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音楽ライターの磯部涼の編纂により、風営法問題をめぐる日本のクラブ、ダンスフロアの動向、社会問題についてまとめた『踊ってはいけない国、日本』。昨年8月に発売され、話題をよんだこの本のこの続編にあたる『踊ってはいけない国で、踊り続けるために ---風営法問題と社会の変え方』が4月24日に発売された。
(本書の帯写真には昨年10月、タイムアウト東京の英国人ジャーナリストが日本での動向を取材し、レポートした記事「日本でのダンスはご遠慮ください」での大阪NOONのミラーボール写真が掲載されている)。
内容の方だが、前著以降の風営法改正を求める署名運動「Let's DANCE」運動の状況や、原発問題を含めた近年の社会運動のとらえられ方を踏まえて、いかに「踊ってはいけない状況を変えて行くことができるか」という実践をめぐり、ミュージシャン、レーベル・オーナー、弁護士、社会学者など多方面の識者が論考を披露している。なかでも、原発問題についても積極的な発言を行ってきたASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文のインタビューのほか、Let's DANCE署名推進委員会の共同代表であり弁護士である斉藤貴弘と国際カジノ研究所所長の木曽崇による対談、ライターの速水健朗が井上ひさし『吉里吉里人』から連合赤軍、オウム真理教、坂口恭平『ゼロセンター』までを取り上げ、日本からの独立をテーマにしたフィクション、運動の系譜を綴った論考『妄想的独立国の系譜』などは必読。風営法問題から一歩踏み込み、複雑な問題が山積する状況で日本社会をいかに変容させていくことができるか、というテーマで様々な視座が導かれる。昨今の改正公職選挙法の可決をめぐるネットでの政治参加の新しい動きともリンクして、今後の社会運動、市民運動を読み取る文献の一つといえそうだ。
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