2011年08月31日 (水) 掲載
長い海岸線をもつベトナムは、海からの攻撃に弱いという歴史があり、これにはかつての皇帝も頭を悩ませていたという。ある日、彼は名案を考えついた。それは、海にドラゴンを放ち、敵の船が近づいたら数千の真珠を口から吐いて退治するというものである。もちろん、これは伝説だ。
ハロン湾を形作っている無数のカルスト地形は、湿潤なベトナムの気候が主な原因だと言われており、それは少々つまらない答えかもしれないが、その場所は変わらず魅力的なままだ。
ハロン湾は、バイトゥロング湾から北東部まで、カットバー島から南西までを含むエリアの中心部にある。息を飲むほどの景色を見るため、毎年、数千人の観光客がボートに乗り海へ出る。洞窟や水上に浮かぶ村などは観光客でごったがえし、真珠やらポストカードを売る人々も溢れているので、もっと本格的な体験をしたいのであれば、バイトゥロング地域の方がオススメだ。ボートや写真撮影をしている観光客の群れでゴチャゴチャしているハロン湾に比べ、バイトゥロングではそこに残された野生の自然が優しく迎えてくれるだろう。洞窟、長い砂浜、珊瑚礁、森林、そして魚を釣って暮らす村たち。
プライベートなキャビンから、1~4日のツアーもセットになった伝統的な航海船による小グループでの滞在など、様々なプランを選ぶことができる。南には、ハロン湾で最大の島、カットバー島があるので、ランハ湾周辺の洞窟や海を探検するにはちょうどいい。ここを訪れる旅行者は、運が良ければ海の上に浮かぶ村の人たちに招待され、ライスワインやお茶をごちそうになることもあるという。
この場所でドラマチックな風景を楽しむための斬新な方法は、空の上から見ること。 安全で安定したロッククライミングを体験できることで知られているAsia Outdoorsと一緒に山を登れば良いのだ(半日のクライミングで4200円)。この会社はベトナムのツアーオペレーターBuffalo Toursともパートナーなので、カットバー島でのカヤックやクライミング、トレッキングなどユニークなアドベンチャーを体験することもできる(2泊3日のクルージング&ロッククライミングコースは2万3000円~)。
成田からハノイまでの飛行機がNo.1 Travelで 2万5600円~(2011年8月下旬現在)購入することができる。
キャシー・ドラゴンは、サステナブル&アドベンチャーなトラベルを提案するコンサルタント。彼女のウェブサイトtraveldragon.comでは、世界中で小旅行を提供しているプロバイダーから集められた数千もの旅行体験を検索することが可能だ。
アンコールワットは世界で最も大きな宗教的モニュメントで、9世紀から15世紀まで続いたクメール帝国の中心的存在だった。現在のカンボジアの街シェムリアップ付近にあるこの不思議な場所には、200平方キロメートルの中に数百もの寺院が存在しているという。スケールの大きな建築とヒンズー教と仏教の寺院が混在した景色には圧倒されてしまう。数百年打ち捨てられていたあと、ジャングルの中から発見され、現在のように用いられるようになったと聞けば、余計ロマンチックに感じてしまう。
通常は数千の観光客がひっきりなしに訪れているエリアであるが、どの場所をどの時期に訪れれば良いのかを知っていれば、静けさの中で十分にアンコールの至宝を楽しむことができる。ある朝は、日の出の光がアンコールワットの塔へと伸び、蓮の花の上に光を注いでいる光景を見る為に早起きをしたり、自転車を借りて小鳥のさえずりをBGMに軽快に走りながらタケオ地域の寺院などを探検したこともある。
こうしてアンコール・ワットに群がる観光客の人ごみを避けて素晴らしい体験をするということはなかなかに大変だが、シェムリアップを拠点にするトラベルエージェンシーAboutAsiaのブンチャイに頼めば、すぐに実現させてくれる。AboutAsiaのサービスを利用することで、実はさらに良いことがある。それは、彼らは仕事で得た利益を援助金として地元の学校に寄付し、それらは教科書購入やボランティアスタッフを雇う為の資金にされているという。彼らが援助している学校への訪問をアレンジしてもらうことも可能だ。戦争と虐殺という2度のトラウマを乗り越えて新たな自信を手に入れたカンボジアの現在の本当の姿を知ることが出来る貴重な体験になるだろう。
2泊3日(3日目は観光無し)宿泊施設、エントリー代、空港からの移動費などを含めて、1人2万円前後~。詳細はwww.aboutasiatravel.com まで。
東京からシェムリアップまでの航空券は、3万4000円~(2011年8月下旬現在)、No.1 Travelを通して予約することができる。
