成田空港へのアクセス新展開

スカイアクセスとN’EX、成田空港から都心へのアクセスが変わる

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成田空港へのアクセス新展開

京成電鉄『新型スカイライナー』

海外から東京へ、また東京から海外へと移動する場合には、成田空港を利用することになる。では空港と都市部を結ぶ交通手段は何を利用するだろうか。成田アクセスの比率は、およそ5割が鉄道、2割がバス、3割が車となっている。鉄道の利用者が半分を占めていることになるが、そんな“鉄道派”に、より気持ちよく空港へ行くための新しい手段が誕生することとなった。鉄道によるアプローチの最新事情を取材した。

成田スカイアクセス(京成電鉄)

京成電鉄のスカイライナーというと、東京の北の玄関口、上野と成田を結ぶ列車として知られている。成田空港の開港時から運行されているスカイライナーだが、いま現在走っている京成線は古い設計のためにカーブが多く、上野から成田空港までは51分かかっている。その時間を短縮するため、2010年7月17日に開業するのが『成田スカイアクセス』だ。“ジャパン・スピード”というキャッチフレーズがつけられた『成田スカイアクセス』だが、この名称は京成電鉄が運行する成田空港へのアクセスルート全体を示すもの。上野を発車後、日暮里に停まるのはこれまでどおりだが、その後は京成線の北側を直線的に走る北総鉄道の線路に乗り入れる。そして今回開通する新線部分を通って成田空港へ。私鉄では日本一、時速160キロの速さを誇り、日暮里駅-空港第2ビル駅間を36分で結ぶ。空港と都心ターミナル間を30分台で結ぶのは、欧米各国と同程度のアクセス時間だ。

成田スカイアクセスを走る車両は『新型スカイライナー』で、誕生から3代目となる。世界的なデザイナー、山本寛斎が車両全体のデザインを担当した。コンセプトは外観が“風”、車内は“凛”というもの。ボディは白、流線型の前頭部と側面の上部は日本古来の染め物である藍色で縁取られている。車内は近くで見ると市松模様、遠くで見ると波模様に見える藍色の床と、白をベースにした壁、椅子や窓枠に使われるアルミ素材のシルバーと、落ち着きと未来性を感じさせる。各座席の下にはPCの使用を想定して電源コンセントも用意。また、160キロという高速で走るため新幹線で使われているサスペンションを採用、乗り心地にも気遣いがなされている。

JR線との乗り換えに便利な日暮里駅も大幅に改良された。バリアフリー化はもちろんのこと、大きな荷物を持っていてもスムーズに移動できるよう、一般電車とは別にスカイライナー専用のホームも設けられている。

成田エクスプレスの新型車両(JR東日本)

『成田エクスプレス』が誕生したのは1991年。当初は東京、新宿、横浜の各主要駅から発車していたが、現在では、大船、高尾、大宮と関東のより広い範囲と成田空港を結んでいる。東京駅から成田空港は50分ほどで、新しいスカイライナーに較べるとやや時間はかかるが、出発地点を選ぶことができるのは旅行者にとって魅力だ。京成の成田スカイアクセスが開業するのを見越し、成田エクスプレスを運行するJR東日本は、2009年秋に新型車両を導入した。路線を新たに開業できない分、スピードアップはできないので、快適性を向上させたのだ。先頭部には愛称である『N’EX』の文字、白、赤、黒のボディは先代から引き継がれている。車内には10台ほどの大型モニターが設置され、フライト・インフォメーションが4ヶ国語で流されている。また入出国前後の連絡をしっかりしておきたい人にとって、WiMAXによるインターネットの高速通信が無料で使えるのはありがたい。

この新型車両は鉄道ファンが選ぶ最高の賞である、2010年度ブルーリボン賞を受けた(対象は前年にデビューした車両)。なお、2010年7月1日をもって成田エクスプレスの車両は全て新型に置き換わる。これは、成田スカイアクセスの開業を意識してのこととみえる。

ではどちらを選ぶか

京成スカイライナーの運賃は、上野駅から成田空港間、運賃込みで2400円(子ども1200円)だ。本数は朝夕の場合、およそ20分に1本。ほぼ待つことなく利用でき、日暮里駅-空港第2ビル駅間が36分というのは非常に利便性が高い。対してJR東日本の成田エクスプレスの場合、東京駅から成田空港間で、2940円(子ども2470円)。所要時間は50分とやや多くかかるものの、出発地が関東各地に広がっていることは魅力だ。鉄道利用者の場合、東京北部の人はスカイライナー、それ以外は成田エクスプレスというパターンが定着しそうだ。

ちなみに京成、JRともに一般の通勤型電車を利用したアクセス列車も走っている。ただし座れるかは保証出来ないので、旅の始まりから疲れないためにも特急を利用することをおすすめしたい。どちらも1ヶ月前からネットや携帯電話から予約できる。

今後は成田空港の位置づけもだいぶ変わってきそうだ。今年の秋には羽田空港の4本目の滑走路が完成し、一部の国際線の定期便が運航されることになる。とくにアジア近隣諸国や、グアム、ハワイ、アメリカ西海岸などへは、羽田からも向かうことができる見込みで、成田空港のアクセス強化は航空会社の顧客獲得のキーにもなってきそうだ。

テキスト 西澤史朗
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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