DESIGNTIDE TOKYO 2009

デザインのトレードショウで体験する、五感を使う街巡り

DESIGNTIDE TOKYO 2009

東京という街全体が、デザインを発表する場になっていることをご存じだろうか。毎年秋になると、都内の至る所で大小さまざまなデザインイベントが開催され、東京人を刺激するのだ。10月30日(金)からスタートした『DESIGNTIDE TOKYO 2009』も、そうしたイベントの中のひとつで、今回で5回目となる。インテリアやプロダクトの商材を中心に、デザインに焦点を当てた分野の作品が集まり、東京から世界に向けて紹介されている。メイン会場となるのは、東京・六本木にある複合施設『TOKYO MIDTOWN HALL(B1F)』。会場デザインを手掛けたのは、2008年に引き続き、建築家の谷尻誠だ。トレードショウの会場というと無機質になりがちだが、谷尻は今回“綿”で会場を埋め尽くし、来場者が雲の中に迷い込んだ錯覚に陥るようなデザインに仕上げている。メイン会場はふたつのコンテンツに分かれており、HALL AはDESIGNTIDE TOKYOの中心『TIDE Exhibition(タイドエキシビション)』だ。椅子、ソファ、照明、時計など、デザイナーの新しい作品とアイディアが発表される場所で、国内外のデザイナー、メーカー、バイヤー、ジャーナリストが情報を交換しあいトレードしている。HALL Bは実際のプロダクトを手に取り、デザイナー本人から購入することができる『TIDE Market(タイドマーケット)』。iPhoneのカバーやボールペンなど生活雑貨が多く、デザイナーのこだわりを直接聞くことができるので、商品への興味が沸きやすい。1,000円以下の商品もあるので、一般の入場者でも購入しやすくなっている。

一通りメイン会場の概要を紹介したが、DESIGNTIDE TOKYOには、もうひとつコンテンツがある。それは『TIDE Extension(タイドエクステンション)』だ。街に広がる多くのショップやギャラリーが、DESIGNTIDE TOKYO 2009の旗を掲げ、商品や作品を展示している。開催エリアは六本木、青山、渋谷、原宿、新宿、丸の内、目黒で、ショップやギャラリーは36に上る。どの空間も、本来その空間が持つコンセプトを生かしつつ新たな提案を見せ、私たちを楽しませてくれる。ここではそうした36の空間から、特に五感を刺激する5つのスポットをピックアップし、オリジナルの街巡りを紹介する。

