ボーダレスな人びと 第3

森 綾(フリーライター)

ボーダレスな人びと 第3回

タイムアウト東京とフェアトレード専門ブランド、ピープル・ツリーのコラボレーション連載、第3回目に登場するのは、ノンフィクションやエッセイのほかに、2,000人以上の有名人のインタビューを手がけるフリーライターの森綾。言葉を使ってボーダレスに仕事をこなす彼女に、その原点を聞いた。

ーライターになろうと思ったきっかけは?

子どもの頃からとにかく本が好きで、将来は作家になりたいと思っていたんです。でも、たくさん本を読む中で、すごい作家の作品と出会うと、これは無理だなって。 小学校の頃、先生から詩を書くことを勧められて、とにかく毎日、毎日書いたんです。今でもそのノートが60冊ぐらいあるんですよ。さらに、小学生新聞にも投稿をしていて、投稿すると必ず載せてもらえたんです。それで、作家は無理そうだけど、新聞記者ぐらいならなれるかもって(笑)。

ーまさに、子どもの頃に思ったことを実現されたんですね。

そうなんです。女子大生の頃にはラジオで話す仕事もしたんですが、結局は気持ちを伝えるのに書く方が早いんですね。放送って瞬発力が大事だと思うんですが、私はもうちょっと考えていたいタイプ。だから書く方が向いているんですね。 大学を卒業して、人のご縁で新聞社に入って。本当にいい先輩がたくさんいて、仕事を教えていただきました。先輩から教わったのは、「名文家は世の中に山のようにいる。だから80点の文章を30分で書けるようになれ」ということ。つまりは、80点の文章を短い時間でたくさん書けるようになれないと、文章で食べていくことはできないよっていうことなんです。この頃、勉強したことが大きかったですね。わかりやすく、無駄な言葉がなく、見たものを多くの人にわかるように伝えること。文学少女って、無駄な装飾語とか難しい漢字を無意識に使ってしまいがち。そこは、いまだに直されたりするんですけど(笑)。

ーフリーで仕事をするようになったのは?

結婚を機に上京したのをきっかけに、思い切ってやってみようかと。最初は仕事さえあればと思っていたので、私が書けるところを書かせてくださいって売り込みをしました。じゃあ、1回書いてみてってチャンスを与えていただいて、その記事がおもしろかったり、評判がよかったりっていうことで、ひとつずつつながっていった。私がこうしてやってこれたのも人に恵まれたんだろうと思います。真面目な編集者とたくさん出会えたから。

ー東京での生活はいかがでしたか?

やっぱり東京ってすごい。カルチャーだったり、アートだったりを大事にする人がいて、それを発表できる場がある。それをいいねっていう人の数も圧倒的に多いんです。大阪や地方になると、何となく偏りがちでマニアックになるんですよね。東京っていろいろたくさんある中で、これって大きな視点でとらえることができる。そこがすごくいいなと思うし、居心地がいいです。

ーインタビューの仕事をたくさんされていますが、コツってあるんですか?

人を好きになることですね。 その人が本当は何を考えていて、どんな人なんだろうとか、その人の奥が知りたくなるんです。だから、1対1でじっくり話をするのが好きです。インタビューだけど、デートな感じ(笑)。好きだからもっと知りたくなるし、その人の本当の心を知りたいと思うんです。その分、疲れることもあります。 さらに、その人のために自分が何をしたらいいかって想像するんです。この人にとって、私の人生の中で役立てることはないかなって。そこまで考えちゃう。ちょっとおかしい(笑)?

ーゲッターズ飯田さんの『ボーダーを着る女は95%モテない』も森さんプロデュースだと伺いました。

ゲッターズさんと初めて会った時も、この人を絶対に売り出したいって思ったんです。むしろ、こういう真面目でちゃんと勉強をしている人が世の中に出ないとダメなんじゃないかと。それでいろんな編集者にゲッターズさんの本を出しませんか?って売り込んで。人のサポートをすることも大好きなんですね。 今ちょうど、ゲッターズさんの次の相性本の構成をお手伝いしています。6月末には出せそうです。

ー最後に、今後やりたいことはありますか?

ちゃんとフィクションは書きたいですね。やっぱり小説をやりたい。50代はそっちをがんばれるようにしたい。 だいぶネタはたまってきてますよ。そのために一生懸命生きていますし。ただ仕事はニーズですから、それは忘れずに必要とされればなんでも書きたいですね。

森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで2000人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方に ついてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』(マガジンハウス)、ストーリー部分を担当した遠藤功の『新幹線お掃除の天使たち』(あさ出版)がヒット中。新聞、雑誌、ウエブ連載のほか、歌手の加藤登紀子の聞き手を務めるユーストリーム『TOKIKO'S BAR』も月一回放送中。 ブログ「森綾のおとなあやや日記

衣装協力:
ピープル・ツリー オーガニックコットン・ボーダー・プリントTシャツ(ブルー) http://www.peopletree.co.jp/shopping/ladies/168115.html

ピープル・ツリー
フェアトレード専門ブランド。環境問題の解決を目指して、洋服やアクセサリー、食品や雑貨などのフェアトレード製品を途上国の生産者パートナー(世界10カ国、約150団体)と一緒につくり、日本やヨーロッパで販売しています。売上の一部は、生産者の収入になるほか、学校施設や保健衛生事業など、生産者団体が取り組む地域のコミュニティ発展のためにも役立てられています。 http://www.peopletree.co.jp/

テキスト 寺田愛
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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