2014年08月08日 (金) 掲載
表通りから横へ入った町筋に小さな店が連なる横丁。ルーツを敗戦後の闇市マーケットにさかのぼるものもあれば、町おこしの一環などで比較的最近作られたテーマパーク的なところもあるが、いずれも安く飲み食いできて、人と人との距離が近く、気取らず楽しめるのが醍醐味。ひとつのエリアにさまざまな店が集まっているので、気分に合わせてはしご酒ができるのもいい。外国からの友人に日本文化を満喫してもらうのにも格好の場所だが、数人入ると満席になってしまう小さな店も多いので、少人数で行くことをおすすめする。新しいものが溢れる東京にあって、今も昭和の面影を残す横丁を紹介する。
ピークタイム:18時〜24時
渋谷駅のすぐ横、宮益方面の線路沿いに位置する、のんべい横丁。はじまりは昭和25年、東急本店通りにできたのが、国の区画整理で現在の場所に移転した。戦後すぐの屋台で人気だった焼き鳥や大きな具のおでんが食べられる名店が今もあり、昭和の時代を知る「おかあさん」 が現役として立つ店もある。そんな店へ3代に渡ってなじみ客として足を運ぶ人も少なくない。一方で、本格ビストロやバーなど、今の時代を反映した店もあり、若い女性やクリエイター、業界人など幅広く客が訪れる。場所柄、外国人も多いが、そんな多種多様な人々が肩を寄せ合い、垣根を越えて打ち解けられるのも、この横丁の良さだろう。 客同士、店同士の距離が近く、客と店が一体となって居心地の良い空間を作っている横丁。
ピークタイム:17時〜朝まで
恵比寿の東口からほど近く、かつて商店街として栄えた、山下ショッピングセンター跡地にできた恵比寿横丁。駒沢通りを進むと色とりどりに光る看板が見えるが、通り沿いにある扉を開けるとそこは活気溢れる別世界が広がる。海鮮やおでんから中華、ビストロ、バーまで約20店舗が入っているが、中には新鮮な生肉を使った「肉寿司」が食べられる店もある。3〜4坪ほどの小さな店がひしめき合い、通路まで机やイスが並べられており、その間を練り歩くだけでも気分が沸き立つ。外国人観光客が物珍しげに店をのぞいていったり、若いカップルと老カップルが隣り合わせに杯を傾けていたり。人と人との距離が近く、自然と仲良くなれる空気がそこにはある。ほとんどの店が、横丁内の別の店への出前をしてくれるので、どの店に入るか迷う人も安心だ。
ピークタイム:18時〜26時
三軒茶屋には、世田谷通り、国道246に囲まれた、通称「三角地帯」と呼ばれる一角がある。この三角地帯には、エコー仲見世商店街やゆうらく通り、三茶3番街といった路地が平行しており、迷路のような路地には飲み屋や商店が軒を連ねている。戦後の焼け跡になった商店街にバラック建ての商店が並び始め、昭和25年には仲見世商店街が現れた。発展に道路の整備が追いつかないまま、当時の混沌とした面影を残す町並みが形成された。そこにある店、集う客は年代もさまざまだ。日本酒好きなら知らない人はいない赤鬼や、焼き鳥の名店、床島をはじめとした昔ながらの店もありつつ、カレーやアジア料理、ワインが楽しめる店などニューウェーブもある。路地が狭いだけに店と人、人同士の距離も近い。眠らない土地、三角地帯のエネルギーは今日も酔客を引きつけている。
ピークタイム:20時〜朝まで
