東京近郊で開催される奇祭

かなまら祭り、面掛行列、龍勢祭り、泣き相撲など、一風変わった伝統の祭り

東京近郊で開催される奇祭

お札まき

数ある日本の祭りの中に、「奇祭」と呼ばれるものが存在するのをご存知だろうか。神奈川県川崎市で毎年開催される『かなまら祭り』は、性器を象ったいくつもの神輿が白昼堂々街を行き交い、その特異な様式から世界的に知られる奇祭のひとつである。その他にも、罵倒を浴びせ合うアグレッシブな祭りや、女装した男性がお札をバラ撒きながら練り歩くという一見すると"奇妙"以外の何ものでもないものまで、実にさまざまな祭事が毎年行われているのだ。ここでは、東京近郊で開催される18の見るべき祭りを紹介する。その異様な熱気に、悩みも吹き飛ぶに違いない。


神奈川県川崎市 金山神社『かなまら祭り』


次回の開催:2013年4月7日(日)

現在は商売繁盛、子孫繁栄、安産、縁結び、夫婦和合として知られる同祭りだが、元来、江戸時代に宿場の飯盛女達が性病除けや商売繁盛の願掛けを行った「地べた祭」に端を発する。当初は好事家の祭りか、外国人観光客の穴場観光スポットとして知られる程度であったが、昭和60年代頃からエイズ除けを祭りに結びつけたのが話題となる。かなまら講有志により大根を削り、神前に供える男形、女形を作る祭事等バラエティに富んでおり退屈を感じさせないユニークな祭りだ。若者にはとっつきやすい面もあるが、エイズ問題等掘り下げて考える切っ掛けになればいいだろう。

『かなまら祭り』の詳しい情報はこちら



東京都府中市 大國魂神社『くらやみ祭』


次回の開催:2013年4月30日(火)~5月6日(月)※メイン行事は5月5日に開催

主に5月3日~6日にかけて東京都府中市の大國魂神社(武蔵国の国府である当地の総社)で行われる例大祭である。東京都指定無形文化財。昔は「武蔵国府祭」とも呼ばれた。ゴールデンウィーク中に行われる事と相まって期間中約70万人の人出で賑わうこの祭は、かつて街の明かりを消した深夜の暗闇の中で行われていたため「くらやみ祭」と呼ばれるようになったが、多くの提灯が建てられたため「ちょうちん祭」、またし神輿が御旅所で出会うことから「出会い祭」などと呼ばれることもある。8基の神輿は大太鼓と提灯の灯りに導かれ、神社本殿から御旅所(旧甲州街道と府中街道の交差点)まで渡御される光景は圧巻だ。

『くらやみ祭』の詳しい情報はこちら



神奈川県戸塚区 八坂神社『お札まき』


次回の開催:2013年7月14日(日)

派手な化粧を施した中年男性たちが、おのおのに派手な衣装をまとい、お札をばら撒いている奇祭中の奇祭。元来、踊り手が撒いたお札を手にすると、コロリ(コレラ)に罹らないという、厄除けの御利益があったそうだ。現在では戸塚区に残るのみだが、この踊りは江戸時代中期には江戸や大阪で盛んに行われていた。全国ネットのテレビ局の取材が来たり、アマチュアカメラマンの撮影で賑わうこの祭は、戸塚駅から神社までの道路に並んだ出店に彩られ、夜まで歓声が絶えない。

『お札まき』の詳しい情報はこちら



龍ヶ崎 八坂神社『撞舞』


次回の開催:2013年7月26日(金)~7月28日(日)

八坂神社で行われる祇園祭のハイライトである撞舞(つくまい)。最終日の夕刻に行われる『撞舞神事』では、撞柱と呼ばれる14メートルの柱に“雨がえる”と呼ばれる、全身が深緑色の扮装をしてカエルのお面をかぶった舞男が登り、柱の上で綱渡りや逆立ちといった曲芸を披露。500年以上の歴史をもつ。雨乞い、五穀豊穣、疫病退散、無病息災を祈願するもので、関東の奇祭の一つと言われている。

『撞舞』の詳しい情報はこちら



茨城県つくば市 筑波山神社『がま祭り』


次回の開催:2013年8月4日(日)

全国から「がまの油売り」が集結し技を競う祭り。当然、がまの油売りは現存しないので、あくまで口上や、刀で自分の腕を切ってがまの油で止血する等のパフォーマンスが展開される。商売繁盛を祈願する催しとして有名なこの祭りは、「がま」にちなんだイベントも豊富で、子どもも一緒に楽しめるものが多い。夏の思い出に一役買うこと間違いない。

『がま祭り』の詳しい情報はこちら



山梨県富士吉田市 北口本宮冨士浅間神社『吉田の火祭』


次回の開催:2013年8月26日(月)、27日(日)