アマンダ・ウッダードはフリーランスのジャーナリスト。その仕事は、『Vogue』『The Gardian』『The Sydney Morning Herald』などで見ることができる。彼女が書いた旅行に関する記事はamandawoodardartpr.comにも掲載されている。
約40年前、資源が豊富なトルクメニスタンがまだソビエト連邦下にあったころ、詳細不明の“掘削作業現場での事故”がカラクム砂漠の地中深くで発生した。この事故により、ダルヴァザ・ガス・クレーター、通称“地獄の門”と呼ばれる場所が生まれた。
いったいその事故がいつどのように起きたのかは未だに不明だが、排出され始めたガスは小さな街に電力を与えるには十分なほどの量だった。住民たち(現在は近くに移住)が窒息しないようガスに含まれる毒素を取り除くため、当局の手により火がつけられ、そこに生まれた炎は永遠に燃え続けるのはないかと言われるほどだ。現在、この場所は“真面目な旅行者”も訪れるべき場所、に含まれるようになった。
トルクメニスタンの首都アシガバートから4、5時間にあるこの場所では、現地のガイドと4WDの車の手配をオススメする。道なき道や砂丘を渡っていかなくてはならないが、大地の切れ間から見える地獄の炎の眺めは、まさに壮観そのもの。特に夜は最高だ。ゆらめく大気を頼りに熱の壁に近づけば、裂け目の向こう側には一生忘れることのできない光景が広がっている。岩だらけの浅い小川、水の代わりに“火”が流れていて、それも下流から上流へと逆に流れている姿を思い浮かべることができたのならば、ダルヴァザで目撃できる風景について想像がつくかもしれない。ガードレールなどは一切ないので、衝撃的な写真をとることも可能だが、常に乾燥・加熱しているため浸食が進んでいるので、安全のため、くれぐれも2メートル以内には近づかないように。
バーベキューでのディナーだけでなくテントも寝袋もガイドが用意してくれるが、空気のマットレスなどを持参した方が良いかもしれない。確かに一晩だけのことかもしれないが、それでも突然、気温がガクッと下がることもある。ヘッドランプもおすすめアイテムのひとつだ。クレーターからキャンプ場までは約800メートルほど離れているし、火口からの炎だけがなんとか周囲を照らし出している状態だからだ。また、靴はくれぐれもテントの中にしまうことを忘れずに。サソリが温かい場所を探して靴の中に忍び込んでくるらしいので注意しよう。また人間の掌ほどあるクモも要注意。 噛まれてもそれほどヒドイことにはならないらしいが、それでもごく稀に被害が報告されているのでしっかりと知っておく必要があるだろう。
トルクメニスタンの現地人によると、イランよりも天然ガスが豊富なはずなのに、最近までこの国でとれるガスはそのままロシアへと送られていたらしい。もちろんそこでの値段も決められている。6月終わりに政府がもう1本、ガスのパイプラインを開通させたらしいが、それも中国へと伸びている。新しいパイプラインの計画もあるが、今度はトルコへと向かって伸びていく予定だ。こういった開発は、ダルヴァザで湧き出たガスを使い新たな収入を得ようということなのでトルメキスタン人にとっては素晴らしいことかもしれないが、旅行者にとっては決していいことではない。ガスは元には戻ってこないのだから。いつガスが止まって地獄の口が閉められるのかははっきりしていないが、なるべく早く見に行った方がいいだろう。
ダルヴァザへの旅行情報はKoryo Toursまで。10月22日~29日に予定されているツアー(航空券以外で13万円 ※2011年8月下旬現在)を使うか、もしくはAyan Tourism & Travel Companyなどを使って自分で旅行計画を立てるのが良いだろう。
東京からアシガバートまでのフライトはトルコ航空で25万円(2011年8月下旬現在)ほど。
ナンシー・ペジェグリーニはタイムアウト北京の古典&演劇担当のエディター。Koryoツアーズのガイドの仕事も行っている。
ラジャスタン州の砂漠の砦は、インド北西部全体に広がっている世界最大の砂丘。東にそびえるタージ・マハールはその美しさで知られているが、ここにある砂丘も、退廃と強さが見事に融合した存在として、インドの華やかさを代表している。
ラージプート王侯たちの交易の拠点として作られた砦だが、デリー発17日間インド西部へのツアー(18万5000円、飛行機代は含まず。www.transindus.co.uk)で簡単に行ける場所となっている。見るべき3大観光地は、ジョードプルにある“青の街”のメヘラーンガル砦、ピンクに色づいたジャイプル郊外のアンベール城、そして西の彼方に見えてくる、ジャイサルメール城だ。