歌舞伎町1丁目にある飲屋街。花園神社と隣接して、木造長屋の店が狭い路地をはさんでマッチ箱のように並ぶ。戦後のマーケットや青線地区から発展し、昭和40年代になると作家、詩人、漫画家、映画、演劇などの文化人が夜な夜な安酒を飲みながら議論に明け暮れる界隈となった。寿司、焼き鳥、小劇場、ロックバー、演劇バー、漫画アニメバー、作家がよく集まる店など多彩なジャンルの店がひしめくが、一時期、200軒以上あった店が150弱にまで減った時期もあった。2000年代に入ってから次第に若い世代が新たなコンセプトで店を開くようになり、現在250軒超の店が営業している。中には、客から店主となった若者も少なくない。夜7時頃からポツポツと店は開き、夜がふけるほどににぎわいを増す。「会員制」と書かれた敷居の高い店もあれば、「日本一敷居の低い文壇バー」があったり、客の半数以上が外国人観光客の店もある。路地を歩いてみるだけでも、そのカオスとタイムトリップ感を満喫できるだろう。大都会新宿のさなかに今も残る東京の名所。
ピークタイム:昼過ぎ〜23時
歌舞伎町のゴールデン街と並ぶ新宿を代表する飲屋街。新宿西口の「新宿大ガード」の横、パレットビルから青梅街道にかけての路地に長屋のように酒場が立ち並ぶエリア。戦争の爪痕残る焼け野原に露天や屋台が集まり、そのうちに戸板1枚で仕切られた小さな店が出来たのがはじまり。物資の乏しい戦後にはじまった店も多く、もつ煮、もつ焼きや焼き鳥屋の看板をよく目にする。その他、定食屋やそば屋、喫茶店にバーなどが軒を連ねるが、2000年になろうかという頃、区画の1/3を全焼する大火事があった。しかし昭和の情緒を色濃く残すたたずまいは今も健在だ。年期の入った焼き台や店主のたたずまいは、いい酒の肴だ。「オヤジの聖地」とも言われたが、近年は観光客向けの店も増え、外国人や仕事帰りの女性客の姿もちらほら見かける。1人のときは入店の際、人差し指を1本立ててのれんをくぐるといい。
ピークタイム:昼〜23時
吉祥寺駅北口の目と鼻の先にある横丁。縦に横に走る路地に小さな店が連なる様子がまるでハーモニカのようだと名付けられた。そのルーツは戦後の闇市までさかのぼるが、昭和の趣をそのままに60年ほどの歴史を持つ。90年代後半より、ハモニカキッチンをはじめとしたモダンな店がオープンし、それまで横丁とは縁遠かった若い層が足を運ぶようになる。アパレルや雑貨店など昼間から空いている店も多く、特に週末には羊羹やとんかつ、たい焼きを求めてあちこちに行列ができる。他にも、昭和22年創業の干物専門店のなぎさや、うなぎの蒲焼きの串の坊など、老舗のたたずまいは横丁には欠かせないもの。夜になるとさらに賑わいを増すが、どの店も間口がオープンでカウンターメインの店が多く、一人でも入りやすい。隣の人とはご近所感覚で誰彼ともなく会話が始まり、その昭和的な距離感がなんとも心地よい。100軒ほども店があるので、1品、1杯頼んだら次の店へ…と横丁巡りができるのも醍醐味。
ピークタイム:昼〜23時
北口の純情商店街入口の手前、
八百屋と魚屋の間の細い路地を入ると10店鋪ほどの小さな横丁がある。大一市場は以前、乾物屋などが並ぶ建物内市場だったが、今ではアジア料理を中心とした飲食店街へと生まれ変わった。生麺のフォーが食べられるベトナム料理屋、チョップスティックスをはじめ、同じくベトナムの焼き鳥屋ビンミン、韓国居酒屋いっぽなど、アジア屋台の風情満点。カレーのおいしいバルやラーメン屋などもあり、高円寺の若者の心を掴んでいる。一方、駅の西側に飲み屋が密集し、焼き鳥屋、ホルモン屋などが並ぶ。 通路にはみ出した席では老いも若きもがジョッキを傾け、ほどよい喧噪と開放感が次々に人を呼び込んでいる。
ピークタイム:昼過ぎ〜23時
西荻窪駅南口を出てすぐ、吉祥寺方面へ向かって延びる飲屋街がある。もうもうと煙が立ち上るのは、この界隈にいくつもの店鋪を構える焼き鳥屋、戎(えびす)。40年以上続く古株だが、200円台からある日本酒やハイボールに100円を切る串、その他小皿など、財布に優しいのがうれしい。若いカップルからサラリーマン、地元の老人まで、路地に並べられた小さなテーブルは明るい時間から賑わっている。このエリアはエスニックにも強く、タイ料理のハンサム食堂、本場台湾料理の珍珍亭のほか、沖縄やモロッコ料理などがある。エスニックに加えてバルなどのニューウェーブもあり、古い木造の建物がリメイクされて心地よい空間となっている。行列のできるラーメン屋、はつねは夕方には閉まってしまうのでご注意を。