日本三奇祭のひとつ。富士山の『お山じまい』の祭りでもある。26日の夜(鎮火祭)には高さ3メートルの大松明80本余や氏子各戸前に準備された松明に点火され、明け方まで燃え続ける。祭が終わると、富士北麓地域は短い夏が終わり秋を迎える。

『吉田の火祭』の詳しい情報はこちら



神奈川県鎌倉市 御霊神社『面掛行列』


次回の開催:2013年9月18日(水)

鎌倉権五郎景政の命日にあたる9月18日に開催される、御霊神社例祭で行われる祭事。腹に詰め物をして妊婦に扮した“おかめ”や火吹き男、鼻長、鬼などさまざまな面を被った男たちが街を練り歩く。別名“はらみっと祭”とも呼ばれ、源頼朝が村娘を孕ませたことがこの祭り発足のきっかけという説もある。

『面掛行列』の詳しい情報はこちら



栃木県鹿沼市 生子神社『泣き相撲』


次回の開催:2013年9月22日(日)

日本各地にある子どもの健やかな成長を祈願する、各地で行われている「泣き相撲」だが、この秋祭りもそのひとつ。泣き相撲とは、安産子育の守護神を祀る生子神社境内の土俵で、まわし姿の力士に扮した役員氏子が、それぞれ1、2歳の幼児を抱きかかけ、掛け声と共に頭上高く振り上げて取り組ませ、先に泣いた方を勝ちとする。今では双方に勝ち名乗りを上げているのは時代の変化によるものだろうが、時代は変わっても古き良き習慣の根底にあるものは変わらない。両親の見守る中、高らかに響き渡る泣き声は明るい未来への展望を感じさせる。

『泣き相撲』の詳しい情報はこちら



埼玉県秩父市 吉田椋神社『龍勢祭り』


次回の開催:2013年10月13日(日)

埼玉県秩父市下吉田にある椋神社の例大祭では、“龍勢”と呼ばれる火薬を仕掛けた手作りのロケットを打ち上げる『龍勢祭り』が毎年開催される。櫓からは十数分おきに30数本の龍勢が打ち上がり、27の流派それぞれに技巧をこらした個性的な龍勢が楽しめ、この日ばかりはのどかな街に、大勢の観覧客が押し寄せ賑わいを見せる。

『龍勢祭り』の詳しい情報はこちら



東京都中央区 小網神社『どぶろく祭り』


次回の開催:2013年11月28日(木)

日本橋の小網神社のお祭り。新穀豊作に感謝する新嘗祭に由来する。新米で醸したどぶろくを神前に供えた後、参拝者にふるまう。当日奉納される里神楽舞は、国重要無形民俗文化財に指定されている。強運厄除守のみみずくや茅の輪守が授与される

『どぶろく祭り』の詳しい情報はこちら



千葉県山武郡 大宮神社『あらい祭』


次回の開催:2013年12月14日(土)

無病息災、火盗難除、五穀豊穣の祈願を目的として行われる、160年以上続く由緒ある祭り。あらい祭りの「あらい」とは、大根を宮司等に投げつける「荒い」動作に由縁するのではないかと言われているが、その真意は定かにはされていない。祭り当日の祭事は「鍋かけず」と言い、各家の釜戸には火を炊かず、当番の家に集まり「神の食」を食べて祝う。神社においては、1ヶ月前から男の子達が茅を集め、竹でやぐらを組んで小屋を作る。合戦を見立てたこの祭事は、神社を城とし、大根を投げて宮司等と戦う。使われる大根も、子ども達が近所の畑から掘り出しており、元気な子供達が賑やかな一日を演出する。

『あらい祭』の詳しい情報はこちら



茨城県笠間市 愛宕山『悪態まつり』


次回の開催:2013年12月15日(日)

愛宕山の山頂にある飯綱神社の祭りで、旧暦11月14日に行われている。13人が白装束で天狗の格好をし、13天狗のほこらにお供え物をして回る。この時に悪態(悪口)を言い合い、天狗に邪魔されながらお供え物を奪い合うという変わった祭りだ。このお供え物を奪い取った人は、幸せになれると言われている。もともとは7日間の斎戒を夜間に行った後に徒歩で巡回するものだったが今は行われておらず、現在は昼間行われている。このような祭りは日本中でも珍しく、日本三大奇祭の一つと言われている。

『悪態まつり』の詳しい情報はこちら



茨城県桜川市 加波山三枝祇神社『火渉祭』


次回の開催:2013年12月22日(日)

