2009年09月29日 (火) 掲載
世界のいったいどこにこれほど宿泊先の選択肢が多い場所があるだろう?近代的なホテルに昔ながらの旅館、古い町屋や蔵を改装した宿舎、宿坊、皇族の元別荘、ユースホステル。京都では畳の部屋を大勢の知らない人間と分け合うこともできるし、卓越したもてなしを受けることもできる。
宿泊先を決める際にまず初めに考えておくべきことは、何が宿泊先に絶対に必要で、何がそうではないかということだ。もしコンシェルジュやバー、スパが必要なら、ホテルにすべきだろう。京都にはハイアットリージェンシーやグランヴィア京都、ウェスティン都ホテルなど素晴らしいホテルがいくつもある。サービスや設備、快適さならこの3つのホテルのどれを選んでも申し分ない。また京都にはブティックホテルもある。トップクラスの4軒を挙げると、2008年のオープン時には大きな話題を呼んだThe Screen、同年の後半にオープンしたより落ち着いた雰囲気の長楽館、2009年中頃にオープンしたデザインホテルMume、そしてホテルとはかなり違う雰囲気の2つのデザインルームがあるPrinz Apartotelがある。
一方京都を体感し、京都の空気を吸い、京都の味を味わい、そして京都の雰囲気に囲まれて眠りたい人には、旅館が絶対お薦めだ。伝統的な旅館は日本中にあるが、京都の旅館ほど質の高いもてなしを提供している旅館はない。高級旅館は入り口に人の出入りを制限するような開閉式ドアは使わず、のれんを掛けて宿泊客を歓迎する。玄関先の飛び石には打ち水をし、すべての準備が整っていることを知らせる。客室には到着の数時間前に焚かれたお香のかすかなにおいが漂っている。これが高級旅館流のきめ細やかなもてなしだ。
客室の調度品は控えめで、大抵書道の掛軸や生け花が飾られている。家具は座卓と漆塗りの座椅子しかなく、寝床の布団は毎晩仲居によって敷かれる。旅館とはただ寝るためだけの場所ではない。最高級の旅館では部屋に運ばれた懐石料理を味わい、檜風呂に入り、浴衣を羽織って散歩し、庭園を眺めることもできる。旅館の中には100年以上前からの伝統を守り続けているところもあれば、時代の変化に合わせているところもある。言うまでもなく、現代的な雰囲気の旅館のほうが外国人には快適だ。なぜなら保守的な旅館は外国人を泊めたがらない場合もあるからだ。このガイドに挙げた旅館はすべて外国人観光客を受け入れている。
高級な食事も細かいサービスも必要なく古都京都の雰囲気を味わいたい場合は、昔ながらの町屋を個人的に借りることもできる。最高級とされるのは株式会社庵が紹介する町屋だ。高価な美術品が飾られ、調度品も豪華だ。もう少し手軽に借りたい人には、ユースホステルとして営業している町屋も数多くある。趣もあり滞在の価値は十分にあるが、すべての要素が希望に合うとは限らない。例えば湿気の多い時期であれば、値段の安い日本式の相部屋は避けたほうがよいだろう。
経済的な旅館や宿泊施設では午後11時に門限を課しているところがある。または施錠はされるが宿泊客に開錠のためのコードや鍵を渡すところもある。また高価な旅館ではめったに門限はないが、床が木製で壁が薄い旅館では音が響きやすいので、部屋に戻る際は静かに移動したほうがよい。
安全で静かでしかも美しい観光名所へのアクセスにも便利なところを望むなら、東山は滞在に最適な場所である。もしできる限りたくさんの寺に参拝したい場合は、様々な路線の電車やバスが乗り入れる京都駅のそばの宿泊施設を選ぶとよい。京都市中心や御所周辺は、どこの都市にもあるような定番の宿泊施設を望む人にぴったりだ。京都市北西部のへんぴな場所でさえ、その地区を静かに散策し、世にも有名な神社仏閣を参拝するための拠点とするなら1~2日の滞在を検討してみる価値はある。
値段を比較する際はぜひ気をつけてほしい。豪華ホテルと高級旅館の値段が同程度であっても、ホテルは部屋ごとに料金が課されるが、旅館は1名ごとに料金が課される場合がほとんどである。夕食をつけなければ割引してくれる宿泊施設もある。このガイドで(\\)マークが記載されている最高級宿泊施設ではフルコースの夕食が付いている。価格帯は一泊40,000円~90,000円と考えてほしい。一方では対照的に布団代に2500円ほど徴収する宿泊施設もある。
もし桜や紅葉、祇園祭、年末年始の行事などを京都で楽しみたい場合、宿泊先の予約は少なくとも3ヶ月前に行い、価格はオフシーズンの倍はすると考えておいてほしい。オフシーズン(正月三が日の後から2月末と6月)に宿泊する場合は、最高級宿泊施設が信じられないような値段で予約できることもある。
Kyoto Shortlist (2009) から翻訳、編集
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