駅のホームで絶景オーシャンビュー

夏は海が見えるホームをめぐる鉄道の旅を楽しもう

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駅のホームで絶景オーシャンビュー

8月を目前に、本格的な夏がスタートしている。日差しが強い日々が続くと、つい海へと繰り出したくなるところだが、盆休みまではまだ日にちがある。海に行きたいがそこまでの時間はない、そんな時、景色だけでも楽しんでみてはいかがだろうか。東京から1、2時間で楽しめる車窓の海。都心の近くでも海の風景は楽しめる。

江ノ島電鉄 稲村ヶ崎~腰越間

“東京からいちばん近い海”として昔から親しまれてきたのが、神奈川県・湘南地方だ。都心から横須賀線で鎌倉まで1時間、そこから江ノ島、藤沢までを結んでいるのが江ノ島電鉄。およそ30分間の路線のうち、目の前に海が広がるのはその中盤だ。極楽寺駅を出ると、小さな丘をトンネルでくぐる。次の稲村ヶ崎駅から腰越駅までは左側にビーチが広がる。特に途中の鎌倉高校前駅は、海との間に道路が1本あるだけだ。海からほんのわずか離れてしまうが、腰越の街では電車は道路の上を走る。漁港ならではの鮮魚店の店先には干物が並び、その目と鼻の先を電車で通り過ぎるのは楽しいもの。ちなみに、江ノ島では夏の終わりまで生シラス料理が楽しめる。

JR京葉線 潮見~舞浜間

東京を抜け出す余裕はないが、少し気分転換をしたい。そんな時、雄大な景色を楽しむため、東京駅の地下から出ている京葉線に乗ってみるというのはいかがだろうか。都心部を地下で走り抜けたあとは、一気に高架へと上がる。潮見駅の先、右側には東京の建築を支える木材が集まる貯木場。運河をまたぐと、だんだんと景色が広がってくる。新木場駅からは、荒川、中川、江戸川と東京湾に注ぎ込むいくつもの大きな川を渡っていく。右側には葛西臨海公園の大観覧車が、東京ディズニーリゾートのアトラクションごしには、東京湾のもっとも奥にあたる海の風景が広がる。夜の時間帯によってはディズニーリゾートの花火を楽しめる場合も。

JR東海道線 早川~真鶴間

東京駅から東海道線に乗ると、1時間20分ほどで小田原駅に着く。観光地・箱根の入り口だが、ここは降りずにそのまま海沿いを進む。次の早川駅から先は、右側に箱根の山、左側に太平洋というほとんど平地のない窮屈な地形となる。必然的に線路は山の中腹へと上がり、海を見下ろす形に。みかん畑の隙間から海が見え隠れするようになると根府川駅。急な斜面の中腹にある駅なので、ホームはがけの下、駅舎はがけの上にある。そしてさらに下に広がる太平洋。元旦には海から上がる初日の出を拝むことができる。根府川から真鶴方面へ進むと、箱根から流れ出す白糸川をまたぐ根府川鉄橋がある。すでに標高の高いところを走っているため高低差はかなり大きく、みかん畑と鉄橋、電車と海を一緒に撮影するファンの姿も多い。ちなみに東海道線の車両に入っている緑とオレンジの帯は、みかん畑の葉とみかんの実をイメージしたものである。

伊豆急行電鉄 伊豆熱川~今井浜海岸間

根府川からさらに10分ほど東海道線で進み、熱海駅でJR伊東線に乗り換えさらに20分ほど。そして伊東駅で伊豆半島を南下する伊豆急行線に乗り換えよう。ここまでくると、リゾート特有ののんびりとした雰囲気が漂うようになる。30分ほどで伊豆熱川駅に、そこから先、左側には一気に海が広がる。沿線には伊東、大川、北川(ほっかわ)、熱川、稲取と名だたる温泉も軒を連ねる。一般車両もあるが、できれば時刻表で調べ『リゾート21』型車両に乗ってほしい。この車両、座席の片側が海側を向いたベンチシートになっている。普通列車として運転されているので、もちろん特別料金を払う必要はない。休日には1時間に1本程度、東京へ直通する特急列車も走っている。東京までは2時間ほどの道のりだ。

JR内房線 佐貫町~安房勝山間

東京湾を囲むようにせり出しているのが、神奈川県の三浦半島と千葉県の房総半島だ。そんな房総半島の東京湾側を走ってるのが内房線。東京駅から千葉駅まで40分ほど、千葉駅で内房線に乗り換えて1時間ほど走ると佐貫町駅に到着する。そこからいくつかの短いトンネルをくぐれば、右側には東京湾が広がる。道路1本はさめば海という状態がしばらく続く。途中の浜金谷駅では海とは反対の、左側を見てみよう。まるでのこぎりの歯のように断崖が続く鋸山がそびえている。この区間のオススメは晴れた日の夕方。金色の東京湾の上に富士山のシルエットが大きく浮かび上がるのだ。日が沈んだあとは釣り船のランプや、対岸、三浦半島の夜景を楽しむこともできる。

番外篇

JR鶴見線 海芝浦駅

時空を超える15分でも紹介したが、京浜東北線の鶴見駅から出ている鶴見線の終点、海芝浦駅は「海に近い」というよりは、「海の上にある」といっていい駅だ。京浜工業地帯の真ん中にも海はあり、そして寄り添うように鉄道が走っている。

JR信越本線 青海川駅

東京からはいささか遠すぎるが、オススメなので番外篇に。上越新幹線で1時間半の長岡で乗り換え、信越本線を富山方面へさらに1時間ほどいったところにある日本海に面した駅だ。駅のすぐ横はビーチ。少し波の荒い日であればしぶきがホームまで飛んでくる。きれいな日本海と静かな駅というシチュエーションはいくつもの映画やドラマの舞台として登場している。夕陽の時間帯もオススメだ。

テキスト・撮影 西澤史朗
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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