己の悪行を清める火渡りの行。もはや映画の中でしか存在しないだろうと思っていた祭事だが、実は、関東地区でも数カ所にいまだ存在している。火渡りは山伏の秘法で、燃え盛る火の中を歩くことによって悪行を清めるという。一般人にそこまでして清めないとならない悪行があるとは思いたくないが、何故か1度はやらないといけないような気になるのは悲しい人間の性だろうか。参加自体は無料なので、心機一転したい方は怖がらず思い切って火の中を歩いてみるのも良いだろう。毎年冬至の日に開催。

『火渉祭』の詳しい情報はこちら



群馬県玉村町 上福島地区『すみつけ祭』


次回の開催:2014年2月11日(火)

お互いの顔にすみを付け合い、病魔退散を願う江戸時代から伝わる歴史ある祭り。埼玉県騎西町にある玉敷神社の御神体と天狗の面を借り受け、天狗の面を付けた先達を先頭に家々を回り、人々の顔に輪切りの大根に付けた墨を塗りつける。墨を付けてもらうと、その年は風邪や悪病にかからないとされる。子ども達もこの日ばかりは、服を汚しても母親に叱られないのか堂々とした笑顔が微笑ましい。

『すみつけ祭』の詳しい情報はこちら



東京都江戸川区 真蔵院『雷の大般若』


次回の開催:2014年2月24日(月)

長襦袢を身につけ、おしろいと真っ赤な口紅で化粧をし女装した男達が、真蔵院を中心に周辺の家々を厄除けの黄色い布や御札を手渡しして回る、江戸川区東葛西の奇祭。江戸時代末期にコレラが蔓延した際、当時の和尚が「大般若経」を背負って家々を回ったところ、被害をまぬがれたことが由来といわれる。また、ある結核にかかった妹のために、兄が妹の長襦袢をきて厄払いをしたことが、女装の始まりの有力説となっている。

『雷の大般若』の詳しい情報はこちら


その他、一度は見るべきユニークな祭り


東京都台東区 玉姫稲荷神社『靴のめぐみ祭り市』

次回の開催:2013年4月27日(土)、28日(日)

4月と11月に開催される、氏子の靴メーカーらが靴のめぐみを感謝する祭り。境内では靴の即売会が行われる。神社の隣では履き古した靴供養の祭壇も設けられ、集まった古靴が山となっている。巨大な革靴の神輿、シンデレラ靴の神輿など見どころ多数。巫女ガールズと呼ばれる3人組アイドルグループが玉姫神社にちなみ『玉姫ものがたり』などのオリジナルソングを披露するコーナーも。(巫女ガールズの出場に関しては、毎回直前に問い合わせることをおすすめする)

『靴のめぐみ祭り市』の詳しい情報はこちら


東京都大田区 嚴正寺『水止舞』

次回の開催:2013年7月14日(日)

約680年の歴史を持ち、昭和38年に東京都無形民俗文化財に指定されてる同祭り。起源は元享元年(1321年)に、武蔵の国(現在の関東辺り)が大干ばつに見舞われた際、住職が藁で龍像を作って祈祷を捧げ雨を降らせたところまで遡る。しかしその後、今度は長雨に悩まされることになり「水止(しし)」と名付けた獅子の仮面を作り舞を踊り難を逃れたことから、人々は感謝の舞として「水止舞」を捧げるようになった。雨乞いの行事は多いが、逆は珍しい。祭事も独特で、雨を降らせる龍神に扮した若い男性が藁でできた俵で巻かれ、路上に転がされ水を掛けられながらホラ貝を吹く。これが奇祭と呼ばれる由縁だ。その異様な光景を1度自分の目で確認することをオススメしたい。

『水止舞』の詳しい情報はこちら


栃木県足利市 最勝寺『大岩毘沙門天悪口祭り』

次回の開催:2013年12月31日(火)~2014年1月1日(水)

京都の鞍馬山、奈良の信貴山と並び日本三毘沙門天の1つ、大岩毘沙門天では大晦日から元旦にかけて開催される。この祭りは、1年間積もった鬱憤を発散し、すがすがしい気分で新年を迎えようと言う江戸時代から伝わるもので、日本の奇祭としても有名だ。大晦日の晩から元旦の未明にかけて修験者に先導され山頂を目指すのだが、夜空を仰ぎ「バカヤロウ」と叫ぶのは気持ちが良い。ただし、悪口に「ぼう」のつく言葉(びんぼう、どろぼう等)は禁句なので注意するように。年に1度腹から声を出し山頂で夜明けの甘酒でも一緒に飲もうではないか。

『大岩毘沙門天悪口祭り』の詳しい情報はこちら


テキスト 高橋ユキ
テキスト カゲウラジュンイチ
テキスト タイムアウト東京編集部
※掲載されている情報は公開当時のものです。

この記事へのつぶやき

コメント

Copyright © 2014 Time Out Tokyo