DESIGNTIDE TOKYO 2009
会期:2009年10月30日(金)から11月3日(火)まで
会場:メイン会場/東京ミッドタウン・ホールA、B
エクステンション会場/東京都内各所
時間:10月31日(土)から11月2日(月)まで
11時00分から21時00まで(最終入場20時30分)
11月3日(火)/11時00分から17時00分まで(最終入場16時00)
入場:1000円
ウェブ:www.designtide.jp/09/jp/
東京ミッドタウン ホール
住所:東京都港区赤坂9-7-2
ウェブ:www.tokyo-midtown.com/jp/
見る
『THE OUTLINE 見えていない輪郭』展
プロダクトデザイナー・深澤直人と写真家・藤井保による企画展。深澤直人のプロダクトデザイン約100点と藤井保が約4年間撮り続けた写真によって「見えていない輪郭」があることを見せてくれる。例えば深澤がデザインした携帯電話『au“INFOBAR2”』を写した藤井の写真。正面ではなく側面を写したそれは、携帯電話ではなく万年筆のようなアウトラインを描いている。ひとつの携帯電話も見る角度を変えると、こんなに美しい輪郭を持っていたのかと気づかされるのだ。見えていなかったものが見える瞬間は、まさに快感である。
会期:2009年10月16日(金)から2010年1月31日(日)まで
時間:11時00分から20時00分まで(入場は19時30分まで)
休館:火曜日(11月3日は開館)、12月28日から1月2日まで
入場:1000円
会場:東京ミッドタウン・ガーデン内 『21_21 DESIGN SIGHT』
住所:東京都港区赤坂9-7-6
電話:03-3475-2121
ウェブ:www.2121designsight.jp/outline/
触る
『Detour Tokyo』(デトゥア東京)
ピカソやヘミングウェイが愛用したことで知られ、200年以上の歴史を持つ伝説的ノートブック「モレスキン」と、ミラノを拠点に世界の貧困地域で教育普及活動を行う非営利団体「lettera27」による、文化と創造の発展を目的とした世界巡回展。世界的に活躍するアーティスト、建築家、映画監督、デザイナーなどがモレスキンを自由に使い創作、表現したノートを展示している。日本から参加しているのは美術家・横尾忠則、建築家・隈研吾、映画監督・河瀬直美など錚々たるメンバー。隈研吾のノートには建物を写した写真の切り抜きなどが貼られ、まるで飛び出す絵本のようだ。河瀬直美のノートには、“我慢”の意味や“紡木たく ホットロード”などの文字が走り書きされており、次回作の構想では…とこちらの想像力をたくましくさせる。また著名人たちの直筆が見られるのも得した気分だ。 さて、なぜこの巡回展を「触る」というキーワードで紹介したのかというと、実は、こうした展示作品は、会場にある白い手袋をすれば触ることができるからなのだ。穴の空いたケースに片手を入れてノートをペラペラめくると、著名人それぞれの頭の中を覗いているような感覚になる。ただ見るだけでなく、触ることで得られる新たな感覚。試さずにはいられない。
会期:2009年10月16日(金)から11月4日(水)まで
時間:11時00分から20時00分まで
会場:MoMA Design Store
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYREビル3F
ウェブ:www.moleskine.co.jp/Events/Detour-Tokyo
味わう
『PASTIFICIO LU』
イタリア人女性デザイナーによって結成されたユニット「Arabeschi di Latte(アラベスキ・ディ・ラッテ)が展開しているインスタレーション。手作りパスタをつくるワークショップ機能を持っており、食の魅力に焦点をあて、幸せな空間を作りあげる。会場を訪ねると「パスタを作りませんか?」と声をかけられ、まず8種類のパスタ生地の中から作りたいものを選ぶことになる。指示に従いながら小麦粉や卵を混ぜてこね、綿棒で伸ばしてパスタシートを作る。次にラビオリやファルファッレなど20種類近くあるパスタの形の中から作りたい形を選び、道具を駆使してパスタを作りあげる。ここまで約15分。まるで料理教室のようだが、ここからが違う。できあがったパスタをひとつ、小さなビニール袋に入れ、ペーパーシートに貼り、このシートにパスタ生地や形の名前、さらに自分の名前とメールアドレスを書き込む。するとデザイナーの女性がシート自体をギャラリーの壁に貼り付け空間を作っていくのだ。来場者の協力があってはじめて成立するインスタレーションだが、不思議とやらされた感じにならないのは、パスタ作りが単純に楽しいからだ。しかも最後に自分で作ったパスタを茹でて味わうことができるのだ。時間がない人は自宅に持ち帰ることもできる。完成した空間は写真をとって参加者のメールアドレスに送ってくれるそうだが、写真を見なくても、この空間で過ごす時間とパスタの味は、間違いなく幸せをもたらしてくれる。
会期:2009年10月30日(金)から11月3日(火)
時間:12時00分から19時30分 
会期中無休、入場無料
会場:ギャラリー ROCKET
住所:東京都渋谷区神宮前6-9-6
電話:03-3499-1003
ウェブ:www.rocket-jp.com/
聴く
『ISETAN LIVING “鳩時計”コレクション』
伊勢丹と森林保全の活動をすすめる「モア・トゥリーズ」が共同開発したプロダクト「鳩時計」に、さまざまなジャンルで活躍するクリエーター50名がそれぞれアートを施し展示している。10型は限定数分、40型は世界でたったひとつの1点物だが、どちらも販売している。「モア・トゥリーズ」とは音楽家の坂本龍一さんが代表を務める森林保全団体だ。日本の国土の1/4を占める人工林を手入れし、CO2を精算する「カーボンオフセットサービス」を展開するほか、「森の恵」である間伐材を積極的に使い、日本を代表するデザイナーらとオリジナルプロダクトを開発している。今回もその活動の一環で、オリジナルの鳩時計を手掛けたのはプロダクトデザイナーの深澤直人。ベースとなるオリジナルモデルに思いを込めたクリエーターには、ミナペルホネンの皆川明やQ-potのワカマツ タダアキなど、伊勢丹が日頃から洋服やアクセサリーを扱っているデザイナーなども名を連ねている。中でも大胆なデザインを提案しているのはartlessの川上俊だ。ベースとなる鳩時計を白いケースですっぽりと覆い隠している。ただし、正面だけ「TIME & LESS」のアルファベット文字がくり抜かれ、少しだけ中の鳩をのぞき見ることができる。このように時間にふたをしたことで、“永久”という見えない時間を表現したのだが、中に入っているのは「鳩時計」だ。時間になるとしっかりと鳴いて時を知らせてくれる。見えなくても聞こえてくる時の音。日本が世界に誇る音楽家・坂本龍一が関係しているだけあって、その鳩の鳴き声は心を穏やかにしてくれる。
会期:2009年10月28日(水)から11月10日(火)まで
会場:伊勢丹新宿店本館5階 インテリア特設会場、本館1階ウィンドウ
ウェブ:www.isetan.co.jp/icm2/jsp/store/shinjuku/event/0910designtide/
新宿伊勢丹
住所:東京都新宿区新宿3-14-1
電話:03-3352-1111
ウェブ:https://www.isetan.co.jp/icm2/jsp/store/shinjuku/index.jsp
香る
『The World of Jo Malone』
『Jo Malone(ジョー マローン)』は香りをテーマに豊かなライフスタイルを提案するロンドン発の香りのブランド。そのジョー マローンが今回提案しているのはイギリスの文化であるアフタヌーンティの空間を演出する香りだ。ジョー マローンでは香りをミックスしてオリジナルの香りを作り出すという哲学があり、今回も香りの違う3種類のアロマキャンドルに同時に火をつけ新たな香りを生み出している。アフタヌーンティを演出する香りだからといって、紅茶の香りがするわけではない。感情や食欲などを司る脳に直接働きかけるという香り。あなたがこの香りで何を想像し、どんな記憶を呼び起こすのか、是非、試して欲しい。
会期:2009年11月3日(火)まで
時間:11時00分から21時00分まで(月から土まで)
11時00分から20時00分まで(日、祝日)
会場:Jo Malone丸の内
住所:東京都千代田区丸の内2-6-1丸の内ブリックススクエア 1F
電話:03-5218-8000
ウェブ:www.jomalone.co.jp/
テキスト 基太村京子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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