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オーガニック・グルーヴ2本立て

16日(木)の『ジョン・メデスキー、ピアノソロ・セレモニー』に続き、18日(土)には本番『クラブ・デルフ with メデスキー』を観てきました。今回がオーガニック・グルーヴ初体験だったので、“本番”という表現が正しいことを願います。何よりメデスキーのパフォーマンスの違いから、そう感じました。

ピアノソロ公演の方は、銀座ヤマハホールが会場だったので、いわゆる“コンサート”になるのかと思っていたのですが、そんなことはありませんでした。まずはリラックスした服装で登場したメデスキーと、そんな彼が紡ぐ実験的な楽曲の数々。ピアノを弾く姿はもちろん、演奏を止めずに水を飲む時や長い笛に切り替えた時、ピアノの弦を触っている時など、前衛アーティストの制作作業を見守るような気持ちで、一つ一つの動作をまじまじと見つめ続けてしまいました。隣に座っていた男性はおそらく熱狂的ファンだったのですが、彼も微動だにしなかったです。ですが、この方は明るく優しい曲が出始めると豹変。おかげで、メデスキーの本来の姿はこういう曲の方にあることを確信しました。ラストからアンコール1、アンコール2へと春のようなファンクでジャズな曲が続きましたけど、それに合わせて観客全体も本性を表しましたね。声掛け、拍手、足で激しく拍子取り。コンサートホールでの座り公演とは思えない盛り上がりでした。後から入ってくる人や携帯の着信音などでザワつく場面もありましたが、結局最後は会場に一体感をもたらして終わる。私も、光が差しているような、こうした曲の方がいいなと思いました。

そして、土曜日の『クラブ・デルフ with メデスキー』です。
開演少し前に到着すると、既にかなり人が入っていました。凝ったオープニング映像で観客がクスクス笑って、本編スタート。閉まっていた幕が上がる中、いきなり5人の姿が見えたのですが、ギター、ベース、ドラム、トランペット、そしてメデスキーと、みなさん“妖精クラブ”を名乗るのにはごつすぎるような……。IQインプロ集団『Club d'Elf』は、きっと他の95名程が儚い姿をしてるんでしょうね。それにしても、ステージまでが近い。例の階段状のフロアのおかげで奥の奥までよく見えます。頭上に吊るされていた5個のガラスランプがとてもきれいでした。木曜日と比べると、この日の観客は最初から熱すぎて、いきなり踊りすぎ。年齢層は高めでしたが、今のオーガニック・グルーヴを観に来る人は“ふるいにかけられて、残った人々”、個性が強く濃い面々らしいです。楽しみ方も好き放題でいいようで、最前列でニヤニヤしている人もいれば、自分の世界に入って大きく揺れている人など、基本的にタテノリ専門の私も疎外感なく楽しむことができました。

メデスキーには申し訳ないですけど、私はこのクラブ・デルフ公演の方が好きです。なんと言っても彼の鍵盤裁きが全然違う!頬の肉をプルプルさせて、クラッシック・ロック風味の気持ちいいギター・ソロに、ふにゃーーとオルガンをかぶせてくるところがたまりませんでした。オルガンの伸びがいいんです。その時々でメンバーをセレクトする、というバンド形態を取っているそうですけど、あそこまでパシっと大人に決められるものなんでしょうか。演奏の素晴らしさもですが、バンド5人の出で立ちなども含めての話です。曲の終わりはおろか、盛り上がりの場所も未定のインプロライブです。なのに、お客が盛り上がる場所は不思議と一緒。バンドだけでなく、観客も含めて共鳴するのがオーガニック・グルーヴの楽しみ方なんだなと勝手に思いました。

最後に、オープン前に内覧させていただいたWWWですが、いいハコです。本当にどの場所からも観やすいので、とにかく前に突っ込みたいパンクバンドのライブ以外は活躍してくれそうです。ただし、MC時の感じだとボーカルがやや不安です。それとロッカーが少ないのも辛いですね。空きがないため、上に放置している方がたくさんいました。こんなの日本以外ではできないことです。気づけば階段状のミュージック・ヴェニューはレッド・ロックス以来。今年のライブ締めにふさわしい豪華な夜になりました。

Now I Understand - Club d'Elf

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