フォトギャラリー:フジテレビ抗議デモ

偏向報道に疑問を持つ数千人の参加者たち

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フォトギャラリー:フジテレビ抗議デモ

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先月末に俳優の高岡蒼甫がTwitterで「正直、お世話になった事も多々あるけどフジテレビは今マジで見ない。 韓国のTV局かと思う事も」とつぶやいた瞬間、彼はおそらくこのつぶやきが原因で所属事務所との間にトラブルが起きると十分予想していたはずだ。しかし、昨日のような大規模な抗議運動まで発展するとは、さすがに想像すら出来なかっただろう。

かつて映画『パッチギ!』で有名になった(今は宮﨑あおいの旦那としても有名)彼は、事務所から名前を外されてしまったが、その精神を他の誰かが引き継いでいった。

昨日、フジテレビの本社があるお台場の街を数千の人たちが行進したが、抗議活動家たちが主張している言葉によれば、フジテレビは韓国偏重の傾向があるという。

オーガナイザーによると、今回のデモには6000人が参加しているというが、この流れは前回の8月7日に組織された非公式のデモ行進から始まっているものであり、オンライン上で増え続けている反対意見をもつ者たちの怒りに対してのはけ口としての役目も担っていたようだ。

他のどのテレビ局とも違い、フジテレビは今の日本で“韓流”と呼ばれているものを積極的に勧めているという。特に毎週ウィークデイの午後には3時間もの時間帯を海外ドラマの為に割いている。フィリップ・ブレーザーが昨日のジャパンタイムズ紙上の メディアミックスのコラムで語っていた洞察の深い記事によると、ここまでのデモが起きるだけの十分な理由があるというのだ。他の人たちにはそう映っていないとしても、この裏には何かもっと不吉な兆候が隠されているようだ。つまり、日本のメディアの持つ独立性への脅威、ということである。

これまでに起きた無数の反対運動は未熟なまま終わっているが、今回のフジテレビへの抗議運動は、かなり幅広い層のグループをも引きつけているようだ。もちろんその中には、ナショナリスト(国粋主義者)たちがいるのは当然だ。僕らがちょうどデモの流れに乗せられてフジテレビ本社前に辿り着いたときには、青いスーツを身に纏った数名の男性が、ビルの外側の警備をかいくぐろうとしていたところだった。そのシーンは、今回のデモを象徴しているものだとも感じられた。その周辺には、社会運動家の三輪和雄や元自衛隊の航空幕僚長であった田母神俊雄(2008年に政府見解と反する内容の論文を発表した件で辞任している)の姿も見ることができた。

だが、今回の群衆は単なる極右の勢力が集まっているだけではなく、それ以外にもかなり幅広い人たちが集まっていたようなのだ。年齢もティーンエイジャーから60代までさまざま。日本の国旗“日の丸”が無数にはためく中で、外国利権による侵害やメディアへの不信感が書かれたプラカードが多く見られた。ひとつの重要な論点は、28.59%のフジテレビ株が海外の株主によって保持されているということらしい。また(奇妙にも)、TV番組『笑っていいとも!』で紹介された「日本国民の好きな鍋料理」のトップにキムチ鍋がランクされていることなどを理由に糾弾している人もいたようだ。

群衆のごく少数を占める人たちは、明らかにまともではなかった。67歳の女性が僕に英語で話しかけてきて、「最初に運動に関わったのは、北朝鮮の日本人拉致事件から」と説明する。さらに、彼女が言うには、中国と北朝鮮が日本のメディアをコントロールしていて、日本で起きている犯罪の90%は、明らかにこの2つの国からの(スパイ)が原因であり、しかもDPRKのスパイは彼女の家の隣りに住んでいるという。そして、3日に一度は家に侵入してくるとのことだ。

もちろん、もっと冷静な意見も沢山聞くことができた。このような問題はフジテレビだけに限ったことではなくテレビ一般に言えることであり、もうすぐ多くの人が、同じ番組を見させられ、魂を吸い取られるような“テレビ”という仕組みから抜け出すだろうという。それはおそらく、良いことだ。

その他、東アジアにおける日本の勢力が衰退している状況を嘆いている人もいた。その影には、周辺諸国の文化が振興しているということもあると言う。それはフジテレビだけの問題ではなく、こんな状況ではインターネットや自分の信じる自主制作の媒体しか信じることができないのだという。

「みなさん見てもわかるように、これは偏狭なナショナリズムではなく、愛国主義の現れです」と、中央大学大学院公共政策研究科の客員教授である稲村公望は語る。

なにが本当なのかは、正直分からない。震災の起こった3月11日以前に同じようなデモ行動が行われたとして、それがこれほどまでに注目を集めたかどうかは想像できない。東京で少し前に行われた反原発デモとは対照的に、今回のフジテレビへの抗議デモは、募りに募った不満感や無力感、そして不信感が形になって吹き出したもののように思われた。

もちろん、ただ単に韓国ドラマが嫌いなだけの人も、何人かはいたようだが。

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By ジェイムズ・ハッドフィールド
翻訳 西村大助
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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