2009年09月29日 (火) 掲載
京都のショッピング通りは、買い物をする場所がないことに驚く人もいるかもしれない。国際的な有名ブランド店は、世界のたいていの街に当たり前のように存在するが、京都最大の商店街である四条通りにも、有名ブランドは数店しかない。この通りで最も目立つ近代的建築物は、ティファニーでもグッチでもなく、創立1790年の伝統を誇る、緑茶の老舗「京都 福寿園」だ。
京都はいまだに老舗や地元の商店が根強く生き残っている土地だ。ブランドネームが入ったトレイナーなどはプーマショップで購入できるが、少し歩けば、「Sou-Sou」で、着物デザイナーとスポーツブランドのルコックがコラボした足袋が購入できる。
「gallery & café Oku」、「Sfera Archive」、「Kyoto Design House」は、生活必需品を長年に渡り販売しているが、その商品は時代の変化とともに最新技術と最新の素材に進化している。「Omo」では、着物とイギリスの布地から作られた帯の組み合わせが販売されており、「京唐紙 唐長」では、伝統的な壁紙の製造会社の専門技術を木版印刷が生かされたランプのかさの装飾や、グリーティングカード、名刺などが買える。バック製造会社の「伊兵衛」はしとやかで上品なチェーン店で、一見すると街で一番新しい店のひとつだと思いがちだ。だが、実は創業400年になる綿花業者だ。京都は伝統を固守するだけではなく、恵まれた過去の遺産をもとに、日々新しい創作物を造り出している。新旧を巧みにブレンドさせる店が人気を集めるのも納得だろう。
観光客を惹き付ける本当の魅力は、100年以上の歴史を持つ家族経営の老舗専門店だ。京都が都であった時代、全国の一流職人は京都を目指し、そのうち何人かの店は現代でも生き残っている。人々が心に描く京都の店とは、初老のおかみが店先の道を箒がけし、のれんの奥に味噌桶が見える光景だろう。もちろんこうした店にウェブサイトはなく、おそらくこの先も必要ないであろう。彼らの商いは口コミと通りすがりの客によってこの先も続いていくのだ。
こうした京都の歴史ある店は街の至る場所で商売を営み、時間の経過と共に淘汰され、最高の店が残されてきた。「信三郎帆布」や「嘉祥窯」、「船はしや」といった店は、伝統的な老舗には見えないかもしれないが、技術をしっかりと後世に伝え、時代の波に合わせて生き延びた京都の店の良い例だ。
京都の店は地区によって分類されている。当時の都市設計者は、唐王朝の都市開発の考えを借用し、格子状の街を設計した。今でも商業地区と御所地区の中心部は格子状に通りが走っている。それぞれの地区は、櫛屋、扇子屋、豆腐屋など専門によって分かれており、現在でも、京都の中心部を歩くと昔の面影を垣間見る事ができる。
だが最近では地区より通りの方が、より明確な個性を持っている。祇園の新門前通りは骨董店、御幸町は洋服店、祇園の二年坂と三年坂にはお茶屋と土産物店がまるで絵画のように美しく立ち並んでいる。四条通りにはデパートや有名ブランドもあるが、路地に入れば小規模でより興味深い店が多数佇んでいる。
お勧めは「京都の台所」と呼ばれる錦小路通りだ。6本の通りにわたる市場街から成る錦小路市場は、様々な彩りと香りが立ちこめ、買い物客で終日ごったがえしている。錦小路通りは16世紀に、御所に魚を卸していた魚屋の休息場として発展した。御所への途中の場所にあり、ひいき客の住居にも近く、水源の真上に位置する格好の場所だった(多くの料理店はいまだに井戸を持ち、直接地下水を汲み出している)。
1770年には、野菜や他の食材も売られるようになり、現在では緑茶から乾燥湯葉まで京都の食材のすべてを販売している。
京都最大のノミの市は、寺院と神社が主催している。一つは仏教の真言宗の祖である弘法大師から名付けられた「弘法さん」で、毎月21日に東寺で開催され、もう一つの「天神さん」は、その4日後に北野天満宮神社で開催される。お菓子から着物や盆栽まで売りに出され、地元の人々で賑わう。やや小さいが、同じくらい魅力的なノミの市は、北東山の小さな寺院、智恩寺で毎月15日に開催される。地元の芸術家や職人による手作り市(www.tedukuri-ichi.com)も見逃せない。
店の営業時間は様々で、店が古ければ古いほど早く閉店してしまう傾向にある。たいていの店は、午前10時あるいは午前11時に開店し、伝統的な店はおよそ午後6時に閉店する。より近代的な店は午後8時以降まで営業しているところもあり、多くの店は日曜日でも営業し、週の中ごろが定休日となる。
京都の住所は風変わりだ。住所は、地区、あるいは、「町」と、建物の番号によって表記される。問題は、地区が明確に分けられていない事だ。地元の人ですら、住居や職場の地区の後に何が来るのかを知らない。例えば弁財天町への道を尋ねられても、説明できる人は皆無だろう。すでに弁財町にいたとしても、だ。中央部分の格子にある場所へ行きたければ、方角に聞こえるような住所を辿って行くしかない。蓬莱堂の住所が寺町四条アガルだとしたら、寺町通りを四条通りから少し北へ行く、ということになる。接尾の「アガル」は、「上へ行く」、「サガル」は、「下へ行く」、「西入ル」は「西へ行く」、そして、「東入ル」は「東へ行く」という意味だ。建物が街角にある場合、住所は2つの通りの名前になる。 「ichi・man・ben」の住所は「三条柳馬場」となり、三条通りと柳馬場通りの角にあることになる。だが、目的地の看板を見つけない限り、「アガル」だけでは不十分であることが問題だ。格子状のエリアや東山付近にいる場合は心配ないが、「町」が使われているエリアでは地図が必需品だ。
クレジットカードは、京都ではまだまだ近代的な扱いだ。従って、比較的新しい店では使用できるが、老舗などでは使用できないかもしれない。店の外またはレジの脇にあるクレジットカード表示を探そう。主要銀行ではクレジットカードで現金を引き出せるが、海外のクレジットカードは現金自動支払機(ATM)で現金を引き出せないこともあるので気をつけよう。
Kyoto Shortlist (2009) から翻訳、編集
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