道網があり、そこを赤血球、白血球、血小板のように色とりどりの電車が走っている。各路線によって色、形、様々なものがあるが、その中から気になる“顔”を持つ電車を探した。
写真は東武50000系。東武伊勢崎線、東上線、東京メトロ有楽町線、半蔵門線などを走る。電車の形というと、多くの人はこのような箱型を思い浮かべるのではないだろうか。確かによりたくさんの乗客を乗せるためには、法律で定められた寸法いっぱいに車両をふくらませた方がいい。そういった点からも鉄道車両の基本は箱型である。ただし、新幹線など高速で走る電車は先頭車両を流線型にするなどして、空気の壁を突き破るよう設計されている。
路線のイメージアップを狙った特徴付けのため、通勤電車の中にもこうした“出っ張った”形状の車両もある。こちらは都営地下鉄浅草線、京成電鉄、北総鉄道、京浜急行を走っている。ただし低速で走行するため、空気抵抗を減らすという効果はほとんどない。純粋なデザインだ。
こちらは2006年に登場した、東京メトロ10000系。東京メトロ有楽町線、副都心線、東武東上線、西武池袋線を走っている。“純粋なデザイン”といえば、最近では“丸み”が流行しているといってもいい。これなど前頭部は球体状といえる程だ。
こちらは西武30000系。2008年に登場し、西武新宿線、池袋線を走っている。横顔は流行りの球形ではないが、優しいカーブが車両全体を形作っている。テーマは“タマゴ”。そのため先頭部も、卵型に切り抜かれている。
そして内装。こちらは“つり革”だ。通常の持ち手は白色だが、シルバーシート前のつり革は黄色となっている。
車両と車両の間のつなぎ目にあるドア。全面がガラスなので、車内への採光性も良い。ただし、気づかずにぶつかってしまう可能性なども考えられるので、卵の絵が描かれている。取材の際には見つけることができなかったが、車両によってはこの卵が割れ、ヒヨコが飛び出しているものもある。見られればラッキーだ。
運転席を仕切るガラスが、一段低めになっているのがおわかりになるだろうか。“前を見てみたい”子どもの視界を確保するため、低い位置からものぞけるデザインとなっている。こうした子どもに優しいインテリア・デザインは、西武鉄道の女性社員を中心にして行われた。
その結果、2009年に西武30000系は子どもに優しいデザインを表彰する『キッズ・デザイン賞』を受賞。これまで、家電製品や建築、おもちゃなどにはあったが、鉄道車両としては初めての栄誉となった。鉄道は子ども、とくに男の子が一度は興味を持つものだ。今後、こうした車両が増えれば、最初の鉄道体験が、より思い出深いものとなる。もちろん、楽しい車両に出会えれば、“大人”もウキウキするものだが。
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