ピークタイム:20時〜朝まで
茶沢通沿いにあるザ・スズナリという劇場に併設された施設一体型の横丁。ザ・スズナリは、「演劇の街」下北沢のランドマークでもある本多劇場グループ最古の劇場。元々、アパートすずなり荘の2階部分を改築して稽古場を作ったのがはじまりだったため、劇場の構造もそれを伺える作りとなっている。1階に15軒あまりのレトロな雰囲気の漂うバーや飲食店が入っている。下北沢にあった別の横丁、駅前食品市場は再開発によりすでに取り壊しが始まっている。鈴なり横丁も区画整理の対象となっているそうだが、本多グループは反対をしている。
ピークタイム:朝〜夕方
人形町駅を出てすぐ、甘酒横丁交差点から明治座までの400メートルほどの通りに70弱の店が並ぶ。明治時代、横丁の入り口付近に尾張屋という甘酒屋があったことから名付けられたが、当時は今よりも南に位置しており、道幅も狭い小路だった。現在の甘酒横丁は、昔ながらの職人や老舗の息吹が今も感じられる場所で「下町グルメ」の宝庫だ。そばの名店にはじまり、志乃多寿司総本店の少し甘めのいなり寿司や秘伝だしの入った、鳥忠の玉子焼き。甘いものでいうと亀井堂や板倉屋の人形焼き、柳屋のたい焼き、玉英堂の虎家喜(とらやき)ほか、ちょこちょことつまみながら歩くのも楽しい。甘酒を売る豆腐屋、双葉商店の名物は、直径12cmもあるジャンボがんもどき。 近くには安産、子授け、水商売の神として有名な水天宮があるので足を伸ばしてみてもいいだろう。
ピークタイム:11時〜夜
上野〜御徒町間の高架下とその西側に長く伸びる商店街。戦後の闇市時代、飴を売る店が多かったことと、アメリカ進駐軍の放出物資を売る店が多かったことから「アメヤ横丁」と名付けられ、略して「アメ横」と呼ばれるようになった。食材から衣料、化粧品まで舶来品をはじめ、魚介類や乾物、雑貨や宝飾品など400軒以上の店がひしめき合っている。卸売価格で売る店も多く、中には値引き交渉に応じてくれる店も。特に年末には、正月用の食品を求めてくる人々の波が、年の瀬の風物詩となっている。「軍もの」の聖地、中田商店のほか、カジュアルな洋服や靴、スポーツ用品店も集まっており、若者も足を運ぶ場所。アメ横センタービルの地下では、中国や東南アジアの食材が手に入る。
ピークタイム:朝〜夕方
浅草橋駅と御徒町駅のほぼ中間あたり、台東区鳥越に位置する商店街。230メートルに渡って食料品を取り扱う店が連なる。もともと町工場が多かった地域で、忙しい共働きの家庭のために、おかずを売る店が増えたのが背景。この横丁でおかずを買い求め、家ではご飯を炊きさえすれば食事ができる便利さから横丁は繁盛した。自家製佃煮、肉屋の唐揚げなど、ごはんがどんどん進みそうな懐かしい味のおかずが並ぶ。横丁内に、テーブルと椅子があるちょっとした休憩所があるので、そこで惣菜をつまむこともできる。日曜は閉まっている店が多いのでご注意を。近隣は、戦災を免れた古い下町風景が残る貴重なエリアでもある。毎年6月には、近隣の鳥越神社の例大祭として鳥越祭が行われる。
ピークタイム:11時〜21時
大井町駅東口を出てすぐ、北側の線路沿いに広がる横丁、東小路と平和小路、すずらん通り。迷路のように細く入り組んだ路地には、昭和の下町風情満開の飲み屋や食堂が60軒ほどある。この横丁はがっつり食べて飲める店が多い。東小路にある老舗の洋食屋、ブルドックでは、25cmもの大きさのジューシーなメンチカツが手頃な値段で食べられる。江戸前寿司の金井寿司では、にんにく醤油に漬け込んだトロののり巻きを炙った『焼き寿司』を。通りまで人で溢れ返っているのは肉のまえかわで、店先で串カツや焼き鳥片手に一杯やれる立ち飲み。店主の人柄、戦後そのままの建物が残る横丁の風情に、お腹も心もいっぱいになるはず。
