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3日坊主では終わりません。今日も、タイムアウト東京のエディトリアル・ディレクター、ジョン・ウィルクスと、音楽エディターのジェイムズ・ハッドフィールドによる『世界に伝えたい日本の名曲100』レビューをアップデート。第4回。
ジョン:こんにちは。今日は、火曜じゃなくて、水曜日だね。今日も、『世界に伝えたい日本の名曲100』について語る準備はできてるよ!
森山良子の選んだ5曲を聴いてみようと思うけど、ジェイムズ、森山良子について知っていることって、ある?
ジェイムズ:少しだけ。ほんの少しだけ知ってるよ。
ジョン:僕が知っていることより、多いと思うよ。教えて。
ジェイムズ:まず、彼女は女性だよね。それから、森山っていう名のついたほかのシンガー、あぁ、森山直太郎のお母さんだったと思う。あとは、フォークシンガーだよね。
ジョン:日本でフォークシンガーっていう時は、ボブ・ディランみたいなシンガーのことをいうのかな?
ジェイムズ:たぶんそうだと思うよ。同じような役割を果たしているかどうかはわからないけど。政治的なことを歌うシンガーもいれば、そうじゃない人もいるしね。
ジョン:彼女の場合はたぶん、政治的でない感じはするよね。じゃぁ、1曲目。
ジェイムズ:『五木の子守唄』、民謡だね。
白黒映画の雰囲気たっぷりだ。
ジョン:そうだね、白黒映画だ。戦前の音楽。レコーディングがとても荒いけど、こういう“ぱちぱち”するレコーディング好きなんだよね。
ジェイムズ:僕も好き。この曲、日本の人は皆、歌えるのかな。
ジョン:でも、この曲を日本のポップシンガーはあんまり歌えなさそうだよね。
だけど僕、フォークソングは好きだな。
まぁ、好きだとしか言えないっていうか、そう言った方がインテリジェントに聞こえるってこともあると思ってね(笑)。
ジェイムズ:メロディーもハーモニーも、違う文化から生まれているから、全然僕らの馴染みのものと違うよね。なんて言えばいいかな……
ジョン:僕は好きだよ。
ジェイムズ:“ぱちぱち”してる古いレコ―ディングだから?
ジョン:それもあるし、現代の日本では、古いものをあまり見ないじゃない。だから、こういう古いものに触れられるのが嬉しいんだ。悲しいことに、こういう音楽って、消えてしまって、倖田來未みたいな音楽にとって代わられてしまう。
ジェイムズ:たった50秒くらい聴いただけで、そんな感動を得られるのはすごいね(笑)。これは、親指あげちゃうね!
ジョン:そうだよ、日本の人はもっとこういう音楽を聴いてほしいな。
ジェイムズ:次も、古くからある日本の曲で、『あかとんぼ』。
ジョン:ベンジャミン・ブリテンみたいだ。
この曲って、大晦日に聴く曲みたいだね。なんか、メロディーが日本のオリジナルな感じがしないんだけど、西洋の曲のメロディーを使ってるんじゃないかな。
5歳の時に、強制的に歌わされた聖歌を思い出すよ(笑)。
だけど、この曲も好きだな。何か、考えさせるような曲を聴くのはおもしろいよね。
歴史的な背景がある曲の方が、“倖田來未的”な曲よりずっといい。
倖田來未がこういう昔の曲を歌ったらいいんじゃない?
ジェイムズ:それは、おもしろいかもしれないね。
ジョン:いや、今の忘れて。やっぱり、うまくいかない気がする。
いいアイディアだと思った人がいるかもしれないけど、そうじゃなかったよ。
ジェイムズ:(笑)、次の曲は、童謡。『夏の思い出』。
ジョン:なんか、夏のことを歌っているんだね。
ジェイムズ:さっきの曲より、聖歌っぽいね。
ジョン:これは、日本のメロディーじゃないよ。聖歌に、日本語の歌詞がのっているように聴こえるよ。
ジェイムズ:いろんな曲がベースになっている感じだね。
ジョン:でも、古いフォークソングって、そういうものだよ。ボブ・ディランの『風に吹かれて』だって、レッドベリーの曲をベースにしてるでしょ。
ジェイムズ:そうなの?