15世紀のメヘラーンガル砦は、ムーア人による繊細な遊び心で作られた宮殿と、十字軍の堅牢な城壁が組み合わされてできている。刺激的なこの街の上にそびえ立つ、大砲が設えられた厚さ12メートルの城壁は、侵入者をあざ笑うかのようだ。象の侵入を防ぐように設計されたジグザグの石畳の道を通り、いくつもの門をくぐり抜け、宮殿の内部へとたどりつく。現在では、カメラを構えた西洋人の観光客とインド人の観光客がクジャクの行進のように列をなしているが、静かな一角をなんとか確保し、この場所で起きていたドラマに思いを馳せることができれば、それは至福の時間となるだろう。
もっと心底魅了されたいという欲張りな人は、ジャイサルメールまで足を運んでみるといい。城壁で囲まれたこの街の住民にとって、宮殿や99カ所の稜堡(りょうほ)は確かに圧巻だが、日常のひとつでしかない。それよりも、この街では本当のインド的な感覚を存分に体験することができる。夕暮れ時の裏通りには、フラフラと歩く牛や叫び声をあげるリキシャー、ガラムマサラの香りと熟し過ぎたフルーツの本当の美味しさ、そして路上で歓声を上げるクリケットプレイヤーたち。それらが、夕日のオレンジ色に染められて浮かび上がっている。
悲しいことに、ジャイサルメールは現在、最大の危機に晒されている。砦の基盤に染み込んでくる水が原因で、地盤沈下が進んでいるというのだ。 もしこの街を訪れたなら、砦の外にあるホテルに泊まってほしい。そこで使った水は砦には影響を与えないし、それと同時に地元の観光事業(ラクダのトレッキングなど)を使うことで、ジャイサルメールを経済的に支えることができる。
一方ラジャスタンでは、先ほどよりは小さいサイズの砦が沢山あり、現在はホテルに改修されているものも多い。 Chandelao Garh(6000円、ダブル・1泊料金)は300年の歴史を誇るジャイプル街に建つ駐屯地で、クジャクが飛び回り、ブーゲンビリアが咲き誇っている。
こういったホテルでの滞在費は現地の村をサポートする為に使われるので、城壁の上で食事するなど、思い思いの“マハラジャ”の幻想を思い描きながら滞在するのもいいだろう。もちろん、立派なエコツーリストとしても十分に認められるだろう。
東京からニューデリーへのチケットはNo.1 Travelで4万2000円~(2011年8月下旬現在)。
ダン・リンステッドはWanderlustの編集者。
ルアンパバーンほどに、建築的な美しさと自然の美しさを兼ねている場所は、そうないだろう。ラオスの第二都市であるルアンパバーンは、メコン川とナムカーン川が合流する半島にあり、穏やかなフランス植民地時代の別荘と仏教様式の金色の僧院が混在している。
1995年にユネスコの世界遺産に登録され、フラっと訪れるバックパッカーや中高年の旅行者を中心とした世界中からの観光客が集まる古代都市(地元の人の数よりも旅行者が多くなる時期も)として知られるようになった。
たとえそうだとしても、朝5時に雄鶏が鳴く声を聞き、「サバイディー」(ラオス語でこんにちは)と挨拶を交わし、現地の人たちとふれあいながら、街の魅力を散策するという方法はいくつもある。
修道院のまわりをフラリと散策すれば、この街の歴史や文化を胸いっぱいに堪能することができる(修道院に行く際の服装は十分に注意を、腕や足を出してはいけない)。混雑を避けるなら、早朝や夜がベスト、祈りに耳を傾け、新人の僧侶とおしゃべりすることもできる。ラズベリー色に塗られた壁とギラギラ光る壁画で知られるワット・シェンクトーンは中でも良く知られた修道院のひとつだが、ひとつひとつがそれぞれ魔法の力を持っているかのようだ。群衆を避けてプーシーの丘を登ると、鳥になった気分で空から街を見下ろすことができ、綺麗な夕日を楽しむこともできる。または、メコン川沿いに立ち並ぶ数十のレストランのひとつに入り、キンキンに冷えたビールを飲んで、ラオスの美しさを存分に満喫する夕暮れも最高かもしれない。
街の外にでると、森を探検できるツアーや村のホームステイ、ホワイトウォーターラフティング、エレファント・ライドなど楽しいことが目白押し。ただし、動物のアトラクションを体験する前には、そのオペレーターが動物愛護の観点をもつ“正しい人物”なのか、調べておく必要がある。厚皮動物の背中に乗るだけでは満足できない人たちは、 Shangri Laoで色々と尋ねてみよう。19世紀の冒険家P・ネイス博士が辿った道のりを探検させてくれる。彼は、ナムカーン川に沿った15キロメートルの道のりを探検している。(昼食込みの半日コースで7000円)。
東京からルアンパバーンへのフライトは No1 Travelで6万3000円~(2011年8下旬現在)。
ダイナ・ガードナーはタイムアウトのLGBT編集者で『Footprint’s Laos Handbook』の著者でもある。
