ロンドンサイクリングルート 8

ホルボーン駅~ウェルカム・コレクション博物館

ロンドンサイクリングルート 8

Photo by satguru ホルボーン駅

第8回は、地下鉄ホルボーン駅から、ウェルカム・コレクション博物館まで、イギリスの医療の歴史に触れながらロンドンの街を走ろう。ジグザグと細かく曲がるコースなので、自転車でまわる時には注意をしてほしい。散歩コースとしてもオススメだ。

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スタート地点:ホルボーン駅
ゴール:ウェルカム・コレクション博物館
所要時間:40分

地下鉄のホルボーン駅を降りて、キングスウェイを下り、左のサルディーニャ通りを歩きながらリンカーンズ・イン・フィールズを臨めば、王立外科医師会が見えてくる。 18世紀、ロンドンの外科医たち(当時はまだ血塗れたナイフを手にした床屋たちのギルドに過ぎなかったが)は、大学卒の医師を集め、医師会を設立するよう思い立った。1745年、ニューゲイト監獄に隣接した場所で外科医組合を創設し、1800年には英国王室ジョージ3世から許可を得て、後には待望の場であるリンカーン・イン・フィールズへと移転した。

リンカーン・イン・フィールズを北に抜けると、ジョン・ソーン博物館がある。ニューマン通りを経由して、レッドライオン通りを抜ける。左のプリンストン通りを曲がり、レッド・ライオン・スクエアを直進すると王立麻酔科医師協会がある。1988年に設立されたこの協会は、ロンドンの中でも新しい医療機関だ。しかし、ロンドンでの麻酔学の歴史はゴーワー通りの歯科医師であったジェームス・ロビンソンがエーテルでの実験を行った1846年にまで遡る。「ヤンキーのトリック(吸引麻酔は米国で発見されたため)が人を無感覚にしてしまった!」とロンドンの初の外科医であるローバーロ・リンストンもエーテルの効能を褒めちぎったといわれている。

クイーンズスクエアを目指し、北通りとボスウェル通りをのぼる。このエレガントに見えるクイーンズスクエアは、実はロンドンの中でも最先端の医療機関が集う場所でもある。英国神経病院神経耳科(1867年創設)、そしてその角を曲がると、1852年に創立されたかの有名なグレート・オーモンド・ストリートのこども病院がある。グレート・オーモンド通りをまっすぐ行き、コンデュイット通りを左に、そして、コラムズ・ストリート公園を目指す。この公園は子供連れの場合のみ入園可能で、残念ながら大人だけでは入園できない。孤児として育ち、しかし後の名声を獲得したトーマス・コラムは、この地に慈善病院を創設した。そして1741年には寄宿舎学校近くに近代的医療を取り入れた病院を創設、恵まれない子供たちへの教育活動に従事した。

さて、ギルドフォード通りを西に向かおう。グレンヴィル通りへ入り、ブランスウィック・スクエアを通り抜け、ハンター通りへ。そしてハンデル通りとの交差点でちょっと止まってみてもらいたい。1860年代に入るまで、イギリスにおいて女性は医療に携わることが禁止されていた。しかし、そこで3人の女性が立ち上がる。エリザベス・ギャレットアンダーソン、ソフィア・ジェックスブレーク、エリザベス・ブラックウェル、彼女らは医療に関する見識を有していたが、どの医療機関にも受け入れられなかったため、1874年、自らの手でこの地にロンドン女子医学学校を開いた。

ハンター通りを左のタヴィストック・プレイスへ、そしてハーブランド通りの交差点まで行こう。そこから反対側の車道を見ると、ロンドン初の消防署がある。ヴィクトリア朝時代から、ロンドンのどの医療施設においても馬車式の救急車は導入されていたが、やがて多くの人々が車を利用するようになり、それに伴う人身事故の増加が懸念され、1915年にロンドン市議会によってこの地に初の消防署が設けられた。

ハーブランド通りをくだり、右のバーナード通りを抜けラッセル・スクエアへ。左に曲がるとモンタギュー・プレイスがあり、そこから右のマレット通りへ。ラペル通りを左に曲がるとロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院が見えてくる。元はグリニッジに係船されていた病院船で、長い航海を終え帰って来た船乗り相手に治療を行っていた。ゴワ通りを右に抜け、また右のビング・プレイスへ。タヴィストック・スクエアを回り、BMAハウスの前で立ち止まって見てもらいたい。この圧倒的なビルの中に、現在の英国医師協会(BMA)は位置している。1856年以来、BMAは多くのイギリス医師を送り出している。

さて、ここからウォーバーン・プレイスを抜け、エンドスレイ・プレイスへ、そしてエンドスレイ交差点まで向かう。左を見ると、そこには『ウェルカム・コレクション博物館』がある。アメリカ生まれの薬剤師であるヘンリー・ウェルカムは1936年にこの世を去ったと同時に膨大なコレクションを遺した。それは 2000年前のペルー人のミイラから、ネルソン提督のかみそりにまで及ぶ。ウェルカムの“ミュージアム・オブ・メン”では世界最先端のバイオ医療に関する展示会なども行っている。

テキスト タイムアウトロンドン編集部
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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