Photo by Krijn Van Noordwijk
2011年04月26日 (火) 掲載
サージョンが作り上げるハードでタフなDJセットは、レジェンドの部類に入るだろう。だからと言って、彼がパフュームから少しも影響を受けない訳ではない。この英国人DJは前回の日本ツアーで、彼にとっての音楽におけるヒーローのひとり、中田ヤスタカにあった。中田は日本のエレポップアイドルを手掛けるひとりだ。
サージョン(本名:アンソニー・チャイルド)は、様々な音楽のテイストに対してオープンだ。UKダンスミュージックカルチャーの一匹オオカミである彼は、1993年、バーミンガムで最初のテクノクラブとなった『House of God』を数名の友人と一緒に立ち上げた。インダストリアル、ノイズ、ハッピーコアをセットに取り込み、注目を浴びる。2000年代に入ると、他のDJ達に先駆けて、DJプレイにラップトップを使うようになる。エイブルトンライブとファイナル・スクラッチを使い、2007年にワープからリリースした『This Is For Your Shits』や2010年にリリースされた『Fabric 53』で聴かれるような、緻密で驚くようなDJミックスを披露してきた。
多くの日本の音楽ファンにとって、サージョンを知るきっかけとなったのは、ジェフミルズが1996年に発表したミックスアルバム『Live at The Liquid Room』だろう。この伝説的なミックスCDにサージョンの曲が2曲使われた。それ以降、サージョンは、頻繁に来日。近いところでは、2000年に発表した『Body Request』以来となるニューアルバム『Breaking the Frame』のリリース記念イベントが予定されている。ヴィジュアルは彼の奥さんでもあるドリス・ウーが担当。サージョンが『Geometrical』のリミックスを手がけたことで交流があるゴー・ヒヤマもゲストで登場する。
震災後、来日予定をキャンセルするアーティストやDJが多いですが、キャンセルすることは考えなかったのですか?
サージョン:自分側からキャンセルを申し出るということは、選択肢になかった。いつも応援してくれる友達や日本の音楽シーンを、日本に来てサポートしたかったんだ。
日本には何度も来ていますが、初来日の頃と比べ、大きく変わったことはありますか?
サージョン:大きく変わったのは、自分自身における日本という国や文化、言葉などへの感覚や理解が進んだことだね。テクノシーンは世界的に同じだけど、浮き沈みの繰り返しだね。
前回の来日時、中田ヤスタカに会ったとブログに書いてありましたが、彼のファンなんですか?
サージョン:そう。罪深い秘密だったんだけど、写真をアップしてしまったから、もう秘密にできないね!中田がプロデュースしたいくつかのグループが好きなんだ。だから、会えて楽しかったよ。
これまでの来日時に何度かドミューンでもプレイしていますよね。普通のクラブでのプレイと比べて何か違いますか?ドミューンの環境はあなたのプレイになにか影響しましたか?
サージョン:ドミューンはとても楽しかったよ。最初にプレイする前は、状況が読めなかったから、どうしていいか解らなかった。でも、どこでプレイしようと、その場のお客さんや空間と反応し合って、自分が感じたままをプレイするんだ。たしかにドミューンはいままでのクラブとは違うフォーマットだね。しかし、色々な状況でプレイするチャレンジはすごく楽しいよ。
DJセットの中に意外な曲を入れてくることがありますが、それは事前に考えてあるものなのですが?それとも、“勘”でミックスしているんですか?
サージョン:それはどちらもあるんだ。どうすれば、変わった曲が自分のDJセットにハマるのかを考えるのが好きなんだ。音楽を人と共有したいといつも強く思っているよ。自分のDJセットの中でカーブを投げるときは、うまく行くかどうか分からないで投げているんだ。リスクをとる価値はある。そして、自分がやることを和らげないことが、お客さんへのリスペクトを表現することになると思う。
以前からエイブルトンを使っていた先駆者として、今では多くのDJがレコードバックの代わりにラップトップをクラブへと持ってくる事をどう思いますか?
サージョン:DJがプレイするのにどの手段がいいかは、それぞれの人が決めればいい。個人の好みがあるだろう。自分にとって、マシンは目的達成の為のツールでしかない。よく、音楽が届けられる手段に注目が集まり過ぎることがあるけど、いつでも一番重要なのは音楽そのものだと思う。
『Breaking the Frame』は前のアルバムから約10年振りのリリースとなりますが、今までリリースが無かったのはなぜですか?また、リリースすることになったのはなぜですか?
サージョン:リリースを止めていたわけではないんだ。前のアルバム後は、シングルを幾つかリリースしていたし、リミックスワークもやっていた。自分にとっては、アルバムは総合的なコンセプトワークになる。それらをこなすのは、やはり普通の時間では難しい。スケジュールありきや、その他のビジネス的な事情でリリースをするために、作っているわけではないんだ。なぜ、こんな長い時間になったかは、上手く説明できないな。ただ、何かに強いられて、リリースするのは嫌なんだ。然るべき時に、自然にリリースできるのがいいと思う。
仮に、あなたの前のアルバム『Body Request』と新作を連続で聴くとしたら、何か継続性を見つけられますか?
サージョン:試してないから判らないな。2つの作品のコンセプトはとても違うんだ。自分が両方を手掛けたという事は、同じだから、美意識としての継続性はあるんだろうなと思うよ。
20年もの間、自身をダンスミュージックに捧げて活動しているようなアーティストの中には、パワーダウンしている人もいると思いますが、あなたがそうではない秘密は何かありますか?
サージョン:今の自分は今までより、全然健康的だよ。日常的にヨガをやっているし、アルコールは飲まず、肉も食べない。だから、今まで20年もの間続けてきた、数多くの世界各地への移動を問題なくこなすことが出来ていると思う。このツアーで40歳になるけど、まだまだ音楽に対する情熱はあるし、それらを多くの人とシェアしたいと切望しているよ。
サージョンは、4月28日にUnitでプレイし、その後大阪、福岡、函館、名古屋でツアーを行う。詳細は、www.dj-surgeon.comにて確認できる。ニューアルバム『Breaking the Frame』は、この夏リリース予定。
Copyright © 2014 Time Out Tokyo
コメント