野心的な男たちが思い描く永遠の高み『ヒマラヤ』。チベット高原からインド半島を分離させている、全長2400キロに及ぶこの山脈は、8848メートルのエベレスト山を含んでいるだけでなく、7000メートル以上の高さを誇る100以上の山々が連なっていることでも知られている。ちなみにアジア以外の場所で、7000メートルを超えている山はひとつも存在していない。
ここには、珍しく静けさがちゃんとある。ときどき、風が景色の中を吹き抜けるぐらいである。だがここでは、変わりやすい天気と母なる大自然の法則により、危険と恩恵は同じ尺度で図られている。つまり、ヒマラヤ山脈への旅は、決して気軽なものではないのである。
世界レベルの登山家たちが認めているIbex Expeditionsは、ラダック、ザンスカール、ヒマーチャル、シッキムそしてガルワールへのワクワクするような探検旅行を計画してくれる(フライとチケットを除いて5日間で6万円)。その他にも、One World では、ネパールやチベット、インド、そしてブータンのルートを経由してエベレストのベースキャンプへと辿り着くプランも提供している(エベレスト街道のカンジュン・フェースに20日間で35万円~(2011年8月下旬現在)フライトチケットは除く)。
雪に覆われた山頂とは対照的に、ヒマラヤ山脈の裾野にある穏やかで肥沃な村の風景を見ると、こんなに困難な土地でも耕すことができるのだと考えさせられる。PureQuestにガイドをお願いすれば、7000メートル級の山への登山もアレンジしてくれるし、バードウォッチングや自転車でのアドベンチャーツアーやサファリツアー(3万7000円~)なども扱っている。
ジェフ・フックスは、『Outpost』のヒマラヤ現地担当エディター。彼の仕事は彼のサイトwww.jefffuchs.comやwww.tea-and-mountain-journals.comなどで見ることができる。
ヒマラヤ東部の中心部深くに位置するブータン王国は、インドと中国の間に位置する宝石のような場所だ。オランダとほぼ同じ大きさでありながら人口は75万人以下という小さな国。ネパールそばのエベレスト山脈のドラマチックな山頂の風景は、ブータン王国の首都ティンプー付近にあるハイキングルートから見ることができる。
近隣諸国が経済的にどんどん発展している反面、ブータンを訪れると、まるで過去の時代にでも戻ったかのような感覚に陥る。君主制によってコントロールされた近代化の中、1999年まではテレビを持つことが一切許されていなかったという。現在でも、男女問わず伝統的な衣服を身に纏い、うるさい自動車の騒音もなく、日中は開け放たれた玄関から暖かいお茶の香りが漂ってくる。そして、モモ餃子を蒸している香りが、道へと漂っているのだ。
街の外には、大きな要塞のような修道院が険しい崖や山頂に寄り添うように建ち、鮮やかに染められた僧院の旗が青空を背景にはためき、深紅のローブをまとった若い僧侶たちが僧院の階段で祈っている。山側はゴツゴツとした灰色の岩肌が見え、緑一面の谷には花が咲き誇り、アイスブルーの小川が流れる。この息を飲むような景色を見ていると、多くの旅行者たちが、まだ手を付けられていない大自然に囲まれたこの国を訪れ、ハイキングしている理由がよくわかる。
ブータン王国は、その大自然の美しさや伝統を守る為に、一生懸命努力している。この国の王は、GDP(国民総生産)よりもGNH(国民総幸福度)を大事にしていることで有名である。そして、環境に対して配慮したやり方で経済を発展させなくてはならないので、外国からの訪問者も常に厳しく制限されている。一晩の滞在費は最小で1万6000円ほどで、少し高いようにも思われるが、食事から宿泊施設、移動からガイドまで全て込みなので手頃な価格といえる。旅行者は常にガイドと共に行動をしなくてはいけないが、グループではなく個人旅行を計画することもできる(ただし個人旅行者の場合、一晩3100円の追加料金が加算、カップルの場合は一晩2300円になる)。登録された正規のトラベルオペレーターを通して予約しないといけないので要注意。詳しい情報はIbex Expeditions で調べよう。
東京からブータンのパロまでのダイレクトフライトは残念ながら存在していない。まずバンコクまで行き、そこからパロまでのフライトを予約するのがおすすめだ。Drukairから、4万円で定期便が出ている。
ピア・ガドカリは、ロイターのアジア担当記者。彼女の旅行については blogs.reuters.comでチェックできる。
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