世界のベストバー 33選 北米/南米編

ニューヨーク、シカゴ、サンパウロ、ブエノスアイレス、各都市編集部のおすすめ

世界のベストバー 33選 北米/南米編

ヴェローゾ(サンパウロ)

現在世界39都市で展開中のタイムアウトだが、各都市の編集部がその街で自信をもってすすめるバーと、そこで飲みたい1杯について寄稿した『世界のベストバー33選』特集を、全4回に渡って紹介する。最終回となる第4弾、北米/南米編では、7都市のおすすめを紹介しよう。ニューヨークのバーで味わうカクテルから、メキシコシティで出会える伝統的な蒸留酒まで、ここにはきっとあなたの知らない1杯があるはずだ。旅する気分で読み進めていただきたい。

ブエノスアイレスの伝説を飲む







ミリオンの『ピスコ・サワー』

ブエノスアイレスのスノビッシュなレコレタ地区にある壮麗なバー『ミリオン』は、1999年から街の流行にうるさい人たちの間で人気だ。昔ながらのカクテルを専門に扱う、南米の雄であるこの店の伝説は『ピスコ・サワー』だ。間違いなくブエノスアイレスで最も美しく優美なバー『ミリオン』は10年以上の間、この街のバーの頂点に立ってきたが、今だにその王者にとして輝いている。外観からして印象的――華麗な世紀の変わり目、アールヌーヴォー調――だが、中には壮麗なアンティークが、きらびやかで見事なデザインと投影される現代アートの映像と混ざり合っている。店に入ったらまっすぐ庭に進み、バーへと続く素晴らしい石段を上がろう。上品な雰囲気を味わえるはずだ。席についてスタッフがやってきたら、素晴らしい体験のはじまり。『ピスコ』、つまりブエノスアイレス中で飲まれているチリとペルーが原産の伝統的なブランデーに、サワーと卵白の入ったピスコ・サワーを頼んでほしい。偽りのないものを飲みたい人のための、洗練された南米の逸品だ。この店の大スターは料理よりカクテルだが、もし食事をするなら星の下のテラス席を予約しよう。 クレミー・マンゾ(タイムアウト・ブエノスアイレス

ミリオン(Million)
住所:Paraná 1048, Recoleta, Buenos Aires, Argentina
電話:+54 11 4815 9925
ウェブ:www.milion.com.ar

真のシカゴっ子を気取ってみる




レインボウ・クラブの『ジェプソンズ・マロート』

ただの気取り屋と真のシカゴの飲んだくれを区別するものは一つ。地元シカゴの薬用酒『ジャプソンズ・マロート』のショットを空けられるかだ(オールド・スタイルという地ビールは口を流すのに使われる)。概して、小さくて怪しい店は、たくさんの客が来ると魅力が無くなってしまうものだ。だが、ウクライナ・ヴィレッジにあるこの店は、その運命をなぜか逃れている。『レインボウ・クラブ』はアート・スクールの学生、卒業生、教授とアート・スクールに入りたい人でごった返しており、全員少なくとも1つのバンドをやっていて、両手にビールとショットを持っているというのが共通項。そしてエイソップ・ロックからブラック・サバスまで全てにうなずくのだ。気取り屋たちは代わる代わるフォトブースに入ろうとするが(写真は記念になる。いや、たしかにかっこいいんだけど!)、彼らが気取り屋か否かを見抜くには簡単な方法がある。マロートのショットが飲めるなら、シカゴっ子らしくこの店にいる資格がある。そうでないなら、通りを少し行ったスポーツ・バーで『コスモポリタン』でも飲んでいてもらおう。エイミー・カー(タイムアウト・シカゴ

レインボウ・クラブ(Rainbo Club)
住所: 1150 N Damen Ave, Ukrainian Village, Chicago, USA
電話:+1 773 489 5999

ロサンゼルスで格調高い夜を過ごす




プールヴーの『サゼラック・フィックス』

『サゼラック』は、1800年代中頃、開拓時代のカリフォルニアで初めてブレンドされたアメリカ最古のカクテルと言われている。メルローズ・アヴェニューにある、パリとハリウッドの黄金時代が組み合わさったようなバー『プールヴー』では、セピア色をしたジャズエイジのパリのサロンでの熱狂が味わえるし、ハリウッドで一番格調高いカクテルの店でもある。店が混み始める22時前に暖炉の近くの席を取ろう。魅惑のバーレスクの時間が訪れると、立ち見席しか空いていない状況になってしまう。 予約する方がいいが、きちんとしたカクテルにあった装いをしていて、数人のグループであれば大丈夫だろう。ここは、ドレスコードが厳格で、細かい条件(Tシャツ、パーカー、野球帽、スニーカーは禁止)は店のサイトと入口の銘板に書いてある。 店内は、応接間風の部屋を青と琥珀色の劇場風の光が照らしており、真ん中にある居心地のいい暖炉近くの席もいいが、グラン・パレのミニチュア版として作られたようなドームの下にある円形のシートには負ける。 一見よく見るようなミクソロジスト(バーテンダー)たちだが、ヴァン・ドゥ・リキュールをアルマニャックで強めた『フロック・ド・ガスコーニュ』(10$)といったメニューに載らない食前酒で驚かせてくれる。カクテルリストは簡潔で、よく飲まれるもの(伝統にひねりを加えた、我々のおすすめ『サゼラック・フィックス』は12$)と、実験的な混ぜ方をしたものがいくつかある。アルマニャック、ラズベリー、ルバーブという恐ろしいまでに素晴らしい組み合わせの『レ・サムライ』(14$)もおすすめだ。 ジョナサン・クリスタルディ(タイムアウト・ロサンゼルス

