世界のベストバー 33選 ヨーロッパ編

アムステルダム、パリ、バルセロナ、ロンドン、各都市編集部のおすすめ

世界のベストバー 33選 ヨーロッパ編

キメ・イ・キメ(バルセロナ)

現在世界39都市で展開中のタイムアウトだが、各都市の編集部がその街で自信をもってすすめるバーと、そこで飲みたい1杯について寄稿した『世界のベストバー33選』をヨーロッパ編、中東編アジア/パシフィック編北米/南米編とシリーズで紹介する。 第1弾は、ヨーロッパの8都市からおすすめを紹介しよう。世界には、街ごとにまったく異なるスタイルの店とそこでしか飲むことのできない酒がある。旅する気分で読み進めていただきたい。

アムステルダムで危険なカクテルを味わう






ハイディング・プレーン・サイトの『ウォーキングデッド』

ヨデンブールト北東部の外れにあるバー『ハイディング・プレーン・サイト』は、その名の通り隠れ家のようだ。店に入ってみるかぎり、スタッフの笑顔以外には何もなさそうに見える。しかし、座り心地のよい怪しい革張りのカウチに腰掛けてみると、バーの上には化学式がびっしり書かれた黒板が見え、壮麗な壁紙のきらめきが本棚やアンティークラジオ、昆虫標本、懐中時計といった飾りを引き立てているのが分かるだろう。着飾ったスタッフは水、たくさんのチェリノーラ・オリーブとミックスナッツ、美しい活版印刷のメニューを携えてやってくる。在庫が豊富に見えるバーは、少量の素晴らしいワインのリストとオランダの瓶ビール、スウィンクルズ(5€)を除けば、16種類の自家製カクテル(8~16€)がメニューの全てだ。16€の値がつくのは、この店の特別な1杯『ウォーキング・デッド』。クラシックなカクテル『ゾンビ』を元にしているが、その隠し味はバカルディ151を含む3種類のラムだ。添えられたシナモンに火が灯されてパチパチと音をたてるキテレツな1杯は、大酒飲みには物足りないかもしれない。だが、イチゴを漬けたカシャッサ(12€)やポップコーンを浸したラム(8€)といった他のカクテルもある。この店の熱い雰囲気に飲まれて、新鮮で泡立ったものが欲しくなったら『HPSミュール』を頼もう。アジアに影響を受けた、ウォッカとジンジャービールに、オレンジとライムジュース、自家製シロップと潰したキュウリが入る夏の味だ。この隠れたバーでいつでも夏らしい味が楽しめることは、知っておいて損はない。 エリーシャ・ブレンナー(タイムアウト・アムステルダム

ハイディング・プレーン・サイト(Hiding in Plain Sight)
住所:HPS Rapenburg 18, Amsterdam, the Netherlands
電話:+31 20 737 1890
ウェブ:www.hpsamsterdam.com

バルセロナでベルモット時間を過ごす




キメ・イ・キメの『ベルモット』

日曜日のランチ前、バルセロナはベルモットの為に止まる。ベルモットタイムはバルセロナの若者にとっては習慣となり、子持ちの30代にとっては――悲しいことにバーをはしごして、朝までパーティをする日々が終わってしまってしまった親たちにとって落ち着ける方法である――命綱だ。多くの人にとって(ここが世界でもお気に入りの場所であると言うソニック・ユースのギタリスト、サーストン・ムーアを含む)伝説的なタパス・バー『キメ・イ・キメ』では、天国のような午後を過ごせる。ここには自家醸造のビールもあるし、世界一のベルモットが味わえるし、床から天井まで並ぶワインも飲むことができる。それ以外にも、他ではありつけない缶詰や瓶詰を使った料理と特別なシーフード料理も楽しめる。3つ、4つの缶詰を頼めば素晴らしい食事が楽しめるだろう。家族4世代に渡って営まれるこの店では、バルセロナに欠かせない酒が楽しめるだけではなく、バルセロナそのものが味わえる。 リカルド・マルティン(タイムアウト・バルセロナ

キメ・イ・キメ(Quimet i Quimet )
住所:Poeta Cabanyes 25, Barcelona, Catalonia
電話:+34 93 44 423 142

