タイムアウト東京ブログ

巻き寿司アートの世界に浸る

イベント開催告知後すぐに満席となってしまった、「たまちゃんの巻き寿司ワークショップ」が、連休中の3日間、渋谷の「アツコバルーarts drinks talk」にて開催された。

イラストレーターとして活躍する傍ら、8年ほど前からアートとしての巻き寿司を制作している清田貴代、通称たまちゃん。今回は、「ドクロ」をモティーフにした巻き寿司の作り方がテーマと聞いて、勇んでワークショップに参加してきた。

約3時間のワークショップは、まずはたまちゃんによるデモンストレーションからスタート。参加者は皆、たまちゃんの手元から視線を外すことなく、ドクロが生まれゆく様子を見守っていたが、「うまくいかないんじゃないかと不安になっても、最後までやってみて! 曲がったり、ひしゃげたりしても、それが面白いかもしれないから」と、ケラケラと軽やかなトークを織り交ぜつつ、ていねいに作り方を解説。そして、次第にドクロの形が見えてくると、参加者からは「おお〜っ」「そうやるのか!」といった感嘆の声があがった。

やがて完成した巻き寿司に包丁を入れ、鮮やかなドクロの断面が見えると拍手喝采。巻き寿司というか、まるでパフォーマンスアートのようでもある。しかし、切り分ければそれで完成というわけではない。巻き寿司を皿に載せると、次にたまちゃんが取り出したのはなんとトマトソース! ソースをドクロの周囲に流した後は、キュートな色味のファルファッレ(リボン型のパスタ)をあしらい、彩りにセルフィーユを飾れば、かわいすぎるドクロの出来上がり。これはパーティに持参すれば、盛り上がること間違いないだろう。

さて、デモンストレーションを終えたところで、いざ実習。面白いのは、作り方を頭に入れて、完成形をイメージしながら手を動かしているつもりでも、実際にやってみると、どこかトチってしまうところ(もちろんスムーズに作っている参加者もいる)。でも、「大丈夫。どうせ最後は食べちゃうんだから!」と優しく叱咤激励してくれるたまちゃんの指導のもと、奮闘すること約1時間半でドクロが完成。ひとつとして同じドクロが存在せず、参加者それぞれにテイストが異なるドクロが12種誕生した。


まずはドクロのパーツを作り、海苔に酢飯を載せてから最後に成形していく

「頭の中には手本のドクロがあるのに、思うように巻き上がらなかったり、バランスが悪かったり。なかなかコントロールが効かないということを経験して、予期せぬハプニングや発見を味わいながら、人生の縮尺版を感じてほしい」と、たまちゃんは語る。

そのままでもかわいい巻き寿司を、自分のセンスでスタイリングを施したり、アレンジを加えて楽しめるところが、巻き寿司アートの魅力であり、アートとして楽しめる大人の巻き寿司なのだ。たとえば、トマトソースの代わりにブラックオリーブとキドニービーンズをドクロの周りにあしらえば、黒と深紅の色合いが、ドクロを一転してダークキャラに変身させる。そこに生まれる、不気味なかわいさがたまらない。楽しく作ったらそれで終わり!ではなく、そこに自分でアレンジを加えたり、自分なりのストーリーを作り出して、それを自分や友人と、あるいは赤の他人とも楽しめる。そしてもちろん、食べられる。実にインタラクティブな巻き寿司なのだ。

2013年5月1日〜12日までの会期中は、たまちゃんが過去に制作してきた巻き寿司の写真も展示している。そこには、阿修羅や龍安寺の石庭、モンドリアンのコンポジションからハエが飛び交うマキグソまで。もしかしたら誰よりもクールジャパンを体現しているかもしれないたまちゃんによる、アートとしての巻き寿司の世界を覗く絶好のチャンスだ。

なお、今秋タイムアウトカフェ&ダイナーでも、たまちゃんの巻き寿司ワークショップを現在企画中。ご期待下さい。

※5/11のワークショップはすでに満席だが、エントランス500円(ワンドリンク付き)を支払えばデモンストレーションの見学は可能。


先生によるお手本。ドクロの目はサラミ。周囲の黄色いご飯は、なんとカレー風味の酢飯!


同じモティーフなのに、参加者それぞれテイストが違うのが面白い。中にはまつ毛をつけたドクロも(右下)。たまちゃん曰く、「作った本人の個性が出るんですよね。そこが面白い」


会場ではこれまでに手がけてきた巻き寿司アートの写真を手書きキャプション(これが秀逸)とともに展示中

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