プールヴー(Pour Vous)
住所:5574 Melrose Avenue, Hollywood, Los Angeles, USA
電話:+1 323 871 8699
ウェブ:www.pourvousla.com

メキシコシティで神聖な酒を浴びる




エクスペンディト・デ・プルケズ・フィニョス・ロス・インサージェンテスの『プルケ』

白く発酵したリュウゼツランの絞り汁、メキシコ特産の酒『プルケ』をアステカ人のように飲もう。この地方のアステカ人たちはこの酒を聖なるものと考えていたが、『エクスペンディト・デ・プルケズ・フィニョス・ロス・インサージェンテス』で注文してみれば、あなたもそう思うはず。名前が長すぎる店だ(地元の人は略してラ・プルカタと呼んでいる)が、このバーは色々なものが混じった実にキッチュな店で、巨大な首都の心臓部に位置するローマ・ノルテ地区のありとあらゆる人を引きつけている。プレッピー風の人もいれば、会社員、モード系、バックパック姿の観光客に学生もいるが、誰に対しても平等な3フロアの席とテラス席には、それぞれに合うものが見つかるだろう。 メスカルの原料になるリュウゼツラン以外にも、伝説やプルケ飲みについての格言が描かれている店内は不思議な魅力に満ちている。こうした情熱から想像できる通り、伝統に対するラ・プルカタのこだわりはすごい。だからこそ、プルケの全てを味わいたいならここが一番おすすめなのだ。ここでは『アグア・デ・ラ・ヴェルデ・マタ』(緑色植物の水)がストレート、またはオーツ麦、オプンティアやサクランボなどが入ったクラドス(様々な味付け)で楽しめる。気分にもよるが、沈んだ気持ちを盛り上げてくれるだけでなく、おしゃべりしたり、踊り出したくもしてくれる。もしプルケの粘りや特有の香り、味が口に合わないなら(万人向けではないので)、ここには自家製のメスカル、豊富なメスカル・クリームやビール、スピリッツにワインまである。ワインリストは「ここへ来てワインを飲まない奴は、そもそもなんで来たんだ?」と尋ねてくるが、まさにいい質問だ。注意してほしいのは、酔いすぎて盗難防止システムを忘れないこと。ウエイトレスから会計を済ませたという券を貰わないと店から出られない。 パオラ・デル・カスティーリョ(タイムアウト・メキシコ

エクスペンディト・デ・プルケズ・フィニョス・ロス・インサージェンテス
(Expendio de Pulques Finos los Insurgentes)

住所:Insurgentes sur 226, Roma, México, DF
ウェブ:www.lapulqueria.org

ニューヨークでカクテルの女王にひれ伏す




ペグ・クラブの『ジンジン・ミュール』

近頃ではマンハッタンを撥ねつけるようなバーは世界中のどこにでもある。だが、本物のニューヨークの酒が飲みたいなら、オードリー・サンダースの有名な『ペグ・クラブ』に駆け込んで『ジンジン・ミュール』を頼もう。自家製ジンジャービールとタンカレー、フレッシュミント、ライムジュースの生き生きしたカクテルだ。この現代における古典はゴッサムでジンを再び流行らせ、アメリカのクラフト・カクテルを蘇らせたうえに、今日までその美味しさをとどめている。ニューヨークに君臨するカクテルの女王オードリー・サンダースの影響力は計り知れない。彼女の名高い店、お洒落な『ペグ・クラブ』は『デス&カンパニー』、『PDT』や『マヤウエル』など、ニューヨークの現在のバー・シーンの基準を引き上げた。2005年に、この店が27種類のジンを備えたバーと腕利きバーテンダー集団を従えてオープンした時、街は貧相なカクテルと気の利かないバーテンダーでいっぱいだった。だがサンダースは、カーペット敷きでロウソクを灯した階段を上がれば、誰もが入れるゆったりした90席のラウンジで、本格的なミクソロジーの世界を大衆に解放したのだ。 3階にあるその聖地では、手で割られた氷、貴重なスピリッツと学者並みの酒の知識が備わったオーク材の長いバーが、気の利くバーテンダーたちのステージになっている。ここに腰掛けたら、素晴らしい古典(店名になっている「ペグ・クラブ」)か、店の特徴的な酒『ジンジン・ミュール』を選ぶといい。 活きのいい若者たちが街中に新しい店を次々作っても、この伝説的なバーのキレが鈍ることはなかった。他では見られない厳格な質を保ち、長年進化すら遂げてきたのだ。この店では思わずのけぞってしまうような職人技と程よい目新しさが巧みに合わさっており、ニューヨークらしさが詰まっている。 マリ・ウエハラ(タイムアウト・ニューヨーク