ジョン:ディランは、そういうことをよくやってたんだよ。それが、フォークの伝統だから。だけど、いつもおもしろいと思うのは、日本の人が、そういうことを知らないってことだよね。
ジェイムズ:あぁ、『オールド・ラングザイン』とかそうだよね。
ジョン:あの、デパートが閉まる時にかかる曲、『蛍の光』。日本の曲だと思っている人が多いけど、あれは、スコットランドの民謡で、大晦日に歌う曲なんだ。
ジェイムズ:“ブレイブハート”が骨抜きにされなかったから、デパートで使うことも許されているけどさ(笑)、とにかく、このことが指摘できて良かったよ。
ジョン:日本では、いつも正月ってことだよね(笑)。この間、新宿御苑でも聴こえてきたよ。
ジェイムズ:隣にいる人と手をつなぎたくなった?
ジョン:この曲を歌う時、僕らは手をつないで歌うんだけど……ジェイムズと手をつないだのは、今日が初めてだね(笑)。
ジェイムズ:理解できない習慣だけどね。
僕は、女性のアマチュアコーラスが歌っているのはあんまり好きじゃないし、先に聴いた2曲よりは、興味がないな。
次は、『初恋』。これも、古くから日本で歌われている曲だね。
ジョン:ファースト・ラブ!
ジェイムズ:ファースト・ラブは宇多田ヒカルも歌っていたね。
ジョン:今、聴いているのは、オペラ歌手がカバーしてる。マイク・マイヤーズに似た人だってことしか、言えないな。ミス・モリヤマには申し訳ないけど、今回は画像がちょっと悪くて、あんまり評価できないかも。これが、『初恋』の評価になってしまうのは嫌だけどね。
ジェイムズ:歌っている彼が、“初恋”をしていると思えないしね。ちょっと居心地悪そうだよね。
ジョン:まぁ、初恋っていうのは、いつだって居心地の悪いものだけど(笑)
ジェイムズ:僕の場合は、ものすごい失望させるものだったよ。まぁ、2度目も3度目もそうだったけど(笑)。ジョンは乗り越えているよね。
ジョン:(笑)じゃぁ、最後の曲。
ジェイムズ:『さとうきび畑』。彼女自身の曲みたいだよ!自分の曲を選んで良いの!?
ジョン:リョウコ・モリヤマは、すごく影響力があるのかもしれないよ?
ジェイムズ:でも、選曲した理由も書いてないね。
だけど、これを聴くことで、森山さんのことがもっと知れるね。
ジョン:あぁ!この曲!!
ジェイムズ:知ってるの?
ジョン:The BOOMがカバーしてたよ。ほかにもたくさんの人がカバーしてるから、日本人のシンガーだったら、絶対にカバーしなきゃいけない曲のひとつかも。
ジェイムズ:それじゃぁ、僕が、彼女が彼女自身の曲を選んだことにちょっと疑問を抱いたことを撤回するよ。
ジョン:日本における、ビートルズの『イエスタデイ』みたいな曲なのかも。
ジェイムズ:もうちょっと続きを聴かせて。
ジョン:ジェイムズも知っている通り、『イエスタデイ』は、イギリスで1番カバーされている曲だからね。
この曲知らないの?タイムアウト東京の音楽エディターなのに?
ジェイムズ:トレンディーなのが得意なんだ。
Beady Eyeが歌ったらいいよね。メンバーは、この映像を観ていると思うけど、サマソニに来る時にカバーすればいいと思うよ。きっと、観客は感動するね。
ジョン:Beady Eyeの次回作はこれだね!
というわけで、森山さんの選んだ5曲は、フォークが多かったね。それは、全然悪いことじゃないね。
ジェイムズ:うん、最初の日に聴いた、ピアノばかりなのより良かったね。
ジョン:夢でもうなされたもの(笑)
じゃぁ、今日もお付き合いありがとう。また、明日!
ジョンとジェイムスのプロフィール
ジョン・ウィルクス:
タイムアウトアブダビからやって来たタイムアウト東京のエディトリアル・ディレクター。ロンドン出身。これまでオノ・ヨーコ、ブラー、エアロスミスなどのミュージシャンにインタビューしている。ギタリストとしても活動中。
ジェイムズ・ハッドフィールド:
タイムアウト東京の音楽エディター。ロンドン出身。英語情報誌『メトロポリス』のエディターを経て、現職。
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