2009年09月29日 (火) 掲載
まずは芸者、京都では通称芸子、とさらにカラフルな芸者見習いの舞妓について触れよう。この謎めいた女性たちは仏塔や寺社同様、必見リストの上位だ。観光客は芸者や舞妓がお呼ばれに急ぐ場面を一目見ようと、夕方になると花見小路通りをたむろする。祇園の小石通りは美しいものだが、そこに舞妓が入ると、京都では絶好のシャッターチャンスとなる。こうしたことを誰もが喜ぶわけではない。
京都では、舞妓ハントがあまりに人気となったため、2009年には地元の観光局が観光客に彼女たちのプライバシー尊重を求める嘆願書を出したほどである。舞妓たちはとどのつまり、何百万円もする制服を着ながらも、通勤途中なのだから。このパフォーマンス名人と観光客を見分けるのも難しいはずだ。というのも、舞妓変身が大人気なため、顔を雪のように白くした着物女性は、高価な服を着た日帰り観光客かもしれない。
本物かどうか確かめる方法が幾つか有る。昔ながらのやり方は、女性たちが唄い、踊り、ゲームをし、お酌するお茶屋に行くことだ。ただし、素晴らしいコネがない場合は、この選択肢は忘れたほうがいい。お茶屋は一見さんお断りに加え、恐ろしく高い。だが、ディナーの相手として舞妓を頼むことが出来る。たいていの食事処は、お茶屋とコネが有るし、高級ホテルや旅館の宿泊客ならば、そこのコンシェルジェが手配してくれるだろう。舞妓と2時間過ごす場合、40000円程度の支払いを見ておこう。
2009年から、旅館の祇園畑中では、「京料理と舞妓の夕べ」を提供している。芸者と一組の舞妓が、親密感は薄れるものの、お茶屋の夕べを最大40名に味わわせてくれる。伝統舞踊に始まり、クライマックスは芸者のゲームだ(「ジャンケン」に合わせたお座敷遊びと考えよう)。
たいていのお客が感銘を受けるのは、ゲームよりも踊りだ。5つの花街からの芸者がそれぞれ、歌舞練場(芸術劇場)で季節に応じた踊りを一般公開で披露する。事前にお茶席がつくオプションも有る。直接予約するか、当日出てきて、「都をどり」の一番安い席を探してもいい。
舞妓コースをサポートするのがギオン・コーナーだ。通ならば、これはディズニーランドでジャズを聴くようなものと思うが、茶道、華道、狂言や隣接の歌舞練場の舞妓による踊りをはじめ、京都の素晴らしい芸術のうち7つをリーズナブルに、しかも本物を駆け足で見せてくれる。
京都で最も多く上演される芸能は、最もわかりにくい。能は毎週数回、主に金剛能楽堂や観世会館で上演されている。チケットはリーズナブルで購入も容易。能の動きがゆっくりというのは、とてつもなく控え目な表現だろう。ドラマチックに間をおく場面では居眠りするかもしれない。能の演技は様式がしっかり決まっており、金剛流宗家、金剛永謹氏によると、日本人でも演技の内容を本当に理解する人はほとんどいない、と言う。ただし、舞台には様々な形式の美が有り、観客は自分の興味を引く側面にフォーカスし、能を理解しようとするよりも「感じて」欲しい、と金剛氏。能は日本最古の芸能であり、歌舞伎を何世紀もさかのぼる。能のルーツは、奈良近郊で始まったもっと陽気な今は廃れた芸術形式の猿楽にある。14世紀、一組の父子が猿楽の神妙な面を取って、高尚芸術に変えた。後に残った軽いタッチは、狂言となり、今は能の演目と演目の間にコミカルな幕間劇として上演されている。将軍の足利義満や日本を統一した豊臣秀吉など権力者の支援を得て、能は16世紀末まで栄え、約2000の戯曲が書かれた。その後、能は形式上完成したと宣言され、流派は戯曲の新たな創作を禁じられ、演者の世襲制が制度化されて、能はやがて凍りついた。今でも、一座は500年以上も前に書かれた約250の戯曲レパートリーから上演している。数年に一度、新しい戯曲が現れるが、通常は古来からの話の一つに基づくものだ。能の5大流派のうち2流派の能楽堂が京都にある。金剛能楽堂が最も新しく、あらすじを説明する英語版パンフレットを唯一提供している。6月1日か2日に京都にいるならば、野外でかがり火が灯る中、能の上演が見られる場所は、平安神宮である(チケット料金は当日券3000円、前売り券2500円)。 能ほど難しくない劇を選ぶならば、歌舞伎だ。語りのスタイルやペースは欧米人にも馴染みやすいだろう。この芸術形式は京都で誕生し、ごく初期の上演は加茂川の河原で行われたとされる。毎年12月、祇園の南座が国内で有名な歌舞伎公演、シーズン到来を告げる顔見世興行を行う。しかし1年のうち残りの時期は、他の現代的な劇場と競争してもみ合いになる。能は観られるものなら観ておきたい。
高尚な芸術から一息つきたいなら、カラオケがある。個室を借り、歌を選び、声帯をめいいっぱい動かそう。歌をからかうのは、同じ部屋の友人だけで、気兼ねなく楽しめる。おすすめの店は、スーパージャンカラ。ワンランク上の個室を提供しており、シャンデリアやミラーボールが飾られ、ドリンクもおいしい。壁には電話が取りつけられ、ドリンクやフードを注文できる。
京都が現代球技で盛り上がるようになるのは、まだまだこれからだ。京都には、Jリーグ1部の京都サンガFCというサッカーチームが有るが、西京極スタジアムではホーム側よりもアウェー側の観戦者の数のほうが多いことがよくある。野球、特に阪神タイガースにはもっと熱が入っている。ただし、京都は大阪、神戸と一緒にタイガースを共有しなくてはならない。阪神甲子園球場は、大阪と神戸の間に位置する西宮にあり、電車で一時間先だ。
ほんものの温泉を楽しむなら、近くのリゾート地に日帰り旅行する必要があるだろう。大原、貴船、鞍馬はすべて、京都から簡単に行ける。絵葉書のように美しい田舎でミネラルたっぷりの温泉に入れる。京都には銭湯が幾つかあるが、船岡温泉が際立って良い。この銭湯は、ノスタルジックな建物と各種のお風呂が豊かにブレンドされており、最も人気の高い入浴場所であり、また観光名所にもなっている。田舎までトレッキングすれば、絶景が見られるだろう。船岡温泉に行くと決めたら、セラミックタイルとボディアートで間に合わせるしかない。
Kyoto Shortlist (2009) から翻訳、編集
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