ピークタイム:19時〜23時
スカイツリーから京成線で10分弱、各駅停車の止まる立石駅にある、呑んべ横丁。南口には商店街の立石仲見世があり、もつ焼きの宇ち多゛に、おでんの二毛作、鳥料理の鳥房に栄寿司などの有名店がある。北口の線路沿いを東へ進むと現れるのが呑んべ横丁で、30mほどの2本の路地に居酒屋やスナックなど数十軒がびっしりと並ぶ。昭和30年頃は「立石デパート」と呼ばれた商店街だったが、現在はトタン屋根で覆われたアーケードの所々から青空がのぞき、廃屋になっている所もいくつかある。そのディープさは都内でも随一。ネオンの瞬く店のほとんどが外から中が見えないので、ある意味上級者向けと言えるかもしれないが、スナックの扉の向こうでは、酸いも甘いも知っているママ達が意外と温かく迎えてくれたりもする。初心者は比較的入りやすい、おらんだ屋や、おでんやから攻めてみてもいい。
ピークタイム:15時〜23時
赤羽駅東口からすぐのOK横丁。100メートルに満たない路地に30軒近い居酒屋やスナックなどが並ぶ。諸説あるが「何でも飲み食いできる(何でもOKな)横丁」と名付けられたとの説も。戦後の闇市から派生した商店街ができたのが昭和29年。一番古くから続く名物店、八起では、もつ煮などのホルモンや中華系メニューに強く、良心的な値段で楽しめる。他にも、うなぎと鯉料理の店や居酒屋など昼間から店を開けているところも多く、庶民の強い見方であるだけでなく、のんべいにはたまらない場所だ。昭和の空気感を残す貴重な場所であることから、映画やPVの撮影にもたびたび使われている。
ピークタイム:昼過ぎ〜22時
浅草寺境内のすぐ西隣、場外馬券場の南側に70〜80メートルほど続く飲み屋街、ホッピー通り。ホッピーは、半世紀以上の歴史を持つビアテイストのドリンク。焼酎と割ってもビールよりも安いので、庶民の懐にやさしい。別名を煮込み通りといい、牛すじの煮込みやもつ煮込みなど、安くてうまい店が点在している。コリアンタウンだった背景から、焼き肉屋も多数ある。連なる赤提灯の元、店先に並んだテーブル席にはかつての主流だった競馬客に混じり、若者や外国人観光客や家族連れの姿もあり、ほろ酔い気分で下町気分を満喫している。平日は昼間から、休日は朝から飲めるのでいつ行っても賑わっている。ウィンズ浅草の目の前には、藤棚の下に続く飲屋街、浅草初音小路飲食街。競馬の開催日には、店先の椅子に座ってモツ煮とホッピーを傍らにレースの予想をする人の姿も。男色の街としての歴史もあるため、ゲイバーも数店舗存在している。
ホッピー通りの詳しい情報はこちら
浅草初音小路飲食街の詳しい情報はこちら
ピークタイム:11時〜23時
新橋〜有楽町駅間の高架下に長く連なる飲食店。明治時代に作られた古い煉瓦の橋桁には、立ち飲みや焼き鳥、もつ焼き、もつ煮、中華などあらゆる店が組み込まれている。炭火焼の羅生門、もつ焼きの登運とん、焼き鳥のとん太など、いずれもその安さとうまさのバランスは「サラリーマンの聖地」と言われる所以。ドイツ料理のバーデンほか、エスニックや韓国料理など、よりどりみどりなのもうれしい。有楽町寄りには、あちこちから煙が立ち上る、有楽町ガード下焼き鳥ストリートと呼ばれる一画があり、赤提灯が連なる店先のテーブルで老いも若きもが飲みかわしている。電車の騒音や振動をもろともしないにぎやかな酔客たち。その喧噪は、酒も食事もさらにうまくする。
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