LGBT英国特集2:ワールドプライド2012インタビュー

様々なハプニングの中、大成功に終了したワールドプライド代表者に聞く

LGBT英国特集1は、こちら

2012年7月7日、ロンドンでゲイプライドと、5、6年に一度行われるワールドプライドが合同開催され、オリンピック直前のビッグイベントとして熱い注目を浴びた。ヒップなLGBTシーンがあり、毎年大規模なゲイプライドを誇るロンドンでの開催は、世界各国から多くの参加者を引き寄せた。セルフリッジズをはじめ、高級百貨店やファッション・ショップが建ち並ぶ世界的なショッピング・ストリートこと、オックスフォード・ストリートを中心にマーチは進み、100万人ほどの参加者や観覧者が集まり、大いに盛り上がった。さらにマーチ後、歴史あるトラファルガー広場で野外ライブが夜まで催され、遊び足らない観客はその後ゲイエリアとして知られる地区ソーホーに流れ、街全体がLGBTを祝うホットな週末となった。

その一方で、マーチ直前に金銭問題が生じ市長命令で開始時間が急遽変更され、一部のアフターパーティが禁止されるなど、様々なトラブルに見まわれ、舞台裏では少し混乱していたのも事実。そのため、一部のLGBTコミュニティやゲイバーのオーナーたちの間で不満の声が一時的に上がったが、最終的には懸念された問題は発生せず、大人気を博すLGBT祭典として無事幕を閉じた。

ワールドプライドの代表者たちに、開催地のセレクションの基準や開催直前に起きたハプニング、今後の展望などについてインタビューを行った。

高級百貨店やファッション・ショップが建ち並ぶ世界的な
ショッピング・ストリート、オックスフォード・ストリートを歩く
ロンドン・ゲイプライド(2012年は、ワールドプライドと合同開催)。


―日本ではまだあまり知られていないと思うのですが、ワールドプライドについて教えていただけますか?

ワールドプライド(以下、WP): ワールドプライドは、大勢の国が関与しているインタープライドというグループが運営している国際的なゲイプライドです。さらに、パレードなど以外にも、人権などについてワークショップやカンファレンスも催しています。

―スタッフは、みんなボランティアですか?

WP: 世界中のゲイプライドの多くと同様に、ワールドプライドも主にボランティア・ベースです。ただ、イベントの管理については、開催地のホスト団体は通常、管理のための別のグループを設置することが多いです。

マーチ後、トラファルガー広場で野外ライブが催され、
辺りは人でごった返し、大いに盛り上がった。


―ワールドプライドはこれまでローマやエルサレムで開催され、今年はロンドン、次回はトロントになります。毎回開催される都市のセレクションの基準は、どのようにしていますか?

WP: ワールドプライドを開催したい、インタープライドに所属しているホスト団体がまず立候補してプレゼンし、その後ワールドプライドのメンバーが投票する仕組みになっています。セレクションの基準は多様で、例えば開催希望の市の金融状況、それまでのイベントの開催の歴史や実績などです。

―ローマやエルサレムは、宗教上、LGBTに対して比較的シビアな都市としても知られています。同街での開催は、いかがでしたか?

WP: 確かに、最初に開催された2つのワールドプライドは、ある意味挑戦的でした。だからこそ、現地のLGBTIコミュニティが団結してみんなで助け合うことによって、ポジティブな影響が期待できます。影響は必ずしもそのとき見えるとは限らないのですが、ワールドプライドが開催されたことでLGBTIの可視性は増して、偏見を覆す最高の武器になります。そういった意味でも、長い目でみて、とても効果的なイベントだと感じています。

今年、ロンドンのゲイプライドに駆けつけた、
ワールドプライドの代表の二人、Hans De Meyer(左)とCaryl Dolinko。


―今年はロンドンでの開催でしたが、反響はいかがでしたか? 金銭問題が生じ、市長命令で開始時間が急遽変更され、ソーホーのゲイバーでのアフターパーティの開催が禁止されるなど、様々なトラブルに見まわれて、開催前、一部で批判が上がりました。最終的には盛り上がったようで懸念されていた問題は発生しませんでしたが。

WP: おっしゃる通り、開催直前に、今回主催していたホスト団体Pride Londonが金銭問題に直面し、今年はパレードではなく、マーチに急遽変更するといったハプニングはありましたが、イベントの規模は通常のロンドンのプライドに劣らない100万人ほどでしたし、ロンドンに駆けつけた多くの観光客にとくに影響はなく、イベントのスピリットは確実に保たれました。ワールドプライド2012の目標は達成できましたので、うれしく思っています。また、ワールドプライドは、あくまでもイベントのサポートを行っていて、現地での細かいマネージメントはホスト組織が担当しているので私たちは携わっていないのですね。ただ、ワールドプライドの主催者としては、おっしゃっている点に関して、少し懸念を感じていたのは事実です。今回、イベント開催前の混乱に関しては非情に残念に感じましたが、最終的には問題がとくに生じませんでしたし、私たちが伝えたいメッセージは、ロンドンと世界に届いたと確信しています。

―今後、東京やアジアの国での開催については、お考えですか?

WP: 今のところは、アジアの団体からの提案は無いのですが、提案されましたら、もちろん私たちは検討したいと思っています。是非提案して下さい。お待ちしております。

―今後の展望を教えてください。

WP: 現在、異性愛者同様の権利や特権を得ている国がたくさんありますが、得ていない国も世界中にまだまだ多く存在しています。そのような不平等なことが起きる限りは、ゲイプライドやワールドプライドの必要性がありますし、開催していきます。今後も、インタープライドのグループとして活動し続け、LGBTIにとって住みやすい世界をつくるのに貢献していくことを願っています。

インタープライドのウェブ:http://interpride.org/
ロンドン・プライドのウェブ:http://www.pridelondon.org/

取材協力:
英国政府観光庁

TokyoWrestling.com共同取材

テキスト カイザー雪
撮影 Shawn Tamaribuchi
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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