イスタンブールで原点に回帰する




ヤクプ2の『ラキ』

その伝統と地域性によって、『ラキ』は常にイスタンブールの食文化の柱だった。我々トルコ人は、どんな酒を飲んでいても、最後には絶対に国民的な酒であるラキに戻ってくる。干しぶどうを蒸留して作られる、アニスの香りの透明な酒は水と混じると白く濁るため、トルコ語で「ライオンのミルク」というあだ名がついている。この酒は夕飯を食べながら、メゼ(おつまみ)つまり、主にホワイトチーズとメロンの載ったテーブルでおしゃべりをしながら味わうのが習慣だ。 イスタンブールでこれを味わうなら、『ヤクプ2』がいい。ここの常連には作家、詩人、ジャーナリスト、そして最近は若者が多い。この店が人を魅了するのには、シンプルだからかもしれない。よけいな飾りや気遣いを抜きに、古きイスタンブールのメイハーネ(居酒屋)文化に密接に結びついている。店のメニューはいつも変わらず、シーフードだけが季節によって変わる。 席に着くと、盆に載ったメゼの中からどれを注文するか選ぶことができる。他とは違い、全てができたてだ。オススメはタラのマリネ、コポグ(角切りのナス、トマトソース、ニンニク風味のヨーグルトが入ったエーゲ海のメゼ)、タコのサラダ。温かい前菜で是非試してほしいのはムスカ・ボレク(チーズと粗挽き肉の入った三角形のパン菓子)とレバーだ。ラキを楽しむため、会話の邪魔にならないよう音楽は非常に小さくなっている。 エリフ・アルティアリ(タイムアウト・イスタンブール

ヤクプ2(Yakup2)
住所:Asmalıescit Sokak 35/37 Tünel, Beyoğu, Istanbul, Turkey
電話:+90 212 249 29 25

ロンドンでクラシックなマティーニを極める




コンナウトの『マティーニ』

映画『007/スカイフォール』は、滑らかなイギリスのスピリッツと香り高いフランスのベルモット、この純正な組み合わせであるマティーニがどんなに素晴らしい酒かを我々に思い出させてくれた。しかし、ロンドンの超高級ホテル『コンナウト』では、それが廃れることはなかった。ここのバーテンダーは、数十年に渡ってマティーニを最高の水準で混ぜてきたのだ。コンナウトでの体験は、ホテル外のカルロス・プレイスにある安藤忠雄が設計した水がほとばしる彫刻から始まる。ドアマンの横を抜けると、スーツを着たスタッフがデビッド・コリンズ(2007年にオーナーに就任した)によって改装された、ロンドンで最高のバーの1つに案内してくれる。 伝統的なエドワード朝の家具が残っているが、今では淡い色調でいてシックな雰囲気だ。その豪華な雰囲気に圧倒されるかもしれないが、予約は受け付けないこのバーには、誰でも平等に入ることができる。ドリンクのリストにはさまざまな酒が並ぶが、ここの究極のカクテルは『マティーニ』だ。 スピリッツを選べば(タンカレー10はロンドンの美味しいドライジンだ)バーテンダーがワゴンに氷の詰まったデキャンタを載せて来て、目の前でマティーニを作ってくれる。木製の箱に入っている薬品のようなガラス瓶の中には、甘草、グレープフルーツ、ラベンダーなどを使った自家製のビターズが詰まっている。もちろん値は張るが(15£ほど)、どんな客に対してもサービスは申し分ない。コンナウトの真価であるマティーニは、無類の洗練された雰囲気を味わせてくれる。 ユアン・ファーガソン(タイムアウト・ロンドン

コンナウト(The Connaught)
住所:Carlos Place, London, UK
電話:+44 (0)20 7499 7070
ウェブ:www.the-connaught.co.uk

ニコシアで古代のキプロスへ想いを馳せる




7クレイディアの『ラコメロ』

ラコメロについて聞いたことはあるだろうか? きっとあなたが思う以上になじみ深いはずだ。「ラキ」は地中海特産として有名なスピリッツ、「メリ」はギリシャ語でハチミツだ。これで典型的なキプロスらしい酒の想像がつくだろう(編集部注:RakiとMeriが結合し、音便化することでラコメロに転ずる)。鍵を意味するギリシャ語、クレイディアを店名に掲げる『7クレイディア』は、古いキプロスの習慣、カフェネイオ(先祖が集まって伝統的なコーヒーを楽しんだ場所)を新しくしている。ここではリラックスするための鍵が見つかるはずだし、この店は過去への鍵でもある。旧市街への車乗り入れを制限する条例のおかげで、バーの周りの静かな空気があなたを何世紀も前に連れていってくれるはず。昔のニコシアがどんなものだったか分かるだろう。この店のインテリアは、木製の家具で芸術的に飾られ、アンティークが上手く調和していて、店に伝統的な雰囲気を持たせている。また、ここではラコメロ以外にもさまざまな現地の味が楽しめる。アイスコーヒー、ビールとナッツ、もしくはウーゾとタコのプレートを楽しもう。全てが手頃な値段で、雰囲気に合った音楽(ギリシャと世界中のオルタナ音楽)の中で味わえる。店の素晴らしい雰囲気は、オーナーが常に笑顔でいることにも起因しているだろう。 ミカリス・ミカエリデス(タイムアウト・キプロス

7クレイディア(7 Kleidia)
住所:92 Trikoupis Street, Old Nicosia Town, Cyprus
電話:+35 7 22 103 857