ペグ・クラブ(Peg Club)
住所:77 West Houston Street, New York, USA
電話:+1 212 473 7348
ウェブ:www.peguclub.com

リオデジャネイロで最古の酒に出会う




バル・ド・ゴメスの『ピンガ』

リオの古い植民地街に向かえば、およそ100年前からある『バル・ド・ゴメス』で、長年男たちが作ってきた職人技の『ピンガ』、すなわちカサーシャとして知られるブラジルの代表的な酒が楽しめる。サンタ・テレサは古いリオの最後の砦だ。美しい、ぼろぼろになった建物の中にあるゴメスでは、ブラジル最古の酒『ピンガ』、またの名をカサーシャを本格的に楽しむのに最適な場所だ。火のつくような熱さは、何杯も出てくる氷のように冷たいオリジナルビールに対する解毒剤にもなる。1919年に創業した比類なきこの店は、スペイン移民の雑貨屋として(当時はアルマゼム・サン・チアゴという名前だった)歩みを始め、現在に至るまでバーの上の棚に並ぶ古そうなオリーブの瓶と缶詰とともに風変わりな魅力を放っている。 ゴメスは何年にも渡って(おそらく1919年からではないだろうか)バーを切り盛りし、この店を歯抜けの人から、交差点で車を追いかける犬、酩酊した地元の集団などを魅了する地元に不可欠な存在にしてきた。特におすすめしたいのは、揚げたボリーニョス(タラの団子)やパステイス(エビのパイ)で、最高のショッピ(冷たいドラフトビール)や60種のカシャーサで流し込むといい。昔ながらの大雑把な魅力を放つこの店は、街にとって欠かせない存在だ。 ドン・グレイ(タイムアウト・リオデジャネイロ

バル・ド・ゴメス(Bar da Gomez)
住所:Rua Áurea 26, Santa Teresa, Rio de Janeiro, Brazil
電話:+55 21 2232 0822

サンパウロでローカルとはしゃぐ




ヴェローゾの『カイピリーニャ』

地元で愛されるこじんまりした店で、サンパウロっ子たちに混じって独創的なカイピリーニャを味わおう。『ヴェローゾ』は地元の住人が昔ながらのブラジルのつまみと、酒、食事とおしゃべりのあるくつろいだ長い夜を求めてくる場所だ。700万以上あるサンパウロの車が連なる渋滞した幹線道路から50フィートもないところに、静かな住宅街がある。『フア・コンセイサン・ヴェローゾ』は街で最も愛されるボテコス、つまり大衆的な料理と酒文化の中心であるこじんまりしたバーだ。みんなが眠っているわけではないヴィラマリナーラの郊外ではこの店の存在は秘密ではない。バーにある12ほどのテーブルはきつきつに並んでいて、明るく照らされた店の中はいつも一杯だ。だからここで席を待つには、外の舗道にはみ出ているあらゆる年齢と階級のカジュアルな格好をした人々に交じって立って話すしかない。白いシャツと蝶ネクタイを着けたウエイターはショッピ(冷たい生ビール)の入った小さなグラスをトレーに載せ、群衆の間を注意深くすり抜けていく。一番の目玉はここのカイピリーニャだ。このブラジルの古典的なカシャーサ、すなわち砂糖、ライムと氷を合わせたカクテルは、カシューフルーツとライム、スターフルーツとバジル、ライムとジンジャーといった魅惑的なフルーツと組み合わさって、サンパウロの創造力の源となった。我々のお気に入りの組み合わせはタンジェリンとチリだ。食事では、大きくジューシーな海老を揚げた『ボリーニョ・デ・カマラン・クレモーゾ』は、カチュピリ・チーズとマニオク・マッシュがかけられた一皿で、サンパウロらしい気分を完璧なものにしてくれるだろう。 キャサリン・バルストン(タイムアウト・サンパウロ

ヴェローゾ(Veloso)
住所:Rua Conceição Veloso 56, Vila Mariana, São Paulo, Brazil
電話:+55 11 5572 0254
ウェブ:www.velosobar.com.br

各都市タイムアウトのライター
翻訳 林バウツキ泰人
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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