揺れたファッション業界とこれから

相次ぐオープン、展示会延期で冷え込むファッション業界の未来は

揺れたファッション業界とこれから

2011年3月11日に発生した東北関東大震災。マグニチュード9.0を記録した未曾有の大災害は、地球を5周するほどの地震波が計測される、日本史上最大の巨大地震だった。発生からまもなく、東京を拠点にするファッション業界には、薄暗い陰が差し込むようになる。余震や原発事故、計画停電の影響で大手百貨店やセレクトショップは休止、営業時間短縮を余儀なくされ、消費は下降。人々の“自粛”ムードによる衣料品の買い控えも見られた。また、毎年春は新規ショップのオープンラッシュでもあるが、延期が相次いだのもファッション業界の冷え込みに拍車をかけた。『ザラ』の姉妹ブランド『ベルシュカ』の日本1号店(東京・渋谷ゼロゲート)は、3月25日の開店日を4月16日に延期。注目を集めるショップだっただけにオープンを待ちわびていた人々も多かったはずだ。

そして時を同じくして展示会シーズンが到来。多くのブランドやアパレル企業が工場停止や配送困難なことを理由に延期を決定した。あるブランド関係者は「パーツをお願いしていた東北の工場が被災したため、商品を完成させることができず、やむを得ず延期することになった。今は別の工場に再発注して何とか完成しつつある」と語る。 NYから始まったコレクションサーキットの終盤でもある東京コレクションも、震災5日目の3月15日に中止を決定。こちらも余震による安全の問題、交通機関の混乱が主な要因だ。なかには工場に頼んでいたサンプル製品が間に合わず、物理的に発表が困難になったケースも多い。ほとんどのブランドは展示会形式に切り替え、改めて新作を発表すると表明した。

しかし本来、ファッションは人々を彩り、心までも明るくハッピーにする重要な産業だ。生きる上での最低限の衣服はもちろんだが、それを纏うことによって自分らしさを表現でき、ライフスタイルを豊かにする意味も込められている。震災からほどなくして「今だからこそ自分たちにできることを」と多くのアパレル企業は立ち上がった。 日本各地で数十店舗展開する『ユナイテッドアローズ』は義援金5000万円を、日本赤十字社を通じて寄付し、被災地で活用できる防寒アイテムなどを寄贈。大手アパレルメーカー『オンワード樫山』は、毛布、軍手、防寒衣料など総計10万点の物資と、義援金1億円を、日本赤十字社を通じて寄贈することを決定した。また、クリエイティブディレクターのムラカミカイエが代表を務めるブランディングカンパニーSIMONE.INCが中心となり、支援サイト『SAVE JAPAN! PROJECT(savejapan.simone-inc.com/)』も設立。ツイッター上に散乱する震災情報をまとめ、ハッシュタグを用いて地域別に整理した情報を被災者に発信している。他にもチャリティグッズ、オークションなど、多くの企業がアイディアを出してさまざまな支援企画を発足。日本を立て直す一端として今日も活動している。

海外からの支援も大きい。LA発のファストファッションチェーン『フォーエバー21』は義援金募金キャンペーン『100% FOR JAPAN』を実施。3月18日のオンラインショップの売り上げ全額約200ドル(約2億円)を米国赤十字社に寄付した。また『ルイ ヴィトン』や『トッズ』『エミリオ・プッチ』などのラグジュアリーブランドも支援の輪を広げている。

そもそもファッションは平和で安全な生活が大前提にあって求められるもの。まずは困難な状況を少しずつ打開し、1日でも早く心落ち着く生活を取り戻すことがファーストプライオリティとなる。そののち、夢や希望、勇気を与えられるのがファッションの真の役割。日本のファッション業界は生産を止めない。いつ求められても応えられるように、人々に感動を少しでも与えられるように、美しい衣服を作り続ける。復興へ歩み始めた日本のひとつの歯車として。

前坂理恵
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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