2009年09月29日 (火) 掲載
史跡名所で土地を比較するなら、京都は世界で最も偉大な土地のひとつだ。京都府には17箇所のUNESCO世界遺産があり、その内14箇所は京都市内にある。寺院の数は1,600を超え、神社は400以上。絵はがきに使用されるような庭園も数え切れないほど存在する。人口は日本の1.2%に満たないが、実に20%の国宝を抱える土地でもある。
問題はどの史跡名所を訪問すべきかを決めることだ。1994年UNESCOが発表した推奨史跡名所14箇所に沿って選ぶことをお勧めする。京都観光には外せない清水寺、金閣寺、銀閣寺、そして、苔寺などが選ばれている。
しかし、文化遺産保護リストだからといって観光地に適しているわけではない。UNESCOが推奨する宇治上神社や下鴨神社よりも、植物が青々とした桂離宮、1001体の仏像が並ぶ三十三間堂、そして、朱色の鳥居が連なる伏見稲荷大社の方が記憶に残るだろう。他の街では観光名所になるような寺院でも、京都では予備候補にすら掲載されない。15世紀には最も影響を持つ寺院のひとつだった建仁寺は、美しい枯山水の庭園や、華麗な芸術作品、禅を日本に伝えた僧侶の墓所などが有名であるが、観光客はこぞって近隣の山のふもとにある別の歴史的建造物の寺院へ行くため、見落とされがちである。青蓮院も、かつては一時的ではあるものの皇宮として存在し、小堀遠州、祖阿弥、小川治兵衛といった最も著名な3人の造園家に由来する庭園を保有しているにも関わらず、有名な寺院が近接するために似たような境遇にさらされている。この庭園は素晴らしい音響効果で知られ、琴や尺八のコンサートが催されることもある。(演奏日の問い合わせは観光事務所まで)
寺院巡りによる疲労には気をつけよう。たしかに京都は随所に建築物の最高傑作があふれているが、熱心な寺院訪問者でさえも、あまりの寺院数に疲れを感じることがあるだろう。幸運な事に京都は、タイムカプセルのような古い建造物だけではなく、近代的な魅力も随所にある。
平安神宮の少し南にある岡崎地区の現代美術は一見に値する。「ギャラリー はねうさぎ」と「ギャラリー マロニエ」にて無料で配布されている京都美術館地図には、多くの地元のギャラリーが掲載されている。見事な京都国立近代美術館もぜひ訪れたいスポットだ。
現代建築のファンならば、三条通りを歩いて、辰野金吾、片岡安、吉井茂則らの20世紀初頭の建築作品や、京都駅やSferaビルの近代的建築物を見学しよう。
京都の最も新しいアトラクションは、近代日本文化の象徴「マンガ」に献身し、先進的な考えを持った「京都国際マンガミュージアム」だ。コミック本の歴史を、紙芝居実演、浮世絵、そして、1,000年間を記した巻物にまで遡り展示している。また、地元のマンガ家と海外のグラフィックアーティストのシンポジウムや、DJを招待して刺激的な音楽とマンガをコラボさせたり、学術研究としてマンガを使用するなど、マンガの未来を見据えたイベントを主催する博物館だ。
京都に対する最高の接し方は、「絶対に訪問すべきチェックリスト」を作らずに、史跡名所が溢れる文化の中心地として接することである。
景観全体が借景として庭園に溶け込む場所は、日本国内でも京都だけだ。
京都の歴史は、寺院、神社、皇宮、邸宅などの庭園からたどる事ができる。平穏な平安時代(794-1185)には、皇室が力を持ち、匹敵する勢力の権威も皆無だったため、公家たちは芸術的探求を行うことで余暇を過ごしていた。その結果として、京都の初期の庭園は、情景描写的であり、象徴化されたものが多い。宇治の近くにある平等院は、この時代の意欲的な景観を代表する建物である。1895年に建立された平安神宮は、この時代のデザインを取り入れて造られた。
12世紀になると禅が中国から伝わり、同時に侍が世に台頭する。僧侶と武士の厳格な美学的思想は、枯山水に反映された。枯山水は、眺めてため息をもらすためではなく、瞑想中の僧侶を助けるため考案された。熊手で均された砂利と、その線をわざと壊すかのように置かれた岩、そして少しの緑樹によって構成されている。
世界の庭園の中でも、竜安寺のように研究され分析された庭園はないだろう。皮肉なことだが、この庭に最もふさわしくないのは分析だ。庭園の配置の学術的な思惑などは気にせず、ただこの庭園を楽しめば良い。ミニマルで洗練されたこの庭園は、500年にも渡り、訪れる人々を魅惑し続けている。
小堀遠州(1579-1647)によって手掛けられたといわれる庭園は驚くほど多い。もし本当にすべての庭園を手掛けていたのなら、超多忙な人物だったのだろう。二条城、仙洞御所、そして、金地院の庭園(南禅寺の準寺院)は、それらの庭園の中でも小堀由来の確かな証拠がある庭園だ。
17世紀、内省的な江戸幕府政権下、公家たちは再び芸術的な情熱に没頭していく。この時代は、京都に[桂離宮](/ja/kyoto/venue/12540、修学院離宮、そして、仙洞御所という3つの最高傑作をもたらした。これらの庭園は、研究するのではなく、散策を楽しむための庭だ。
1868年になると将軍は退けられ、開港により海外の貿易と影響が日本に流れ込む。これらの思想の一部は無鄰菴の庭園に見ることができる。平安神宮の造園家小川治兵衛が、イギリスの芝生と日本の散策庭園の要素を融合させて造った庭園だ。
最後に「rest complex 京園」を紹介する。「rest complex 京園」は、古来からの禅庭園を21世紀に継承する庭園だ。この庭園は比較的歴史も浅く、感動を呼び起こすような名所ではないが、庭園と食事が楽しめる、京都ならではの施設だ。
京都観光において事前準備は不可欠だ。ホテルやレストランだけでなく、宮殿、庭園、寺院にも、予約が必要な場所がある。
いくつかの史跡名所の予約手続きは、インターネットの申込用紙に記入するだけの簡単なところもあるが、訪問依頼の手紙を送付し、返信を待たなければならないところもある。西芳寺の苔庭園を見るためには、訪問日を記入した手紙に、切手を貼った返信用ハガキを同封して郵送しなければならない。約2週間後、訪問する日時を特定した返信が来る。郵送先はこちら:〒615-8286 京都府京都市西京区松尾神ケ谷町56 西芳寺宛
宮内庁管轄地(京都御所、仙洞御所、桂離宮、修学院離宮)への訪問も事前予約が必要。一番手っ取り早い申し込み方法は、インターネットだ。詳細は宮内庁のページを参照(sankan.kunaicho.go.jp)。入場許可証を受け取るには日本の住所が必要になる。また、京都御苑の西側にある宮内庁の事務所を訪れ、入場許可証を直接受け取ることもできる。事務所は平日午前8時45分から午後12時、午後1時から午後4時まで開いているが、祝日や年末年始(12月29日から1月3日まで)は閉まっている。
ピークの季節には、少なくとも1週間前には申し込むことをお勧めする。それ以外の期間は2日前に申し込めば十分だろう。パスポートを持参すれば、ガイドツアーの席を確保してくれる。すべての皇室所有地への入場は無料で、京都御所のツアーは英語でも行っているが、参拝者は18歳以上のみ。
こうした手続きが面倒で、これらの史跡名所への訪問を省略してしまおうという誘惑に陥るかもしれないが、5つすべてが事前予約に値する価値がある場所だ。
Kyoto Shortlist (2009) から翻訳、編集
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