パブリックアイ 第46

ケヴィン・グレイ(38)広尾にて

パブリックアイ 第46回

ケヴィン・グレイ ミュージシャン

どうしてギターを裸で持っているんですか?

ケヴィン:これは、数年前にゴミ捨て場で拾ったギターなんだ。ケースはなかったから、拾った時のまま、裸のまま家に置いてある。ギターを裸のまま持って電車に乗るのは、ちょっと恥ずかしいけどね。

東京に住んでいるんですか?

ケヴィン:東京に住んでいたんだけど、今は、ちょっと戻ってきているだけ。最初に日本に来たのは1996年で、それから3年間住んでイギリスに戻ったんだ。しばらくしてまた日本に戻ってきて4年住んで、またイギリスに帰って、その後3年、日本に住んだよ。2010年末にイギリスに帰ったんだけど、今は、ライブをするために、東京に滞在している。もう、東京でもロンドンでも、送別会と歓迎会の嵐だよ!

ライブ?ミュージシャンなんですか?

ケヴィン:そうだよ。ソロでも、バンドでも活動している。あんまり知られていないかもしれないけど、東京では、たくさんの“外国バンド”が活動しているんだよ。僕らも、毎月渋谷の『クロコダイル』とかで演奏していたけど、ブレイクするのはなかなか難しい。ロンドンだと、レバノンのバンドとか、色んな人種の人が色んな音楽をやっていて、良く観に行くけど、日本人は日本の曲とか、海外のビッグスターにしか興味がないのかもしれないね。それに、リーマンショックの後は、お客さんがすごく減ってしまったんだ。

次のライブは、いつ、どこでやるんですか?

ケヴィン:2011年2月10日(木)、恵比寿の『ワット ザ ディッキンズ』でやるよ。次の日は祝日で、早起きする心配がないから、ぜひたくさんの人に聴きに来てほしいな。ライブは無料だしね!

ところで、1996年、最初に日本に来た時の理由は何だったんですか?

ケヴィン:日本の文化を学びに、そう、生け花をね!って言いたいところだけど、当時、ブラジルと香港と東京で仕事をしないか、というオファーをもらったんだ。親友が、東京大学に留学していて、東京を薦めるから来てみた。だけど、1回来たが最後、“東京ヴァンパイア”が首に噛みついたみたいで(笑)、何度、東京を離れようと思っても、戻って来てしまうんだ。

何がそんなに魅力なんですか?

ケヴィン:いろいろあるけど……NYに数カ月住んでいた時も、色んなことをずっと東京と比べてた。例えば、電車が10分から20分の間に来るっていうアナウンスがされるんだけど、10分と20分って、相当差があるよね。東京だったら、10秒から20秒だよ、きっと。NYでは、いつも遅刻してたし、何も計画的に進んでいかないんだ。それから、東京はすべてが24時間でしょ。ボストンにいたこともあって、最高の音楽の街だけど、夜の11時を過ぎれば、皆パジャマとスリッパに履き替えちゃうんだ。東京は本当に素晴らしいよ。

僕は子どもがいないこともあって、自分の作る音楽が子どもみたいなもの。だから、その子どもたちには、最高の場所で活躍してほしいと思うんだ。今は、ロンドンで、子どもたちにチャレンジさせている。とっても残念だけど、そういう意味で、僕の音楽にとって東京はベストな場所ではないと思っている。もし、“外人バンド”にも、もっと音楽の世界が開けていたら、ずっと東京に住んでいたいな。

そんなに日本での活動は難しいですか?

ケヴィン:日本の人は、日本にあるものを、あんまり評価していないのかもしれない。例えば、世界的に知られる映画監督、黒澤明だって、カンヌ映画祭でパルム・ドールに輝いて初めて、日本で高い評価を得たって聞いている。ヨーコ・オノだって、小野洋子じゃなくて、カタカナ表記になってこそ認められる存在になったのかもしれないよね。

こうやって話していると、東京に対してとことんネガティブになっているみたいに思われるかもしれないけど、決してそんなことはないからね(笑)。きっとまたいつか、ここで生活しに、戻って来てしまうと思う。

さらに“ケヴィンさん”から

「僕の誕生日はバレンタインデーなんだ。だから、2月10日のライブは、誕生日会みたいになるかもしれない。それで、その翌日は、名古屋で演奏するんだよ」

「東京は人が多いから、本当に色んな人がいるよね。ちょっと前にピアノが弾けてコーラスができる女性を探したんだ。そしたら、“サックスが吹けて、女性みたいに歌える”っていう人から返事があったよ(笑)」

「イギリスは今、経済的に少し難しい状況にあるから、僕の友達も落ち込んでいる人が多いんだけど、僕は、いつも東京からエネルギーをもらっているから、ロンドンに戻ると、ものすごく元気な人になるんだ」

テキスト 東谷彰子
撮影 ジョン・ウィルクス
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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