パリのワインバーでバロンに会う




ル・バロン・ルージュの素晴らしいボルドー

パリのバーにおいて、グラスワインは永遠の古典だ。サンテミリオンの1989年シャトー・アンジェリュスでそれを本格的に楽しもう。これはボルドーでも最も有名なヴィンヤードのオーク樽で熟成された、貴重で価値のある一本だが、『ル・バロン・ルージュ』はそれが見つかる数少ないワインバーの1つだ。アリーグル市場のすぐ横にある、この小さく素敵なワインバーは屋台が閉まる時間帯に腹を空かせた客を受け入れる。うぬぼれたワイン愛好家のための気取った店ではなく、どちらかというと愛想のいい、地に足のついた労働者階級のたまり場だ。酒を飲むのは彼らにとって喜びで、夜にはしばしば騒がしく盛り上がる。小さい店は親しみやすく、雰囲気がいい。何列ものボトルで壁は見えなくなっていて、空いた場所には床から天井までワイン樽で埋まっている。 常連客はお代わりをするのに空き瓶を持って行く。新しいボトルを買うより安いからだが、もちろん素晴らしい選択肢の中から新しいボトルを選んでもいい。ただ平日は、仕事帰りに食前酒を楽しむ人で混み合うので気をつけてほしい。その他大勢と一緒に表の路肩で飲むことになるからだ。食事をするなら、日曜日に訪れて牡蠣とサンセールか、ボードに盛られるシャルキュトリーとコクのある赤ワインを味わうのがいいだろう。 カミーユ・グリフォイエール(タイムアウト・パリ

ル・バロン・ルージュ(Le Baron Rouge)
住所:1 rue Théophile Roussel, 12th arrondissement, Paris, France
電話:+33 (0)1 43 43 14 32

サンクトペテルブルグでショットを決める

ミシュカの『フォクシー』

愉快な犬と同じ名前の(喋るハスキー犬、ミシュカはロシアのインターネットで大きな話題になった)バー、『ミシュカ』はサンクトペテルブルクで最も興味深く、意義深い店のひとつだ。オープン以来大人気のミシュカは、サンクトペテルブルクの若者とトレンディな人々が週末の夜に欠かさず寄る店となった。ショット好きの人たちと、質の高い音楽の専門家――よくワールド・クラスのDJ が出演する――この両方が通う店で、テレビやゴシップ欄でよく見る顔もある。いかついバーテンダーは大きな笑みを浮かべ、キンダー・サプライズと素晴らしいサンドイッチを勧めてくる。サンクトペテルブルクの目利きの間で一番人気のショットは、ウォッカとアマレットの『フォクシー』で、週末の夜には何杯も空けられる。これを何杯か飲むと、店内を覆う巨大でカラフルな牛のモザイクがすごくサイケデリックなアニメのように見えてくるだろう。だが、日の光の中ではこの店は変貌し、より落ち着いた雰囲気になる。サラダ、トーストされたサンドイッチとクロワッサンには、フレイバーココアかリンゴ酒が添えられてくる。サンクトペテルブルクに欠かせない2つの体験が一度にまとめて楽しめる店だ。 コヴァルチャク・タラス(タイムアウト・サンクトペテルブルグ

ミシュカ(Mishka)
住所:Naberezhnaya Reki Fontanki 40, St Petersburg, Russia
電話:+7 812 643 25 50
ウェブ:www.facebook.com/bar.mishka

ザグレブでクロアチアの地酒に酔う




シカ・バーの『ラジカ』

シカ・バーはザグレブのトゥカルチチェバ、歩行者天国が延々と続く飲食街でも目立つ店だ。また、グラッパやウーゾの一種である、クロアチアで人気の地酒ラジカを試すのにも街で一番いい。ここではさまざまな味、たとえばメディカ(ハチミツ)かオラホヴィカ(クルミ)を試してみるといい。他の地中海の食前酒と同じく、味わうには鉄の喉が必要だが……。この店は、最近あまり見かけない「グラペリア」、つまりカフェテリア兼ギャラリーで、トゥカルチチェバ通りで一番アンダーグラウンドな店だ。内装は1年ほどで大きく変わり、見た目はカフェバーというよりアートスペースのよう。例えば、セラミックの洗面台がテーブル代わりになったゴシック調の洗面所のような2011年の内装は、今ではスペースシャトルのような長いテーブルと得体の知れない青い光にとってかわられた。骨組みだけの黒い椅子は拷問道具のようだが、不思議と座り心地が良い。表にあるテーブルはまばらで、立ち飲み客でいっぱいになる夏の夜には少し数が足りない。その他にここで有名なのは、ブルーベリー、ハチミツ、ナッツ、イチジク、アニス、より一般的なスリジヴォヴィカ(プラム)やタヴァリカ(ミックスハーブ)まで種類豊富に揃う、自家製のラジカとブランデーの長いメニューだ。 ジョナサン・バウスフィルド(タイムアウト・ザクレブ

シカ・バー(Cica Bar)
住所:Tkalčićeva 18, Zagreb, Croatia
電話:+385 98 901 2654
ウェブ:www.facebook.com/CicaBar

各都市タイムアウトのライター
翻訳 林バウツキ泰人
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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